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”適正在庫”に影響を与えるものとは?

★「適正在庫」なんて、すぐにわかる筈もありません

私がMDアドバイザーという仕事を勝手に生み出してから?もうすぐ10年目を迎えます。この間に、多くのアパレル小売業やその他小売業のマーチャンダイジング改善に携わらせて頂きましたが、この仕事に携わるようになって、最も多く質問を受けるのが。

「(自分たちのブランド・ショップ等の)適正在庫はどのくらいですか?」

という質問です。世の中には「在庫最適化を実現します!」という、コンサルやデジタルツール企業が、数多いらっしゃいますが、私のこの質問に対しての返答は。「御社のことを良く知らないので、わかりません!」と即答します。何故ならば、どのくらいの在庫が適正になるのか?というのは、その組織が持つ特徴やコンセプト等に左右されますので、それらの特徴を把握・加味した上で、MD予算設計を行わない限りは、組織にとっての適正な在庫ストーリーは可視化出来ないからです。ですので、私は至るところでMD予算(売上・粗利・仕入・在庫予算設計)の重要性を訴えています。(MD予算設計の重要性は、下記の繊研plusさんの連載をご覧くださいm(__)m)

算数で極める達人MDへの道《第2講》

しかしながら、MD予算設計をすぐに理解しろ!というのも中々難しい話です。そこで今回の記事は、レディース業態で商品の販売期間が短いパターンとメンズ業態で販売期間が長いパターン。2つのパターンでシミュレーションをすることで、どのようなことが、在庫回転の良し悪しに影響を与えるのか?ということを、出来るだけわかりやすくお伝え出来ればと存じますが、結果、マニアックな記事となりましたので、ニュアンスだけでも掴んで頂ければと存じますm(__)m

★販売期間の設定が在庫に与える影響とは?

以下、レディース業態で販売期間短い・メンズ業態で販売期間長いという2つのパターンで在庫シミュレーションを行いますが、この2つのパターンで共通する項目を、以下箇条書きでお伝えします。

【共通の設定】
・今回は9月から2月の半期でシミュレーション。秋冬商品のみとする
・今回は商品のミニマムロットを加味しない
・売上予算6300万円 ・粗利率予算47.5%
・値入率目標55% ・OFF率設定14.3%
・店頭展開SKU数100。1SKUにつき1点を店頭展開とする
・リードタイム(以下LT)2カ月
・商品倉庫着日20日(基本倉庫着月の翌月に店頭展開)
・8月仕入は、標準展開アイテム数(標準展開SKU数は100)の仕入を行う→所謂期首在庫
・売上原価=仕入原価(消化率100%)で仕入予算設計
・月別の仕入予算設計は、商品の投入アイテム数×商品1アイテムあたりの平均仕入金額で設計
・月別の投入アイテム数設計は、私の経験による独断の設計です

設定がたくさんになりましたが、以上となります。続いて、①レディース業態販売期間短いショップの設定です。

【①レディース業態販売期間短いショップの設定】
・商品の販売期間設定は1か月
・1アイテムあたりの展開SKU数は4(カラー2・サイズ2)→標準展開アイテム数25
・LT2カ月なので、商品の追加発注は不可能

となります。月別の各指標の推移は、以下の図をご覧ください。

次は②メンズ販売期間長いショップの設定です。

【②メンズ業態販売期間長いショップの設定】
・商品の販売期間設定は3か月
・1アイテムあたりの展開SKU数は8(カラー2・サイズ4)→標準展開アイテム数12.5
・LT2カ月なので、商品の追加発注は可能

となります。付け加えると、上記のメンズ業態は販売期間が3ヵ月。LTが2カ月で商品の追加発注が可能となります。この数字から見ると。
→LT61日÷販売期間92日=66%
となり、新規商品の売上構成比は66%。追加商品の売上構成比は34%と設計し、この数字に応じた仕入設計が出来そうですが、実際は、商品の追加発注を判断するのには時間が必要ですし、SKU別の商品の消化状況なども鑑み、新規商品の売上構成比80%。追加商品の売上構成比を20%として、仕入設計を行ったのが以下の図になります。
(販売期間がLTより長い場合は、上記のように新規商品と追加発注別の売上構成比を算出し、仕入設計をすると、オーバー仕入を防げる可能性が高くなります。)

★販売期間の設定以外に、在庫に影響を与えるものとは?

