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販売期間の長短が在庫に与える影響とは?

今回は、アパレル小売業において知ってほしい在庫の知識を記事に纏めます。以前にも記事にした内容ではあるのですが、読者の皆様に、よりわかりやすく伝わるように心掛けます。また、今後も知っておいてほしいアパレル小売業の在庫に関する記事をアップしていきたいと思います。

★在庫回転率とは?

在庫関連の指標の中で、重要な指標といえば在庫回転率です。在庫回転率の数字が高まると組織のキャッシュフローも高まりますから、在庫回転率という指標は、MDにとって重要な指標です。在庫回転率の計算式は?以下の通りです。
在庫回転率=(期間)売上÷(期間)平均在庫
上記の数式に、売価・原価・数のどれを当てはめても、間違いではないのですが、原価を当てはめるのが一般的です。しかしながら、在庫回転率の数字の信頼性が一番高いのは数量を当てはめることです。ということは?売上点数を増やすか、平均在庫点数を減らすことが、在庫回転率を高めることに繋がります。一番理想的なのは、ヒット商品を連発し、売上点数を高めることですが、今回は平均在庫点数を減らすことに着眼したいと思います。

★平均在庫に影響を与えることとは?

商品の売上の大小以外に、平均在庫に影響を与えるのは、ミニマムロット(今回の記事では触れません)とリードタイム(以下LT)です。LTが短ければ、平均在庫は少なく抑えられます。(LTが在庫に与える影響は、後日記事に纏めます)
しかしながら、アパレル小売業の現状を鑑みると、LTを短縮するのは至難の業と言わざるを得えません。(いまだにQRの実現とか言っている識者や組織は、香ばしさ満点ですが。。。)では、LTの短縮以外に平均在庫を抑える手法はないのか?と言いますと、それは販売期間の設定を短くすることです。販売期間の設定を短く設定すると、平均在庫を抑えられる可能性は上がります。では、以下例を挙げます。

★販売期間の長短が在庫に与える影響を検証してみる

【共通の設定】
・半期の売上5,000万円
・1アイテムあたりのSKU設定は2カラー×4サイズ=8SKU
・標準店舗の展開SKU数200・展開アイテム数25(1SKUにつき1点商品展開)
・商品の1点単価15,000円
・LT3か月

今回は、(商品の)販売期間1か月設定の組織Aと販売期間3か月の組織Bの2パターンで検証致します。(上記からみると、組織A・Bともに理論上は、商品の追加が不可になります。)

●販売期間1か月の組織Aの場合

先ずは、組織Aの半期での必要商品SKU数を算出します。今回の標準店舗の展開SKU数は200です。また、組織Aの場合、商品の販売期間が1か月になりますから、1か月におきに商品を入れ替えるということになりますから、組織Aの半期での投入SKU数は、以下の通りになります。
→200(標準店舗の展開SKU数)×(6か月(半期)÷1か月(販売期間)=1200SKU(半期での投入SKU数)
次は1SKUあたりの金額を算出します。
→5,000万円(半期の売上)÷1200(半期の投入SKU数)≒41,667円(1SKUあたりの必要金額)
以上のように算出されました。このことで、組織がAが商品をショップで埋める為に必要な在庫金額(売価)を算出することができます。
→41,667円(1SKUあたりの必要金額)×200(標準店舗の展開SKU数)≒833.4万円
よって、組織Aがショップを商品を埋める為に必要な在庫金額は833.4万円となります。続いて組織Bを見てみましょう。

●販売期間3か月の組織Bの場合

組織Bの場合、商品の販売期間が3か月になりますから、3か月におきに商品を入れ替えるということになりますから、組織Aの半期での投入SKU数は、以下の通りになります。
→200(標準店舗の展開SKU数)×(6か月(半期)÷3か月(販売期間)=400SKU(半期での投入SKU数)
次は1SKUあたりの金額を算出します。
→5,000万円(半期の売上)÷400(半期の投入SKU数)=125,000円(1SKUあたりの必要金額)
以上のように算出されました。このことで、組織がBが商品をショップで埋める為に必要な在庫金額(売価)は、以下の通りです。
→125,000円(1SKUあたりの必要金額)×200(標準店舗の展開SKU数)=2500万円
よって、組織Bがショップを商品を埋める為に必要な在庫金額は2500万円となります。

★販売期間の設定を短くするデメリットとは?

上記で算出された金額を検証すると、販売期間の設定が短い組織Aは、販売期間の設定の長い組織Bの1/3の在庫金額でショップを埋めることが可能となります。しかしながら、販売期間を短くするデメリットもあります。組織Aの1アイテムあたりの必要金額は、41,667円×8(1アイテムのSKU数)≒333,336円です。今回の設定では、1点単価平均が15,000円となっていますから、組織Aの1アイテムあたりの必要点数は?
→333,336円÷15,000円≒22.2点となります。
逆に組織Bの場合の1アイテムあたりの必要点数は?
→1,000,000円÷15,000円≒66.7点となります。
このことから見えることは、組織Aの場合、今回の設定のようにサイズ展開を拡げてしまうと、1SKUあたりの必要点数が2.8点(22.2点÷8)となり、人気サイズがすぐに品切れする可能性が高まります。そのことで売上が低下する可能性が大となりますので、色・サイズ展開を拡げたいブランドは、販売期間短く設定することに向いていません。ですので、商品のトレンドが移り変わりやすく、サイズ展開をさほど拡げる必要のないレディースカジュアルブランドなどが、販売期間を短く設定することに向いていると言えます。逆にメンズフォーマルブランドやシューズブランド等は、サイズ展開を拡げないと、商品が売れにくいという側面がありますので、販売期間の設定を長くすることで、豊富な色・サイズ展開ができる可能性が高まります。しかしながら、そのことで平均在庫金額は大きくなり、在庫回転率の数字が低く出やすいということです。

以上、販売期間の設定が在庫金額に与える影響をお伝えしましたが、このことが読者の皆様方のお役に立てれば幸いです。
次回もよろしくお願いいたします。
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