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昔、私がショップの仕事に従事していた際、よく起こったことがありました。それは何か?と言いますと。
「土曜日に入荷した商品が、その日のうちに完売してしまった」
「日曜日にその商品があったらもっと売れたのに!」
このようなことです。当時は、センター倉庫からの日曜日の配送がありませんでしたから、土曜日で商品が売り切れると、日曜日に売れ筋の新商品なしで、営業しなければなりませんから、売上にもかなりの影響が出たと記憶しています。
そして、月曜日になり、ディストリビューター(以下DB)に、その新商品の数量を多めにフォロー依頼するのですが…
「○○くんのショップは、そんなに売上が高いショップではないので、依頼された数量を回すことができない」
等の解答をされたものです。売上が大してよくないショップこそ、売れ筋商品を確保したいところですが、当時の私は「売れているから!商品を回せ!」と、抽象的なことしか言えなかったので、MDのみならず、DBにも全く相手にされていませんでした。
先述しました経験は、今も多くの販売員の皆様方が経験されているのでは?と、私は推測しています。ということで、ここからは「どのくらい在庫が足りなかった?」を具体的に本部に伝える為には、どのような知識が必要なのか?また、その知識を使い具体的に何点在庫が足りなかったのか?を、以下架空の例を基に、お伝えできればと存じます。
【架空のショップA】
・土曜日に入荷した新商品A8点が夕方17:00に完売した。
・このショップの土曜日の曜日別売上構成比は24%。日曜日は22%
・このショップは、日曜日に納品はない。
・営業時間11:00~20:00
このようなショップがあったとします。
先ず考えなければならないのは、土曜日は何点商品が足りなかったのか?このことです。これは、ショップの土曜日の時間帯別売上構成比を活用すれば、算出することができます。ということで、以下の図を架空のショップAの土曜日時間帯別売上構成比と致します。
商品はAは、土曜日に入荷し、当日の17:00に完売していると記載があります。上記の図を確認すると、オープンから17:00までの累計売上構成比は66%となりますので、以下の計算ができます。
→8点(完売した売上数)÷66%≒12点(商品Aの売上予測数)
となります。結果、土曜日の売上予測数に対して4点商品が足りないのがわかります。
次は、日曜日の売上予測数量を算出してみましょう!上記の設定では、土曜日の曜日別売上構成比は24%。日曜日の曜日別売上構成比は22%と記載されています。ということは?
→22%(日曜日売上構成比)÷24%(土曜日売上構成比)=91.7%
→12点(土曜日売上予測数)×91.7%≒11点(商品Aの売上予測数)
となり、土曜日足りなかった商品が4点。日曜日に足りなかった商品数が11点となり、この土日で約15点もの商品が足りなかった!ということが判明します。このことを、具体的に本部に伝えるだけでも、MDやDBとの在庫交渉を有利に持ち込める可能性が高まります。
しかしながら、過去の結果だけを(本部に)言ってもしょうがない面もありますので、更にこの設定を活用し、先のことを考えてみましょう。
この商品Aがまだセンター倉庫に多くの在庫があると設定し、話を進めていきます。今回は、商品Aの売れ行きは次の週も入荷週と同じくらい売れる!と設定します。(本来はもっと売上が伸びる場合が多い)その場合、1週間の売上数。また、平日と土日の売上数等が算出できます。先ずは1週間の商品Aの売上数を予測してみましょう!
→12点(土曜日の売上予測数)÷24%(土曜日の曜日別売上構成比)≒50点(商品Aの1週間の売上予測)
このように算出できます。しかしながら、日曜日以外、ほぼ毎日センター倉庫からの納品があると仮定すれば、「月曜日の段階で50点ショップに在庫を入れてほしい!」というのは本末転倒のように思えます。ということで、各曜日別の売上予測数を算出します。各曜日別の売上構成比は以下の図の通りです。
月曜日→50点×9%=4.5点
火曜日→50点×9%=4.5点
水曜日→50点×12%=6点
木曜日→50点×11%=5.5点
金曜日→50点×13%=6.5点
土曜日→50点×24%=12点
日曜日→50点×22%=11点
と算出できます。平日は4.5点~6.5点程度の売上予測数になりますから、ショップの基礎在庫を約7点くらいにすれば、店頭から商品が欠ける可能性が減ります。逆に土日は、日曜日に納品がありませんから、24点前後の基礎在庫にすれば、売り逃し・店頭から商品が欠ける可能性が減るでしょう。このような根拠をもって、本部のMDやDBと(売れ筋商品の)在庫の交渉をすれば、流石に本部は無下には出来ない筈です。(仮に無下にすれば、本部のMDやDBは会社の利益を損失させる行動をしている可能性がある)
最後に、売れ筋商品の在庫を確保したいのであれば、本部に具体的な根拠となりえるものを提示することが有効になります。そのことで、有効となりえるツールは、曜日別売上構成比と時間帯別売上構成比です。大手企業であれば、自ショップの曜日別売上構成比や時間帯別売上構成比を抽出することは難しくない筈です。また、小規模事業でも多少は手間がかかるでしょうが、曜日別売上構成比や時間帯別売上構成比を算出することは可能です。算出することさえできれば、算数で「足りなかった在庫」「これから必要な在庫数」を、本部に具体的に伝えることが可能となりますので、今回の記事をきっかけに、曜日別売上構成比や時間帯別売上構成比に興味を持っていただけると嬉しく存じます。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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