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卸をECに活かすにはどうしたら良い?

日々、ファッション関連のニュースを閲覧しておりますと未だにD2C関連のニュースの報道があります。流石に日本のブランドをピックアップするものはごく少数になってきた印象はあるのですが、当時市場を沸かせていた海外ブランドのその後を追ったようなものが散見されます。

それらを見ておりますと大体は、ブランド創設から成長鈍化を迎え、そこから卸を強化する方針、というものが多いように感じます。その理由としては、もちろんセールスを伸ばす狙いがあるのでしょうけど、「新規顧客獲得の為」と位置付けているブランドもあるようで。これを聞きますとファッション・アパレル業界の方々は「何をそんな当たり前のことを今さら…」という感想を抱くでしょう。筆者も至るところで卸はECの新規獲得にも影響がある、と書いておりますので、ここでその内容をまとめて記載しておきたいと思います。

■指名検索が増える

卸を強化する=流通量が全国的に増える、ということなので、セレクトショップで商品見かけた方々に認知してもらいやすくなります。卸先のセレクトショップが有名であり、且つ店舗数が多ければ多いほどこの効果は高くなります。有名セレクトに商品を置いてもらうだけで信用力にも繋がりますから、そこで商品を手に取って見て購入に至ることもあれば、もっと他の商品も気になる→instagramなどのSNSでルック・コーディネートを確認する→自社ECを閲覧、という流れも発生することでしょう。筆者もこの流れで商品を探し、普段よく行く大手セレクトに欲しいアイテムが無かった場合はまずフルライン揃っているはずの自社ECを確認します。このような流れで指名検索が発生する訳ですね。

また、卸先が増えますと、卸先のSNSやメルマガ・LINEなどで情報が拡散されます。ECサイト上でも商品一覧ページが作成され、中には商品を紹介するブログなども執筆されることもあるでしょう。セレクトショップのお客様がSNS上でブランドのアイテムを着用したコーディネートを投稿するのも珍しくありません。このように、今までリーチできなかった地域でも卸先があるだけで情報が拡散されやすくなります。

■卸先の近隣での売上が増える

次に発生するのが、卸先の近隣での売上アップですね。これは前回のダッシュボード作成の際にも少し触れましたが、卸メインで運営しているブランドが自社ECをスタートさせた時に出てきやすい現象です。

自社に合ったダッシュボードの作り方②

当たり前と言えば当たり前なのですが、商品を手に取って見た・試着した・購入した方がもちろんリピートしやすいです。なので、あとはどれだけ卸先セレクトショップの中での商品の露出を増やすか?が目標になります。意外とここの視点が抜け落ちている方が多いので、せっかく増えた卸先を活用できていないケースがよく散見されます。

■卸先の中でどれだけ「枠」を取れるか?

ではどのようにしたら卸先セレクトショップの中で露出を増やせるのでしょうか?まずブランド担当者は足繁くショップに通い、自社商品の売上がどの程度なのか?をしっかり追いましょう。当たりの良い商品があればなるべく追加・交換などの商品フォローを徹底。それを繰り返す事でショップ内での自ブランドの売上が伸びていきます。ブランドの売上が伸びてくると、ショップの中で展開するラックの本数も増えやすくなりますし、そのような要望をショップ側から頂けるかもしれません。すでにオーダー分を納品してしまっている場合は、委託で追加分をどんどんとフォローしましょう。中には期間を区切って、セレクトの中でポップアップショップを開催しても良いでしょう。このような細かい取り組みをする事で、バイヤーや店長に「売れるブランド」と認知してもらう事が重要です。特に地方セレクトは顧客商売なので、顧客を持っている販売員が「何を売りたいか?」でセールスは変わります。その選択肢に入るとセールスが伸び、次シーズンのオーダー金額が伸び、最後に指名検索が伸びるという流れです。泥臭い作業ですが、実はこの動きが非常に重要なのです。

■デメリットも

卸は基本、受注発注の形式なのでリスクも小さく、それで認知が取りやすいなら「絶対やるべき」と思われるでしょう。しかし、卸にもデメリットは当然あります。それは、

①利益が少ない

②納品後のコントロールが効きにくい

③集金回収業務が大変

このあたりでしょうか。①はセレクトショップへ商品を卸す際、卸価格になりますので大体は上代の50〜60%程度が多いでしょう。原価は変わりませんから、小売と比較するとその分粗利が取れません。なので、普通は卸からスタートして、認知が取れた段階で小売(実店舗・EC)の展開をしていくのがよくあるケースです。そういう意味ではD2Cは逆から手をつけているという事ですね。

②に関しては、セレクトショップは自ブランドのフルラインを買い付けてくれる訳ではありません。あくまでセレクトショップの「編集」の一部なので、想定していない見せ方をされる事もありますし、ショップのイメージとブランドのイメージが合わない事もあるでしょう。また、セール時期やオフ率なども買い付けた側がコントロールするので、プロパーど真ん中の時期にタイムセールを開催されても文句言えません。デ◯トナさんは節操ないとか言ってはいけません。大昔、まだmiumiuが卸をしていた頃、地方セレクトの得意先に行くとセール期間とオフ率が完全に縛られており、ブランドとショップのパワーバランスによってはそんな事もあるんだなぁと思ったものですが、一概にコントロール不可か?と言われると例外もある模様。

③に関しては、どのセレクトショップも納品後、すぐに全額お支払い頂ける訳ではありません。中にはシーズン期間中で毎月分割で分けてお支払いされるケースもあれば、シーズンを超えても売掛金が残るケースもあります。売掛金が残っているのに次シーズンの納品が予定されている場合は、先にお支払いを済ませてもらう必要があります。そのようなご連絡を入れるのも営業担当のお仕事の一つですね。問題は、セレクト側が会社が倒産する事が既にわかっているのにそれを知らせず商品を現金に変え、ある日突然ショップがもぬけのからという事があります。ブランド側は現金で回収が難しい場合、せめて商品だけでも回収しなければならず、そのあたりのリスクが発生するのも卸ならではでしょうか。

ここまで書いてみて既におわかりかと思いますが、卸は使い方によっては比較的低リスクで認知を取れるので、若い方がブランドをスタートする際などはオススメなのです。極端な話、サンプル1点でもあれば次シーズンの売上を取りにいけるので、あとは気合と根性ですね。学生さんにこのお話をしてもあまり腹落ちせず、「SNSでファン獲得してECで売ります!」とまさしくD2Cのような発言をされるのですが、具体的なプランがない「SNSのファン獲得」と、ノウハウの無い「EC運営」を実行に移すくらいなら、卸からスタートするのは決して悪手では無いかと。ファッション業界で卸ビジネスが意外と無くならない意味をしっかりと認識しておきたいものです。

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