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在庫削減をデジタルツールの導入で解決しようとする前に考えてほしいこと

★在庫問題はデジタルツールの導入で解決しない?

弊社は、マーチャンダイジング(以下MD)に関するアドバイス業務を生業としていますが、お客様の相談の中で一番多い相談は、在庫関連の相談です。お客様の中には、在庫削減に効果があるとされるデジタルツールを導入したが、全く効果出ず、駆け込み寺として弊社に相談が来ることも少なくありません。

私が様々な場で訴えていることは、立派なデジタルツールを導入しても、自分たちの自身の元々の商品管理ルールやMDに関するルールが、きちんと整理されていなければ、そのデジタルツールは豚に真珠にしかならず、多大な費用をドブに捨ててしまうことになる!と訴えています。特に、最近よく見られる傾向として、私自身が危険だなと感じるのは、MDに知見のない上層部が、盲目的にDXやAI等のデジタルツールの導入で、在庫問題が解決すると信じているという点です。

ということで、”隣の芝生が青く見える”的な発想で、デジタルツールの導入をする前に、組織としてすべきこと。決めておくべきMDにおける管理・分類のルールとは何なのか?ということを、MDの5適でいう”適時””適品”という視点から、デジタルツール等のシステムに大きな投資が出来ない企業や組織の皆様へ向けて、少しでも役に立つことを伝えることが出来ればと存じます。

 

★適時に関する商品ルール

私は、これまで多くのアパレル・ファッション小売業のMD支援をしてきましたが、春・夏・秋・冬や定番品。敷いては、梅春・初秋等の(商品の)シーズンコード?等を、使用している組織がありました。しかしながら、その殆どの組織が、そのシーズンコードと販売終了日等が紐づいてない上に、定義づけもされておらず、ただ便宜上使用しているだけの存在でしかありませんでした。そうなると、商品の仕入活動や管理が適当になり、在庫が余りやすい組織へとなるわけです。

そこで、私が独断と偏見で作成しました、適時に関する以下の図をご覧ください。

この図で、私は適時に関する商品ルールを”区分”と”コード”の2層で作成しています。
商品の管理ルールとして、区分とコードの大枠の定義をお伝えすると。

・区分→MD予算設計を行う。販売終了日が設定されている。
・コード→商品の投入タイミング。予算設計はしない。大枠の販売終了日の設定がある。

このことになります。コードに関しましては、もっと具体的に定義づけした方が良いとも思いますが、それは、ブランドやショップによって、相対的に変えた方が良い部分です。ですが、多方面から商品分析が出来るということは、MDの仕事においてメリットとなる部分が多いですから、自分たちのブランド・ショップコンセプトから見える、顧客の特徴を考えた上で、慎重にルール設定を行うと良いでしょう。

 

★適品に関する商品ルール

次は、適品に関する商品ルールです。これも適時と同様、適当に決めていると正しい商品管理・分析が行えません。特に、定義を曖昧にしている場合が厄介です。例えば、ブルゾンとコートというカテゴリー(品種)が存在した場合で、商品としてのダウン(短丈)を、MD・バイヤーの個人の解釈で、あるバイヤーはブルゾン。あるMDはコート等として商品分類をすると、その組織の商品分析をまともに行うことは、難しくなるでしょう。

ですので、商品の大・中・小分類の定義をしっかりと決めておくといったことが重要です。以下、例としての分類例をお話しますと。

〇大分類(部門)

・インナー・アウター・ボトムス等の大きな分類
・大分類の売上構成比はブランドコンセプトにも繋がり、基本あまり変動すべき数字ではない
・経営層等の階層が見るべき数字の単位
等の定義にしておくと良いでしょう。

〇中分類(品種・カテゴリー等)

・ブランド・ショップコンセプトから見える顧客の消費行動が表現できる分類
・MD予算設計・期中運用すべき単位
・MD/バイヤーの解釈で違ってはいけない。各カテゴリーの定義を明確にする
・トレンドの影響で大きく数字変わる単位
・基本15品種以内に抑える。それ以上あっても、数字が細かくなりすぎてデメリットしかない
等、他にも組織によって相対的に変わる部分もある筈ですが、こんなところでしょうか。

〇小分類(分析コード・MDコード等)

・追加発注時や過去商品分析の詳細等を調べるときに使用
・MD・バイヤーは商品の投入時期や販売終了の参考に(適時の参考になるもの)
・分類は、属性によりわけておくと便利
・素材やデザイン(袖の長さや着丈等)
・多くの分類を設計し、様々なデータが取れるようにしておくこと
・小組織は、そんなに多くなくても良い(データの分母が小さいと意味が少ない)
等、他にも組織によって相対的に変わる部分もある筈ですが、こんなところです。

★現状の道具で不振商品を炙り出す方法とは?

最後に、期中での不振商品の炙り出し方を、以下簡単にお伝えします。上述したMDに関する商品の分類ルールが整備されましたら、以下のような帳票を作成するよう尽力してください。
(下記の図は、私が40週(10月初旬として簡易的に作成したものです)

上記の表は、通常どこの組織でも使われているであろう商品単品の売上ランキング表に、粗利・在庫の情報をくっつけたものです。この表をExcel等の表計算ソフトに落とし込んで、Excelでいうフィルター機能を付けて頂ければ、それで十分です。売上ランキング表に、売上しか表示されない組織は、Excelでいう”V LOOK UP”等の計算式を活用し、粗利・在庫をくっつけることを試みてください。(弊社の経験上、大概の組織でこのことは実践出来る)

不振商品を炙り出す際に、上記の図で注目すべき点は、在庫点数と在庫消化日数と販売終了日です。ですが、在庫消化日数は注意が必要です。在庫消化日数の計算式は?

(昨日までの)時点在庫数÷1日の平均売上=在庫消化日数

となります。特に1日の平均売上数に注意が必要です。それまでの販売期間が長いと、1日の平均売上数が高く出る傾向になる場合がありますから、その際は、喫緊1~2週間程度の平均売上数にした場合の方が、精度が高いケースが多くあります。

話を戻しまして、不振商品の炙り出し方は?

① 季節区分から紐付けされた販売終了日の設定をし、フィルターボタンを押す
② 在庫消化日数が販売終了日を超えている商品をマークを付け、フィルターボタンを押す

基本的には、この2点です。すると、以下の図のように、具体的な商品品番数・在庫金額等を炙り出すことが出来ます。
*表の設定が10初旬なので、販売終了日11月30日で在庫消化日数が60日以上のものをフィルターをかけた状態

更に在庫数の設定を入れたり、上記で決めた商品分類ルールでフィルターをかけると、ありとあらゆる分析が可能になります。

今回、上記で行った不振商品の炙り出し方は、簡単な説明になりましたが、MDに関する商品管理・分類ルールをきちんと決める。そして、商品を単品で並べ、売上・粗利・在庫とくっつけることだけでも、立派なデジタルツールの導入にしなくとも、様々な分析や現状の状態を、具体的に可視化することが出来ますので、焦って大きなお金を投入し、デジタルツールの導入をする前に、今回記事にしたことを少しでも実践して頂ければ、嬉しく存じます。
この度は、記事を読んで頂きありがとうございます。次回もよろしくお願いいたします。

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