上記の2パターンの在庫回転率を見ると、当然のことですが、①のレディース業態の方が、在庫回転率は高くなります。
(図の在庫回転率は、消化率100%での数字なので、実際の在庫回転率の数字はもっと低い筈です。また、春夏商品・継続展開商品等の在庫をプラスすれば、実際の在庫回転率の数字は、更に悪いと予想されます。)
このことは、期首在庫(8月末在庫)の数字を見ても、すぐにお分かり頂ける筈です。販売期間の短いレディース業態は、(今回のルールで)店頭を商品で埋めるのに必要な在庫は、販売期間の長いメンズ業態の40%弱の金額で済みます。①の図を見ると、毎月新商品が店頭に多く投入されますから当然のことです。レディースの場合、トレンド等の移り変わりが早い等、ショップの鮮度を保つことが、お客様を飽きさせない!ということに繋がります。このことを実践するには、商品の販売期間の設定を短くし、新作商品投入を増やす必要があるということです(1アイテムあたりの仕入金額・数量が減ります)。結果、販売期間の設定が短いと、在庫回転が上がる可能性が高まります。また、レディースの場合は、メンズほどのサイズ展開が必要ではない!というのも、商品投入アイテム数を増やしやすい要因と言えます。

しかしながら、レディースほどトレンドの移り変わりが早くなく、商品の種類が少ないメンズ業態に当てはめた場合、販売期間を短くし、投入商品アイテムが増加することで、商品1アイテムあたり仕入金額・数量が低下すると、メンズにとって必要なサイズ展開をすることが出来ない、売れ筋商品の色・サイズがすぐに品掛けする等、機会ロスによる売上低下を招く可能性が高まります。(そのことで、在庫金額が少なくとも、結果売上が大幅に低下し、在庫回転は悪くなる)

次は、LTが在庫に与える影響についてです。上述した②のメンズ業態の図は、LT2カ月・販売期間3カ月ですので、商品の追加発注が出来る!という前提で、図を作成しています。しかしながら、②のメンズ業態のLTが3カ月になった場合はどうなるのでしょうか?そのことを加味したのが、以下の図になります。


この図をご覧頂いてわかるように、仮にLTが3ヵ月に伸びますと、理論上は商品の追加発注が出来ませんので、LT2カ月のケースよりも在庫回転が悪化します。ということは?LTが長くなればなるほど、在庫を持つ必要が生じ、平均在庫金額が上がり、在庫回転が悪化します。以上のことから、商品の販売期間とLTが、持つべき在庫に影響を与えることがご理解頂ける筈です。

また、今回は検証しませんでしたが、販売期間が区切られていない継続展開商品の多いメンズ業態の場合、体型によるサイズの売り逃しを防ぐ為に、いつの間にかサイズ展開が増えるケースがあります。このことで、継続展開商品の在庫が必要以上に増え、在庫回転を悪化させるケースがあります。また、これらの商品は(基本的に)セールを行わない為、在庫が増えていても、気にならなくなることで、更に組織の在庫回転を必要以上に悪化させ、キャッシュフローに弊害をもたらしかねません。(実際に、そのような組織は多くある)私が常日頃から、継続展開商品の定義を厳しくしろ!なるべく商品の販売期間を区切れ!と、訴えているのもこのためです。

★「適正在庫」は、当事者自身が算出するものである

最後に、今回の話を纏めると、商品が売れないことや商品のミニマムロット(本当はこれが大きい)以外に、自分たちのブランド・ショップの在庫に影響を与えるのは?

・まずはブランド・ショップコンセプトと販売手法の確立が大前提
・商品の販売期間
・商品のリードタイム
・色・サイズ展開等

となります。これらを加味した上で、損益設計やMD予算設計等の前始末を緻密に行うことで、初めて自分たちの組織にとっての「適正在庫」というものが見えてきます。よくファッション・アパレル業界の識者が言う「在庫の最適化を実現します!」等という、目先の言葉に騙されない為にも、自分たちの組織・ブランド・ショップの「適正在庫」は、自分たちで算出することを、先ずは心掛けてみては!ということを強く訴えて、今回の記事は終了といたします。

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