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アパレルECの授業内容について

文化服装IMD科での4年間を振り返って

先週マサ佐藤氏がブログに書きました通り、4年間務めておりました文化服装学院の講師を辞任する事になりました。期間中は様々な方に、卒業制作発表会にお越し頂きましてありがとうございました。アパレルECの教育にて、理想に近い形が実現できていたのではないかと思っております。(辞めてしまうのに何ですが…)

文化で実施しておりました授業はお知り合いからよく「どのような事を教えているのか?」と聞かれておりましたので、この機会に授業内容を記載しておこうと思います。あくまでカリキュラムの中心は「MD」を担うマサ佐藤氏ですので、それと連動したECの授業になります。

■決算書から読み取れるアパレルECのトレンド

筆者の趣味の一つでもあるアパレル企業の決算書の閲覧ですが、そこでECの売上推移や各社の実施した施策などは半期に1度細かく確認しております。そこから導き出される昨今のトレンドを資料にまとめ、授業で解説。最近のわかりやすいトッピクスですと、

◯成熟ブランドは出店を抑制・EC強化

◯既存店はスクラップ&ビルド・店舗増床

◯成長ブランドは出店強化

◯OMO・ロイヤリティプログラム推進

などでしょうか。こちらのブログでよく書いている内容になりますね。

■モールと自社ECの違い

筆者はモールの運用にそこまで携わっておりませんので、あくまで上流でのお話中心ですが、アパレル企業で他社モールがどのように活用されているのか?や、ファッションECモールのGMVの推移・出店する際の条件についてお話しております。

■EC・実店舗・卸の特性の理解

それらの情報を踏まえた上で、販売チャネルをどう活用するのか?ブランド創設のタイミングで、「自分ならどれをどう活用するのか?」について簡単にシミュレーションしてもらいます。リアルな販路としては実店舗・卸があり、それぞれECの売上にも影響を及ぼすものですが、特に卸のビジネスモデルについては専門学校でもレクチャーされている事が少ないので、補足する形で授業をしています。

■BASE or Shopifyを使って簡易にECサイトを構築

それらの座学が終わった後、無料ECカートを使って実際にECサイトを作ってもらいます。(Shopifyの場合は開発環境での対応)

BASEでECサイトを作る場合に最低限やっておきたいこと

以前にも書きましたが、BASEを使って「アパレルECのよくある形」に近づける事は可能です。事前に、10サイトほど大手アパレルのECをチェックしてもらい、自分なりにそれに近づけていくという作業ですね。ここで、

◯情報設計

◯導線の理解

などを学んでもらいます。感覚的にはWFを作成するのに似ているかもしれません。

■損益計算書の作成→ECにて発生する諸経費の設定

続いて、こちら。マサ佐藤氏の授業では、ブランドの企画(コンセプト/シーズンテーマ立案・ターゲットの選定・その他MD設計など)を実施しております。その中で、ブランドごとに損益計算書を作成しているのですが、もちろんECの費用も組み込みます。内容としては下記になります。

・構築費(WEB制作会社に見積もりを作成してもらっています。)

・運用コスト

運用コストに関しては、ささげ・カートの月額費用・広告宣伝費・サービスを導入する場合はその手数料も含め、それぞれ該当する勘定科目に計上しています。コーディネートサービスやチャット導入、LINEのサービスなど、学生に導入したいサービスを決めてもらいます。

広告宣伝費はWEB広告・雑誌媒体への出稿などの内訳も出しています。WEB広告費は、売上から導き出される毎月のセッション目標に対して費用を算出。広告費を投じて期待できる効果に関しては、筆者の日々の業務から平均的な数字を算出して、それを元に計画してもらっています。インフルエンサーを活用する場合も目安をお知らせし、自ブランドでは広告を優先するか?インフルエンサーを優先するか?などのシミュレーションをした上で費用を算出しています。

筆者の業務にてお客様のPL管理も手掛ける事がありますので、どの項目にどの程度の費用が発生しているか?はある程度わかります。これらをベースに、営業利益がどの程度出るか?を計算します。

■月別の品揃え・展開計画の作成→販促計画への落とし込み

そしてメインはこちら。MDの授業で作成している「品揃え・展開計画」を基に販促施策を計画します。立案するものとしては、

・毎月の販促企画(店頭イベントを含む販促計画の立案)

・特集記事の企画

・SNS運用の計画立案

などなど。

特集に関しては、いきなり企画させるのはハードルが非常に高いので、まずは大手アパレルのECサイトを1年分、スプレッドシートに書き起こすよう指示しています。3サイト程度書き起こすと、年間でどのようなイベントが行われているか?季節ごとの具体的な着用シーンの提案は何か?どのような販促を実施しているか?ノベルティはどのようなアイテムなのか?などなど、細かいことがわかってきます。筆者がいつもやっているトレーニングを学生さんにもやってもらっている感じですね。

SNSに関しては、YouTube・instagram・tiktokなど何をメインで活用するか決めてもらいます。こちらは、どのタイミングでどのように投稿するか?まで細かく企画書を作成。instagramなら、販促企画に合わせてストーリーズ・ライブ・フィード投稿をどのように活用するか?までシミュレーション。

強化品番を設定→在庫量が確定→売る為の販促を企画→その内容を特集記事に落とし込み→どう拡散するか?を各種SNSを活用しながら検討する

という流れです。どのSNSのどの機能が今回の拡散に向いているのか?様々なブランドの事例を用いて説明し、後は学生さんに考えてもらう感じですね。

これが1年間のカリキュラムになっております。他にもマーケティングの基礎知識やWEB解析の話を差し込むケースもありますが、メインはあくまでブランドをシーズン通してどう運営していくのか?考えてもらう事を目的としています。

たまにツイートしている上記のような内容は別の専門学校で教えております。こちらの方がより、現場のEC担当を育成する内容に近いかもしれませんね。

 

こうして振り返ってみて思う事ですが、そこそこ良い授業していたという自負はあります。お知り合いからも「勿体ない」と言われる事は多いですが、大きな組織で講師をしていると、どうしても学校側の都合に振り回される事が多々あります。できる限り受講者ファーストで講義をしたい、というのがマサ佐藤氏と私の思いでもありましたが、それが実現できないような環境になりましたので、志半ばでしたが辞任いたしました。まぁ「文句があるなら自分でやれよ」という事だと受け止めまして、これらの講義をできれば希望者に向けて実施できればと考えております。そんな訳で、お声がけ頂ける企業様やMD・EC担当者の方がいらっしゃいましたら対応したく思いますので、お気軽にお声がけください。人数増えましたら、それこそ学校にしても良いと考えております。

ご希望される方はX(Twitter)やお問い合わせフォームなど、何でも良いのでお知らせください。(「お前の講義はいらんから、マサ佐藤の講義だけ受けさせろ」という場合はマサさんのメニューをご希望ください泣)

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