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アウトレット店舗を出店する前に行う前始末とは?

★残してしまった商品は、どこかで消化しなければならない

多少の粗利は犠牲にしてでも、商品が余らないように、仕入をした分だけ売り切ろうとする!このことは、マーチャンダイザー(以下MD)にとっては、当たり前のことです。しかしながら、様々な努力をしても(設定した販売期間までで)商品が残ってしまうのは仕方のないことですが、このご時世に商品を安易に廃棄するわけにはいきません。このことで必要となってくるのが、アウトレット店舗(以下OL店舗)です。昨今は、ECの台頭により、店頭では引かざる得ない商品も、ECで継続的に商品を展開することが可能となりましたが、それでもある一定の規模感になってくると、OL店舗は欠かせないものとなります。ある程度の規模・知名度がないと、有名アウトレットモール等に出店出来ない!という点はありますが、今回は、OL店舗を出店をする際に行うべき事前準備。決め事?を、以下考えてみます。

★アウトレットを出店を事前シミュレーションしてみる

今回はある架空事業部Aを設定し、OL店舗出店する際のシミュレーションを行ってみます。また、商品の評価減は加味しない!ということで、話を進めて行きます。

【架空のプロパー事業部Aの設定】
・(1年での)売上20億円 ・粗利率55% ・消化率90%
・値入率65% ・年間OFF率22.2%

このような事業部があったとします。この事業部が1年で残した在庫原価は以下の通りです。
→20億円(売上)×粗利率55%=11億円(粗利高)
→20億円(売上)-11億円(粗利高)=9億円(売上原価)
→9億円(売上原価)÷90%(消化率)=10億円(1年で実際に仕入した原価)
→10億円-9億円=1億円(1年で残してしまった在庫原価)
となり、この事業部は年間で1億円の在庫原価を残してしまっています。

〇キャリー品の売上構成比100%でシミュレーションしてみる

では、残した在庫は翌年に全て売り切る!という設定を加え、アウトレット出店のシミュレーションを行います。上記の事業部が残した在庫(以下キャリー品)原価は1億円です。仮に、OL専用商品は用いずに、粗利率30%。OFF率想定50%で設定すると以下のようになります。
→1億円(キャリー品)÷70%(売上原価率)≒1億4286万円(売上)
となり、上記の条件に当てはめると、約1.4億円の売上が担保できるのであれば、この架空の事業部はアウトレット1店舗出店できるということになります。上記のシミュレーションですと、粗利高は約4286万円となりますので、当然のことながら、この収支で黒字になるように販管費を調整する必要があります。(因みに商品の評価減を行うとOL店舗の粗利高は上がるが、プロパー事業部の粗利高が下がる)

〇OL専用品を加味してシミュレーションしてみる

上記のシミレーションは、キャリー品の売上構成比が100%とシミュレーションで行っていますが、実際のアウトレット店舗の品揃えは、アウトレット専用商品が多くを占めている組織が大半です。理由は様々ですが、キャリー品だけでOL店舗の売上目標を達成するのが難しい!というのが、大きな理由の一つなのでしょう。ということで、OL店舗1店舗あたりのキャリー品の目標設定を、上記の半分の売上原価5000万円で設定すると?以下のようになります。
→5000万円(1店舗あたりのキャリー品の消化目標)÷70%(売上原価)≒7430万円(キャリー品の売上)
となります。これだけでは、OL店舗の売上が弱く、出店出来ない可能性が高まると想定し、売上目標を1.5億円に設定します。そうなりますと、OL専用商材が必要となります。OL専用商材の値入率65%。粗利率55%と目標設定致しますと、以下の数字になります。
→1.5億円(OL店舗の売上目標)-7430万円(キャリー品の売上目標)=7570万円(OL専用品の売上予算)
→7570万円×45%(OL専用品の売上原価率)=3407万円(OL専用品の売上原価)
となり、OL専用品の1店舗あたりの仕入原価予算は約3400万円と設定できます。このケースの場合、OL店舗が2店舗出店できるので、この場合のOL専用品の年間の仕入原価予算は?3407万円×2≒6813万円と設定することができます。上記の値入率と粗利率の設定ですと、このケースではOL専用品の売上予算約1.51億円の129%の仕入元売価金額を仕入可能が可能です。(約1.95億円の仕入元売価が仕入可能)そして、このケースのアウトレット1店舗当たりの売上予算は1.5億円。粗利率は42.4%。粗利高予算約6360万円となり、キャリー品のみで収支を組み立てるよりも、多くの粗利を獲得できるということになります。

★とにかく前始末が重要

冒頭で述べたように、プロパー店舗で商品を売り切る!ということが理想ではあるのですが、どうしても商品は残ってしまいます。今回はアウトレットを出店というテーマで考えてみましたが、小規模事業様の場合は、ファミリーセールやその他催事。またEC等を活用し、このような前始末を行っておくと有効な手段となりえます。また、ある程度の規模がある組織の場合、むやみにアウトレットに出店しすぎて、ブランド・ショップそのものの付加価値を喪失している。プロパー商品のMDの精度が下がる等の弊害多々起こりますから、そのようなことにならないよう、後追いでも構いませんから、上記のようなシミュレーションを行って、組織の基準を決めることが重要です。今回の記事はこれにて終了致しますが、何事にも前始末が重要だと!いうことを改めて認識して頂けると幸いです。

12月13日渋谷にて、繊研新聞社様主催無料セミナーを開催致します。


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