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業務としてECをスタートしてから13年程度経つ筆者ですが、元々はアパレル商社出身(6年程度従事しておりました)でして、それが原因か独立してからほぼアパレル案件ばかり手がけております。自分自身でも、「EC業界」というより「アパレル・ファッション業界」の人間という認識であり、そのせいか今のお客様からEC以外の部分でのご相談も多くあります。(だから決算書解説とか書いてたりする訳で)
一方でアパレル・ファッションの業界経験が無い・もしくは知見に乏しい方々を見ておりますと、業界側の人から「わかっていない」と言われている場面に遭遇することもあり、頭が良ければ何とかなるものでもないんだなぁと思ったりしております。ECとは言え、小売なのですから業界の知見が無いと対応が難しいのは当たり前ではありますね。筆者も手作り味噌教室の案件をお願いします、と言われましたら一目散に逃げ出しますよ。
要は「アパレル経験が無い」「服を買っていない」とアパレルEC案件を手掛ける際に色々と障壁があるようなのですが、何となくこれかなぁ?というものを筆者なりにピックアップしてみました。アパレル経験無いけどEC支援のご相談が来ている、という方はぜひ参考にして頂けますと幸いです。
まず一つ目はこちら。服を買っていないと当然、服を買う際にお客様が何を気にするのか?がわかりにくいです。簡単なところだと「サイズ」問題でしょうか。寸法を見て、自分の体と合うサイズなのか?がすぐわかる人は少ないでしょう。大体、皆様自宅にあるお洋服のサイズと比較して自分のサイズを判断するのですが、国民服であるユニクロのサイズなどは非常に使い勝手が良いです。
以前にも別件で書いておりますが、unisizeのようなバーチャルフィッティングの機能が重宝するのは、過去の購買履歴や寸法登録によって、簡単に今検討中の商品と比較ができるからですね。また、人によって着用したいサイズ感は違いますから、「ジャストサイズ」と言われても何が正解かわらない問題もあったりします。だから、同じサイズを違う身長の人が着用する画像が求められたりするのです。スタッフコーディネートでもたまにユニークな着こなしをされている方いらっしゃいますけど、大概の人は普通に着用してもらった方が助かると思いますよ。見たいのは、その体型の人が着用した際の見え方と、目的の服をどのようなアイテムで合わせているか?ですから。
あと、商品詳細ページに掲載する情報でも、商品の良さを頑張って書いてもらう事は大事なのですが、初歩的なところだと「毛玉になりやすい」「移染する」「経年劣化する」などの取り扱いの際の注意点なども重要だったりしますね。アパレルの人からすると当たり前で逆に書く事忘れるかもですが。
続いてこちら。ファッション業界は「トレンド」を発信する事で既存のものを陳腐化させ、買い替え需要を促進しています。服はあるのに着る服がない、なんてことを言われる方がいらっしゃいますが、トレンドの移り変わりによって今着用している服が何となく気分じゃなくなる、なんてことは多くの方が経験しているのではないでしょうか。しかもこのトレンド、取り扱うブランドやターゲットとなる顧客が変わると、それに応じて変動するのでめちゃくちゃややこしいです。
商業施設を一通り見ればわかりますが、フロアによってブランドイメージががらっと変わる事があります。フロアによってターゲットが違ったり、商品のイメージも大きく異なりますから、普段からフロアを横断してチェックしているか?は重要ですね。ブランドによって掲載されるファッション雑誌も変わる訳なので、同じようなターゲティングのWEB広告で高い効果が出るはずもないでしょう。中長期的にざっくりでもトレンドを追っていないと不明点が多すぎるのです。
さらに「シーズン」というものがあるのですが(春夏シーズン・秋冬シーズンのような表現のものです。)、これがブランドによっては年間で4分割のところもあれば8分割のところもあります。月ごとに展開アイテムは変わりますし、シーズンテーマによって訴求するスタイルも変わりますから、それによって対策する内容も変える必要があります。(キーワードの選定・特集企画・スタッフのコーディネートの方向性など)
先述した内容は、服を買うことによってクリアできるものが多いので、依頼主の中には「買っていないとわからない」とお考えの方が多くいらっしゃいます。「普段から店頭でお買い物をする」「ECをよく使う」ことでわかる事はたくさんありますので、これはとてもよく理解できますが、非常に難易度が高いのは「ブランドのECサイトで物を買えば済む」お話ではないところです。本当にその商品が欲しくて探されている方は、WEBメディアやファッション雑誌に目を通したり、メルマガやLINE登録をしていたり、SNSのフォロワーでもあります。例えば、
SNSで気になる商品を見かける→ググる→ECを確認→店頭在庫を確認して近ければすぐ向かう
みたいな行動パターンもあったりする訳ですね。モバイルアプリを実際に入れてみて、普段から感じる使いにくさが改善ポイントだったりもします。よく有識者が「支援しているお客様の商品を購入しなさい」と言われることがありますが、ここまで体験して初めて対策がわかります。まぁこれは服に限らずなのですが、筆者の経験上では「買っている」ことに対する信用力はアパレル・ファッション業界では特に重視されているような気がしています。
書き出したらキリが無いのですが、このような事から服を買っていないと不利になりやすいなぁと考えております。(だからこそ、筆者のように頭が悪くともバカみたいに服買っている人間に勝ち筋もあるのですが。)機能性商材はともかくとして、大概は服買う時なんてロジックよりも気分が大切だったりしますからね。2024年がスタートしたばかりですが、これを読んだEC支援会社の方々は初売りからぜひ散財してみましょう。
クレジットカード限度額パンパンまで服買ってから、銀行カードローン作るのがアパレル業界人のスタート。
— 深地雅也 (@fukaji38) June 21, 2022
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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