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今回の記事は、所謂(長く着られるデザイン?)定番商品を多く扱うショップのマーチャンダイジング(以下MD)について考えてみたいと思います。先に個人的な趣向についてお話させて頂くと、何10年も売られている定番商品。例えば、ラコステのポロシャツやバブアーのビデイル。オールデンのレザーシューズ。ブルックスブラザーズの白BDシャツ等の商品は、私は大変好むところであります。上述したような商品は、基本セールをして売ることがないと考えられますから(寧ろ最近は値上げが相次いでいる)、MDいう商品分類の適時に関するルールとして、”定番商品””継続商品”という概念で運用しているブランド・ショップが、まだ少なからず存在するのではないでしょうか?セールしない商品=定番・継続商品という商品分類に設定することは、以前の記事にも書きましたが、愚策でしかありません。理由としては、これまでお付き合いさせて頂いたお客様もそうでしたが、在庫が増えやすくなるからです。(詳しいことは、下記の過去記事をご覧ください)
長く着られる定番商品でも、当然のことながら、12月にラコステのポロシャツは売れにくいし、6月にバブアーのアウターは売れにくいです。ですから定番商品と言われるものでも、販売期間・終了日を設定した方が、在庫が増えにくい!というのが、紛れもない事実です。
シーズン区分の定義をMD予算化する。シーズンコードの定義は商品分析等で活用すると定義し、上述した商品を分類してみると、ラコステのポロシャツは春夏区分で季節コードは夏。バブアーは秋冬区分で季節コードは秋。継続商品で分類しても良いと考えられるのは、オールデンのレザーシューズとブルックスブラザーズ白BDでしょうか??
しかしながら、上記の分類でも昨今の温暖化を考えると、7月に夏のセール・12月末~1月頭に冬のセールを行う!という一般的なシーズン区分が、現状に中々即していない部分が多いのも事実ですし、気温変化に応じてシーズン区分を細かく増やしたしても、得られるメリットよりも、作業業務の増加、商品管理が複雑化するというデメリットがあります。また、個々のブランド・ショップのコンセプトを考えると、例え同じ商品でも適時に関する商品分類を変え、独自性を出すことも、今後は重要となってくるかもしれません。
独自性という部分において、一つ例をあげさせて頂くと、例えば上述したような定番商品を多く扱うメンズブランドの場合、シーズン区分の設定を以下のように行います。
・通年商品→1年中店頭に商品を展開する商品。
・SS商品→12月~翌年10月末まで商品投入・展開する商品(販売終了日10月31日)
・AW商品→7月~翌年4月30日まで商品投入・展開する商品(販売終了日4月30日)
上記のシーズン区分の考え方でいうと、ラコステのポロシャツは当然ながらSS商品区分。バブアーはAW商品区分になりますが、私の場合ブルックスブラザーズのBDシャツは、通年商品には入れず、このショップのコンセプトにもよりますが、SS商品かAW商品どちらかに分類します。所謂この考え方は、SS・AWという名称を使用はしていますが、3シーズン展開の考え方となります。例えば、バブアーの場合、9月くらいから商品展開を始め、4月30日まで販売する!という計画で、MD予算を設計します。すると、リードタイムを加味した追加発注計画も考慮し、4月30日には在庫をなくす!という計画を立てますから、在庫を多く残す可能性は減ることになるでしょう。更に言えば、適品における商品分類そのものに適時における考え方も組み入れると、よりシンプルな構造となります。
【例】
○長袖はAW区分と定義する。(上記の場合、バブアーやブルックスブラザーズの白BDはAW区分)
○半袖はSS商品区分と定義する(ラコステのポロシャツはSS区分)
○通年は年間店頭に展開するセールしない商品と定義する(オールデンのレザーシューズ)
この考え方のメリットは、商品のカテゴリー分類自体にシーズン区分の定義を紐づけることが可能となり、商品分類の構造がシンプルとなることで、MD予算設計におけるシーズン区分を予算化する必要がない等、MDの作業部分の軽減化がはかれます。さらに言えば、販売期間を区切ることが出来ない通年商品が大幅に減ると推測されますから、在庫回転の向上も図れます。
しかし、この考え方にもデメリットは複数存在します。例えば、商品の鮮度が重要になってくるレディースでは、この考え方を採用するのは難しいと言えます。また、上記の考え方では、シーズン区分商品の販売期間が半年ではなく、年の3分の2になり販売期間が長くなりますから、シーズン区分の下の階層であるシーズンコードの考え方・定義を具体的に設定する必要があります。仮にこの辺の設定が適当になると、商品計画・管理の面で悪影響が起こる可能性があります。
今回は定番商品のシーズン区分について考えてみましたが、長く着られる・売れる商品=定番商品!だからといって、在庫が増えても構わない!という考え方は問題でしかありません。定番商品といえども、商品の販売期間を設定し、”適品””適時””適量”の精度を上げることがマーチャンダイザーの仕事になります。近年の温暖化の問題もありますから、今回の記事が、定番商品のシーズン区分に限らず、自分たち自身のブランド・ショップのシーズン区分の設定を考えるきっかけになれば、嬉しく存じます。今回の記事はこれにて終了です。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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