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マーチャンダイジング(以下MD)の仕事には、商品面の仕事。数字面の仕事。という2つの側面があります。どちらの仕事も大事なのは間違いがありませんが、より重要なのは商品面の仕事である!ということを、私は至るところで発信しています。
MDの商品面の仕事は、組織によってはディレクターと呼ばれていたり、デザイナーブランドでは当然のことながら、デザイナー自身がその仕事を請け負っています。ですので、MDでいう商品面の仕事は、組織によって相対的に手法が違って当たり前あり、このこと自体が”長所”でもあります。
しかしながら、(関わる)ブランド・ショップの売上が下がってきた場合、(商品面の仕事で)これを食い止めるのは大変難しいことになります。一番、手っ取り早い解決手段として、ビックリするほどの売上を叩き出すヒット商品を生み出したり、仕入出来れば良いのですが、このことの難易度の高さは、商品に関わる仕事をしている方々であれば、お分かりいただけるでしょう。
その他の解決手段として、インフルエンサーや著名なディレクター等、有名人を使う手がありますが、このことで一時的に売上が回復しても、これはあくまで個人技であり、その有名人が離れると厳しい状況に陥ります。更に言えば、コストの側面からみればリスキーな面もあり、ややもすれば、元々組織が持ち合わせていた(商品面での)”長所”を消してしまう可能性さえあります。ですので、私は売上が下がったからといって、リブランディングでもない限り、商品面の仕事の手法を大きく変えることには懐疑的です。
では、解決手段としてどのような手段が考えられるのか?と言いますと、それは。
社内内見会や店長会議を活用し”商品検討会”等を開催する。そして、発注前のサンプル段階で現場スタッフの声を拾う!ということは、このことは、解決手段の一つとなりえると感じています。(仕入中心の組織は難しいかもしれません)
しかしながら、この「現場スタッフの声を拾う!」という行為も、ただ意見を聞いただけで、何も商品に反映させていなければ、現場スタッフをしらけさせ、現場と本部の距離がより拡がっていきます。
また、現場スタッフからの声を聞く際に、MDは現場スタッフに対して「どの商品が売れると思う?」と聞くことが殆どではないでしょうか?現場スタッフは現場で掴んだ情報を基に発言するケースが多いですから、このような質問の仕方だと、ただの現場の御用聞きに陥る可能性が高いでしょう。しかも見方を変えると、このような質問を行うMDは、売れなかった商品の言い訳として、「売れなかった商品は検討会で現場の意見を取り入れた結果」などと言い、現場に責任を押し付ける可能性があります。(実際にそのような場面に遭遇したことがあります)商品の品揃えを決め、発注の決断するのがMDの仕事なわけですから、優柔不断で現場の意見をなんでも取り入れてしまうようなMDは必要ないわけです。
ということで、商品検討会等で現場スタッフの意見を取り入れる際に、MDはどのようなことを意識したら良いのか?というと、それは”論点を絞った質問をする!”ということです。
例えば、「どの商品が売れると思う」と質問をするのではなく、
「絶対に売れないと思う商品を、3品番あげてください!」
という質問をすることは有効であると感じています。
先述したように現場の仕事に従事されている皆様方の傾向として、先ではなく今の現場の情報を基に意見を述べる可能性が高いでしょう。ということは、ディレクターやデザイナーが攻めた提案をしても、「良い商品だな!」と感じることはあっても、「売れる商品ですか?」と問われれば、即答するのは難しい筈です。であるならば、売れる商品の意見を集めるのではなく、売れない商品の意見を聞くことの方が効果的ではないのでしょうか?また、「売れない商品は何ですか?」とだけ、抽象的な質問をするのではなく、「絶対に売れないと思う商品を、3品番あげてください!」と論点を絞った質問をすることにより、現場スタッフの傾向をデータとして集め、先の商品計画に活用するといったことが重要です。
また昨今、現場スタッフが不満に感じることの一つは”過去踏襲商品”の多さではないでしょうか?(売上)実績ベースで考えれば、仕方がない部分もあります。おそらく現場スタッフ感じる昨年踏襲商品の不満は。
・前年以前でピークを迎えた商品を、前年以上の発注数で発注してしまうこと 。
・現場から出たサイズや色等の問題・指摘を全く反映させていない 。
この辺りではないでしょうか?この問題こそ、店長会議や社内内見会等を活用した(商品)検討会で議題であげるべきで、現場の意見を無視して、安易に商品発注すべきではないと、私は感じています。
この問題の解決手法として考えられることは、当年中に人気商品の問題点を現場スタッフからの声を集めることが重要です。このことも論点を絞って、色・サイズ(特に着心地)・素材・デザイン等に質問を項目を絞り、アンケートを取る。そして、当年中に人気商品の問題点を集計し、次年度にどう問題点を修正するのか?それとも次年度はもう展開しない!等ということを決めるとよいでしょう。そして、次年度の商品検討会で問題点を修正した”昨年踏襲商品”のサンプルを、現場スタッフに見てもらい、更に意見を聞く。このサイクルを繰り返すことが重要です。
最後に、「現場スタッフからの声を聞く」という耳障りの良い言葉は、組織が団結して問題解決に努力している!という風に見えます。しかしながら、これまで述べてきたように実践の仕方を誤ると、組織にとっての弱点となりかねません。今回のこの記事が、商品の仕事に関わる皆様方の役に立つことが出来れば、嬉しく存じます。
この度は、記事を読んで頂きありがとうございます。次回もよろしくお願いいたします。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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