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先日、以下の記事を見つけました。
ご紹介した記事の概略は、ここ数年の気候変動の影響と、昨年10月まで夏の気温が続き、11月も気温が高かったため、昨年の冬物商品の動きだしが鈍かったことから、今年の冬は冬物商品の投入時期を遅らせるという内容です。しかしながら、先にご紹介した記事の中に、看過できない文言がありましたので、以下に記載します。
防寒アウターも実需のピークが見込まれる1月はプロパー価格を維持して販売し、仮に売れ残っても「セールにはかけず、翌シーズンに持ち越す」という考えの店まである。
シーズン終了後に商品が余ってしまうのは、ある程度避けられないことです。しかし、商品の発注段階、つまり計画の時点から「セールには出さずに翌シーズンに持ち越す」という考え方を持つのは、百害あって一利なしと言えるでしょう。
私はこれまで、上場アパレル小売企業の決算資料を分析してきましたが、期末在庫が大幅に増加するケースを何度か目にすることがありました。このような場合、その期の損益はほとんどが黒字で着地していました。しかし、翌期になると、増えてしまった在庫の消化に追われ、時には必要以上のセールを強いられることで粗利益を失い、結果として業績が苦戦するケースがほとんどでした。さらに、前期に大幅に在庫が増加すると、翌年の新規商品の仕入れ枠削減を迫られるため、売上の低下にも繋がります。特に、トレンドの影響を強く受けるレディース商品では、この傾向が顕著です。(前期に多く在庫を残した場合の仕入予算策定の考え方は以下の記事をご覧ください)
また、単純な話ですが、残った在庫を翌シーズンまで持ち越すことは、在庫回転率の悪化に繋がり、ひいてはキャッシュフローの悪化を招きます。このことは経営的な視点でみれば極めて悪手です。(在庫回転とキャッシュフローに関することは、以下の記事をご覧ください)
今回ご紹介した記事で発言を取り上げられた方が、どのような見識をもって「売れ残ってもセールには出さず、翌シーズンに持ち越す」と発言されたのか、その真意は測りかねます。しかし、このような考えの方が、アパレル小売りのMDや経営に携わるべきではありません。またマスコミも、気候変動に対応したMDに関する記事を執筆する際には、「他人事のように言われたことをそのまま書く」のではなく、確かな知識と見識を深め、客観的で的確な批評を記してほしいと強く願います。
ということで、今回の記事は以上で終了です。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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