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アパレルMDの授業内容について

★アパレルMDの授業内容とは?

以前、このブログでもお伝えしたように、4年間務めておりました文化服装学院IMD科の講師を辞任する事になりました。先日、深地さんがIMD科で行ってきたアパレルECの授業内容をブログ公開しておりましたので、私も4年間文化服装IMD科で行ってきた”マーチャダイジング(以下MD)”の授業内容を記載しておこうと思います。

アパレルECの授業内容について


IMD科と名がつくだけあって、MDの講義はECを含めた他の講義にも大きい影響を与えます。その為、毎年担任の先生と打ち合わせしながら、商品製作・MDを中心とし、各授業と連動したカリキュラムを作成することから始まります。特に、今年度に用意していたカリキュラムは、当時の担任である澁谷摩耶先生が主導し、素晴らしいカリキュラムが出来上がっていました。(下記の図はカリキュラムの一部です。昨年度の私と深地さんが担当した部分)

先ず、MDの授業の大枠を話しておきますと、カリキュラムの前半はMDの商品面・数字面を分けて授業を進行させます。その際に心がけていることは、MDの数字面は基礎を徹底的に教える。MDの商品面は学生の希望を尊重するとともに、手段に拘らず自由な発想を伸ばしていく!このことです。ということで、以下アパレルMDの授業内容についてをお伝えします。

★MDとは?~MDの基礎理解~

まず学生に教えることは、MDの基礎に関してです。5適を中心としたMDの基礎を丁寧に伝えていきます。また、5適を学ぶ前段階において、ブランドコンセプトの重要性や顧客ターゲットに関することを、丁寧に伝えていきます。MDの基礎を学生に教える上において、特に意識していることは、MDにおける手段に”絶対”はない!ということです。ですから、MDの基礎を教える際は、ケーススタディを用いながら、教える時間よりも議論ができる時間を増やすことを心がけています。

★MDの数字面の教育内容

MDの数字面の授業は、以下の流れで教えています。
●損益計算書をわかりやすく
●売価・原価・値入・粗利益の理解
●仕入予算の考え方
●OTBのロジック→在庫管理の基礎理解
この辺の内容は、社会人に教える内容と全く同じです。(詳しい内容は以下の連載をご覧ください)
売価・原価・粗利益・値入の理解(佐藤正臣)

しかしながら、社会人と学生とでは、MDの数字面に関する意識にだいぶ差がありますから、ケーススタディ等を用いながら、より時間をかけわかりやすく教えるように心がけています。また、学生の場合は、独立を希望している学生や、OEM/ODMの企業に就職する学生もいますので、卸売りの数字の特徴等もカリキュラム組み入れています。そして、数字面基礎の授業終了時にMDの理解力を測る為、MDの数字面を中心とした筆記テストを実施します。

★MDの商品面の教育内容

MDの商品面の授業は、学生に自分たちのブランドを立ち上げてもらう!という前提で授業を進めていきます。何故、自分たちのブランドを立ち上げるという前提にするのか?と言いますと、教育の目的は、あくまでMDの理解と社会人になってからの知識の活用です。しかしながら、学生の立場に立った場合、私たち大人が押し付けるような形でMDを教えるよりは、自分たちが立ち上げたいブランドを前提とした方が、よりMDの理解が深まる!といった狙いがあります。ということで、ブランドを立ち上げる前提として、以下のことを学生に決めてもらいます。その際のルール設定は以下の通りです。

①ブランドコンセプトを決める
②大枠の展開商品を決める(デザイン等も含めて)
③顧客ターゲットを設定する
④大枠のカテゴリー別売上構成比を決める(適量の表現)
⑤カテゴリー別の価格設定を決める(適価の表現)
⑥出店場所を具体的に決めてもらう(適所(ブランドコンセプトに見合った)

上記の項目で、学生にとって難しいことは、カテゴリーの設定と売上構成比の設定です。MDにおいてカテゴリー設定は重要な部分になりますから、教育の初期段階でもカテゴリー設定の考え方とカテゴリーの売上構成比の話は、丁寧に伝えるように心がけています。そして、このことが纏まったら、各グループごと(IMDの学習はグループで行っている)に発表をしてもらいます。

上記のことが第1段階になり、第2段階より商品企画を深めてもらい、今度はMD MAPを作成してもらいます。昨今の温暖化で、商品の適時投入というのがより重要となっており、ブランドコンセプトや顧客ターゲットに見合った商品の適時投入を、時系列で表現してもらい発表してもらいます。その際に心がけていることは、ブランドコンセプトに見合った期間設定を考えろ!ということです。ですから、ブランドによって月単位のところもあれば、2か月・3か月単位のところもあります。(流石に週単位のブランドはないが(笑))そして、MAP完成次第、発表をしてもらいます。(下記のMAPは講義用に、私が準備したもの)

