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前回のブログでは、2018年期の粗利率の低下は、実は2018年2月期SS商戦のMDが問題でそれがスタートでは?ということを考察・検証しました。
今回は、2018年2月期の決算説明会資料にも述べらている。
”秋冬シーズンは、ST業態のMD計画が裏目に。
当初の目標通りの粗利得られず、成長鈍る。 春夏MDより基本に立ち返った商品構成へ回帰。”
このことと。更に、2019年2月期半期決算説明会資料で述べられている。
”総在庫金額抑制の一環として春物商品の仕入れを抑えたが、商品の品揃え鮮 度を欠いた事により上半期は苦戦 ”
このことが、具体的にどのようなことであったのかを?決算関連資料から見える数字で、検証・考察していきます。
まずは、前回までのブログで使用した、売上・粗利・仕入・在庫を連動させた図をご覧ください。
今回は、2019年2月期の第3Qまでの数字が確定していましたので、その数字を付け加えています。
まずは、2018年2月期のAW商戦がどうだったのか?ということです。
AW商戦に当たる、第3Qと第4Q(9月~2月)の売上の前年比は、126%です。そして、仕入金額の同前年比は、131%です。この数字だけを見ると、さして2019年2月期半期決算説明会資料に書かれているように、在庫が急増したようには思えません。
しかしながら、前回のブログでも申しましたように、トウキョウベースのMDの特徴を考えると。AW商材の仕入の多くは、第3・4Qではなく、第2・3Qの比重の方が圧倒的に高い筈です。
そこで、第2・3Qの仕入金額の前年比を見てみると、163%と大きく数字が伸びています。
また、AW商戦真っ只中の第3Qの数字だけを見れば、売上は前年比の129%にたいして、仕入は167%と大きく伸びています。
そして、2018年2月期決算時点で在庫は翌月以降の売上原価分の3カ月以上の在庫を持っており、決算説明会資料に書かれていたように、2018年AWのMDは失敗。在庫過多に陥ったのは明白です。
何故、このようなことになるのか??理由はいくつか考えられますが、一番の理由としては、MD予算設計。そして、管理・運用が杜撰であると考えて間違いありません。
トウキョウベースのようなセレクト業態は、国内デザイナー等のバイイング商品は、半年以上前に発注しなければなりません。
また、オリジナル商品も国内生産といえども、国内生産の場合。デザイン・パターン。そして、工場・生地・付属。場合によっては裁断が、国内の場合は一括されているケースが少なく、前述のことが完全に揃っていないと、リードタイムが早まることはありません。
SPA事業とバイイングの両立は、実は精度の高い、MDスケジュールや予算設計・管理が必要となります。また、ステュディオス(以下ST)業態は、店舗バイイングに力を入れており、そのことは決算関連書類にも書かれています。
そうなると、更に管理が難しくなり、上記のようなことがしっかりと出来ていないと、2018年2月期AW商戦のように、立ち上がりの時期から、オーバー仕入に陥る可能性が高いということです。
そのことと、2018年2月期SS商材を引きずったことで、実店舗は商品で溢れ、不良在庫を早めにECでセールで展開する。そのことで、粗利率の低下。そして、以前のブログでも書いたように、ECの客単価の低下(前年比77.8%)に影響を及ぼしたと考えられます。
また、実店舗では、オーバー仕入のため店頭のVMDや在庫管理の業務に悪戦苦闘したと推測され、客数が低下し売上に影響を与えた。そのことを販売員の接客でカバーするため、本部から負荷の高い指示が出され、客数は減少したが、客単価は増加し、売上をリカバリーしたと考えるのが、自然です。
しかしながら、そのような努力も報われず、2018年2月期末時点の在庫水準は高くなっています。本来であれば、もっとセール促進し、在庫消化に励むべきだったのでしょうが、
・ブランド・ショップのコンセプト上そこまで思い切ったセール処置が出来なかったこと。
・残った商品でも次年度売れる商品も多くある!と慢心した?
このことが、2019年2月期の半期決算説明会資料の文言でも伺えます。
そこで、次回のブログでは、2019年2月期はどのようなショップの状態になっているのか?を決算関連資料から探っていきたいと思います。
次回もお楽しみに。
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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