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インフルエンサーブランドの売却のニュースをちらほら見かける事があります。また、それ以外でも交流会などに顔を出すと、
「今度、アパレルブランドを売却する事になりまして…」
というお話を聞いたりするのですが、スキームとしてはほぼ一緒。皆様、大体がインフルエンサーを活用してファッションブランドを作り、そこそこ売れた段階で売却する、というのが割と見かける光景です。有名企業だと、
https://www.tsi-holdings.com/topics/topics_detail002522.html
このような事例でしょうか。(こちらはインフルエンサーブランドの中でもちょっと別格かもですが)最近は社内インフルエンサーを活用してブランドを設立するケースもあったりと、初速を個人のファンで担保して顧客を獲得し、それを育てていくという動きは確かに効率が良さげです。問題としては、そのブランドの服自体が好まれているのか、それともただのファングッズとして売れているのか?の違いでして、後者の場合はインフルエンサーの影響力が落ちる段階で売上も下がります。ファッションメディアにて「私が作った服が」と言っている芸能人やインフルエンサーがいますが大概デザイナーが別で存在しています。
弊社でもインフルエンサーブランドの案件は複数支援してきましたが、
運営の際の注意点は過去、書いた通りです。現場で数字を見ていますと、「ちょっと勢いに翳りが見えてきたな」という兆しは割りとわかりやすいのですが、今回はそのあたりについてちょっと書いてみたいと思います。
まずはインフルエンサーブランドの集客の要であるSNSから。instagramがメインで使われる事が多いのですが、まずこちらの集客経路にて細かくデータが確認できておりますでしょうか?アカウントだけでも複数ある場合がありまして、
◯ブランド公式アカウント
◯インフルエンサー本人のアカウント
◯ブランドのスナップ用アカウント
など分散しているケースもあります。さらにそれぞれのプロフィール欄経由やストーリーズ経由の効果もパラメータを振っておき、見ておくとよりわかりやすいかと思います。ここで重要なのは、
・公式アカウントの(見せかけでない)フォロワーの伸びが少ない
・セッションが減少している
の2点ですね。まず、インフルエンサーブランドがスタートする時、インフルエンサーからブランド公式アカウントへフォロワーの移し替えが発生します。その時点で、インフルエンサーのフォロワーの中からどの程度が購入してくれそうか?が大体判断できるのですが、その後しばらくすると公式アカウントのフォロワー増加が鈍化するケースがあります。この場合、高確率で売上が伸び悩み、またinstagram経由のセッション数も増加しません。ある程度売れ続けているブランドなら、フォロワー数がある程度増加し続けておりますし、経由のセッションも担保されているのですが、これが弱いと要注意です。現時点でフォロワー数がある程度いる、とかはあまり関係がありません。
そもそも、どのブランドでも顧客というのは一定期間で流出していくもので、それを担保できなければ衰退していくのは当たり前です。インフルエンサーブランドは、インフルエンサー自身が顧客を連れてきているからこそ安価でブランド運営が可能ですが、その供給がストップすれば当然成長も止まります。
メルマガやLINEで顧客管理しているからといって、そちらのセッションが下がって良い訳もなく。LINE導入後、クロージングが分散される事はよくあるのですが、それでもやはりフォロワー増加が止まり、セッションが下がるのは良い状況ではありません。
それと合わせて見ておくと良いのがインスタライブの視聴者数・再生回数でしょうか。
メディアの報道で持て囃されているブランドのリアルタイムの視聴者数が意外と少なく、大手アパレルのブランドの視聴者数が頻度、人数ともに多いなんて事はよくあります。もちろん、販売員の数から店舗数、年商など段違いなのでこちらも当然と言えば当然なのですが、それだけ大手の規模感というのはブランドにとって大きな強みなのです。ちょっとSNSが強いだけでひっくり返せるようなゲームではありません。
若者は意外とリアルタイムで視聴しなくなっていますので、アーカイブ動画をECサイトに埋め込んでおくことをお忘れなく。再生回数としてはカウントされます。うちの学生さんなんか「インスタライブってリアルタイムで見る人いるんですか?」と言われる始末ですよ…。
話が逸れましたが、結局ブランドの成長を目指すのであればSNS(オーガニック)の力だけで継続的に集客を担保するのはハードルが非常に高く、ブランドのPRやWebを含めた広告は必要になるでしょう。出店や卸の展開なども可能であればファン獲得には貢献しますが、ファングッズの域を出ないならやめておいた方が賢明でしょう。(弊社は、継続的にブランドを成長させる気があるクライアントには早めにPRの強化をオススメしています。)
インフルエンサーブランドに関わらず、ブランド指名検索の増減はブランドの人気を現す一つの指標です。インフルエンサーブランドの特徴としては下記になりがちですね。
◯ブランド名での検索数が少ない
◯「ブランド名 アイテム名」の検索が少ない
まず一つは、限られたコミュニティだけに認知されているせいで意外と知名度が高くない=指名検索自体がそれほど発生していないケース。指名検索が増えてくると「認知度が高まってきた」という事ですし、これが増え続けているうちは何をしても上手くいきやすいでしょう。逆に増えない、もしくは減少傾向だと厳しい状況だと言えます。増やし方としては先述しました通り、PRの強化やSNS広告、リアル(実店舗・卸)での露出などが挙げられますが、そのあたりを実行していないと減少しやすいです。
また、アイコン的なアイテムが用意されていないとブランドとしての認知も取りにくく、「ブランド名 アイテム名」などの検索クエリが増えません。これも、ブランドを記憶してもらうのに割りと重要な要素なのですが、設定されていない事が多いです。
その他には、インフルエンサーブランドの指名検索の要員の一つであるUGCの数も指名検索とやや相関します。日々どのような人がどの程度タグ付きで投稿しているか?も合わせて見ておきましょう。
インフルエンサーブランドが規模拡大を狙うと、当然ながら型数を増やしだすのですが、MDのノウハウが無い場合が多いので、消化率が急激に悪化するケースがあります。アイテムごとに簡単に分析してみても、カテゴリー別の展開型数・在庫数と売上が大きく乖離しており、売りたかった商品が全く売れていない場面によく遭遇します。かなりわかりやすいデータが出ますので、見抜くのは割りと簡単です。
無理に規模拡大を狙うとこのような事態に陥りやすいので、ちゃんとした業界経験者を雇用するか、マサ佐藤氏の講義を受けにいきましょう。
いくつか見極めのポイントをご紹介しましたが、現場で数字を見ておりますと本当すぐわかるくらい兆候があります。ブランドを買う側も過去の決算等を見ていて可能性を感じるかもしれませんが、運営している側は既に限界を感じているか、最初からすぐ売却するつもりかどちらかが多いのではないでしょうか。継続的に利益を生み出す自信があるのならそもそも売却などしないでしょうから。
買う側からしたら、在庫を買わずに商標だけ買うパターンもありますので、手っ取り早く知名度そこそこあるブランド買って、自社の生産背景とMDを活用して成長させる事ができる、という算段が立つのなら買って得する事もあるでしょう。大手アパレル並みの社内リソース無いと結構厳しいので、あまり簡単に判断されない事をオススメします。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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