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秋冬在庫をチャンスに変える!OTB活用術

年末のこの時期になると、必ずと言っていいほど秋冬商品の最終消化に関する記事を書いています。ということで、今年もまた秋冬商品の最終消化に関する記事を、読者の皆様にお届けできればと思います。(下記は昨年の記事)

秋冬商品の最終在庫消化計画を策定しよう!

★秋冬商品の在庫が増えたのは、寧ろチャンスである?

2024年11月末現在、過去数年と同様に暖冬傾向が続いています。多くのアパレル小売企業では、今年の暖冬傾向を予測し、アウターをはじめとする冬物商品の投入時期を遅らせる対応を取っていました。しかし、2024年9月、10月、11月は、過去に例を見ないほどの高温が続いたため、当初の想定よりも多くの冬物商品在庫を抱えている企業が多いと思われます。一方で、気象庁の発表によると、2024年12月以降の3か月間はほぼ平年並みの気温になると予測されています。

向こう3か月の天候の見通し。全国 (12月~2月)11月19日発表

見方を変えれば、11月末時点で想定以上の在庫が残っている状況は、12月以降、予算以上の売上や粗利を獲得できるチャンスと捉えることもできます。ということで、今回はOTB表を見ながら、実際に使ってみるトレーニングとして、12月以降は平年並みの気温が推移し、秋冬商品を売るチャンスだと想定した例題を考えてみましょう。

★11月末時点での秋冬商品の在庫が多く残ったケースのシミュレーションをしてみよう!

以下の図は、ある事業部Aの秋冬商品の12月~2月までのMD予算と11月末時点での在庫実績を記したOTB表になります。*値入率60%想定


先ずは、上記のOTB表から12月~2月のMD予算を確認します。
・売上4,500万円
・粗利率51% ・粗利高2,297万円
・2月末の秋冬商品の在庫目標200万円
となっています。付け加えると、12月以降の秋冬商品の仕入は予算・実績に含まれておりません。次は、11月末時点の在庫予算と在庫実績を確認します。
・在庫原価予算2,403万円
・在庫原価実績2,600万円
となっており、11月末時点で約200万円ほど、在庫実績が在庫予算を上回っています。仮に12月以降、予算通りの売上・粗利益を達成できたとしても、このケースでは、2月末時点での在庫目標の2倍の在庫が残ってしまうことになります。

★OTBのロジックを活用し、12月以降の見通しを立てる

ここでMDが考えなければならないのは、11月末時点で増えてしまった在庫は、12月以降売れる可能性が高いと捉え、セールなどの売価変更施策を活用し、予算以上の売上・粗利益の獲得を目指すべきです。ということで、OTBのロジックを活用し、12月以降の売上・粗利益獲得の見通しを立ててみます。上記のケースで、2月末の在庫目標を達成する為に、必要な売上原価は?
→2600万円(11月末の在庫実績)-200万円(2月末の在庫目標)=-2,400万円(12月~2月に必要な売上原価)
となります。12月以降は、平年並みの気温で推移し、セールなどを活用することで売上も向上するという仮説のもと、12月以降の売上は売上予算の105%で推移すると見通しを立てます。
→4,500万円(12月~2月の売上予算)×105%=4,725万円(12月~2月の売上見通し)
となります。売上の見通しと売上原価目標が算出できたので、粗利益高・率の見通しを算出することも出来ます。
→4,725万円(12月~2月の売上見通し)-2,400万円(12月~2月に必要な売上原価)=2,325万円(12月~2月の粗利益見通し)
→2,325万円(12月~2月の粗利益見通し)÷4,725万円(12月~2月の売上見通し)=49.2%(12月~2月の粗利率見通し)
となります。このことをOTB表で表現したのが、以下の図です。

このケースでは、売上見通しは売上予算を上回るだけでなく、粗利高見通しも粗利高予算を上回る見込みとなります。ただし、粗利率予算が51%であるのに対し、粗利率見通しは49.2%とやや低くなっているため、当初のセール想定よりも強い売価変更施策が必要となります。因みに、粗利率予算は変えずに、2月末在庫の目標を達成するためには、売上予算の約109%の売上が必要となります。話を戻しまして、今回計算方法は端折りますが、当初のOFF率想定が22.4%だったのに対して、見通しでは27%のOFF率となります。結果、当初の予定よりも、約5%ほど売変施策を強める必要があり、MD以外にも販売戦略を含めた施策を具体的に立案しなければなりません。

繰り返しになりますが、11月までの高温傾向により、当初の予定よりも多くの秋冬商品が残っている企業は多いと考えられます。しかし、今回ご紹介したように、在庫が多い状況は、12月以降の売上・粗利を予算以上に獲得できるチャンスと捉えることもできます。ぜひ、今回ご紹介した内容を参考にしていただければ幸いです。
今回の記事は、以上で終了です。

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