因みに、ここまでの商品面の授業では、MDの数字面で教えていることは、あまり活用させることはありません。それは、次の段階からになります。

★ブランドのMD設計(商品・数字両面)を行っていく

カリキュラムの前半部分でMD数字基礎の理解と商品面MDでブランドの大枠のMDを立ち上げた後、カリキュラムの後半は、いよいよMDの商品面と数字面を合体させ、MD設計を行います。ここから、深地さんのECや販売業務等の授業と連動を行います。流れは以下の通りです。

①損益計算書の策定~値入率と粗利率の設定~
②月別売上予算の策定~販促計画との連動~
③月別・カテゴリー別売上予算の策定~MD MAPとの連動~
④店舗平面図の策定と標準展開アイテム数の策定
⑤月別投入アイテム数の設計
⑥月別OTB計画の策定

①損益計算書の策定~値入率と粗利率の設定~

先ずは、損益計算書の策定です。完璧に販管費を算出することは不可能ではありますが、実際の物件を調べさせたり、その他販管費も細かく算出させます。また、EC関連や販促関連等の販管費は、深地さんに指導を仰ぎ、できる限りリアルの損益になるよう販管費の算出をさせます。その後大事になってくるのは、販管費以上の粗利益高の設定と粗利率の設定です。とくに粗利率の設定は、値入率(原価率)とも連動し、MDの重要な部分を占めますから(特に価格戦略の部分で)、学生や他の先生と相談の上、慎重に数字を設定致します。

②月別売上予算の策定~販促計画との連動~

半期損益の策定が終了すると、次は月別売上予算の策定に入ります。これは、ブランドコンセプトや販売促進活動によって売上が左右される部分と、どの気温になればどの商品が売れるのか?という、適時・適品に大きく関わる部分になりますので、下記のフォームに自分たちのブランドにあった、販促活動・商品投入の大枠を記入してもらったのち、月別の売上予算を策定していきます。

③月別・カテゴリー別売上予算の策定~MD MAPとの連動~

次はMD設計において一番重要な部分、月別カテゴリー別売上予算の策定です。これは、講義の前半で大枠のMD MAPを策定していますから、それに準じた売上構成比を策定していきます。MAPと数字の辻褄が合わなければ(整合性がとれていない)、MAPや数字の修正を試みます。当然のことですが、学生が企画している商品のブラッシュアップも継続的に行っていきます。また、この作業が終了すると、凡その1点単価が算出されますので、客数や客単価の目標数値を算出することが出来ます。その目標数値を基とし、ECは深地先生と相談の上、ECでの売り方や宣伝の仕方等の構築に繋げます。(実店舗も同様です)

④店舗平面図の策定と標準展開アイテム数の策定
⑤月別投入アイテム数の設計

次は商品の投入アイテム数を策定する為の作業に入ります。まず、講義の前半部分で選定した物件の間取りを基に、ショップの平面図を策定します。そして、ハンガーラックやたたみ台にどのくらい商品を展開したいのか?ということを決め、ショップの標準的な商品展開数量を算出します。(下記の図は、卒業生の資料。年々レベルがあがっていた)

(ショップの)標準展開商品数量の策定の後、各カテゴリーごとに商品の販売期間を設定し、半期での商品アイテム数を算出します。

 

⑥月別OTB計画の策定

月別の商品の投入計画が決まったら(MD MAPとの連動)、月別の粗利率予算の策定(粗利率予算はセール等販売活動と連動)→月別カテゴリー別仕入予算の策定→在庫予算が確定します。在庫予算まで確定したら、本当にその計画でよかったのか?特に、売れる前の月に在庫がピークになっているか?等のチェックを行ったのち、MDの講義の大枠は終了します。また、各項目の間に発表のリハーサルを設け、私や深地先生が講評・プレゼン指導等を行い、卒業制作発表会へむけて!の流れになっています。以上がアパレルMDの授業内容の大枠です。

★社会人むけに、この講義を実施したい!と考えています。

IMD科での4年間を振り返ってみると、なかなか良い授業をしていたのでは?という自負はあります。また、深地さんも仰っていましたが、できる限り受講者ファーストで講義を行いたい!!というのが深地さんと私の思いでもありましたが、それが実現できないような環境になりましたので、志半ばでしたが文化服装の講師を辞任いたしました。しかしながら、折角4年間で築き上げた授業カリキュラムを捨ててしまうのは勿体ないので、深地さんと私の講義を希望する企業・組織へ向けて、これらの講義を実施出来ればと考えています。また、個人での希望者が多いようでしたらビジネススクール立上げも検討していますので、その際はお知らせいたします。ご希望される方はX(Twitter)やお問い合わせフォームなど、何でも良いのでお知らせください。
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