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在庫過多を防ぐ!期首在庫を加味したアパレル仕入予算策定のポイント

★仕入予算を策定の基本は「売れる分だけ仕入れる」こと

アパレル小売業に限らず、小売業においては、商品の仕入活動を行う前に、必ず仕入予算を策定する必要があります。また、弊社ブログでも繰り返し述べておりますように、仕入予算を策定する際の基本は、「売れる分だけ仕入れる」という考え方に基づき予算を組むことです。この考え方を踏まえますと、損益計算に基づいて算出される売上予算および粗利予算を基に、「売上原価予算=仕入原価予算」と設定することが適切です。(仕入予算設定の基本的な考え方は、以下の記事をご覧ください。)

改めて仕入予算の設定の基本のお話します。


「売れる分だけ仕入れる」という考え方に基づき、仕入予算を策定しやすいのは、販売期間が明確に区切られた、いわゆるシーズン商品です。一方、年中展開する「通年品」は、「売れる分だけ仕入れる」という考え方のみで仕入予算を策定することが通用しない場合があるということは、弊社ブログでも繰り返しお伝えしてまいりました。

通年(継続)商品の予算設計の考え方

★シーズン商品でも「売れる分だけ仕入れる」で、仕入予算を策定してはいけないケースがある?

しかしながら、販売期間が明確に区切られたシーズン商品であっても、「売れる分だけ仕入れる」という考え方が適用できない場合もございます。それは、期首在庫が存在する場合です。さらに詳しく申し上げますと、前シーズンにセール対象としなかった、あるいはセールに出せなかった商品の残在庫をアウトレット店舗に回さず、倉庫に一定期間保管し、次シーズンもプロパー店舗で再展開する商品のことを指します。例えば、長年にわたりセールを行わずに継続的に展開している防寒アウターや夏物のTシャツ・ポロシャツなどは、長年にわたりセールを行わずに展開しているものの、シーズン品に分類される商品として、このケースに該当します。そこで今回は、シーズン商品でありながら期首在庫が存在する場合の仕入予算策定について、ケーススタディを用いてご説明いたします。

●期首在庫(再展開商品在庫)あった場合のケーススタディ

あるメンズショップの秋冬シーズン防寒アウターの各予算と残して良い在庫は?以下の通りです。

・売上 1億円
・粗利率 50%
・粗利高5000万円
・売上原価5000万円
・残して良い在庫原価376万円(消化率93%目標)
(*今回残在庫の計算の仕方は、端折らせて頂きます)

更に設定を付け加えます。このメンズショップは、前秋冬シーズンの残在庫500万円を、今シーズン再展開予定ですこのようなケースの仕入予算を策定方法を以下お伝え致します。

今回のケースにおいて、残在庫を加味しない場合の仕入予算は、売上原価と仕入原価が同額の5000万円となります。さらに、消化率を93%と設定した場合、376万円の在庫を残しても問題ないため、5376万円を仕入予算として設定することが可能です。しかしながら、今回のケースでは期首在庫が500万円存在するため、期首在庫500万円を加味せずに仕入予算を設定すると、シーズン終了後の期末在庫が876万円となり、在庫が大幅に増加してしまいます。

上述したケースのように在庫が増加しないためには、期首在庫500万円を考慮した上で仕入予算を策定する必要があります。れは、OTB(Open-to-Buy)の考え方を活用することで、容易に仕入予算を策定することが可能です。今回のケースでは、期首在庫(残在庫)が500万円、売上原価予算が5000万円、そして残しても問題ない在庫金額(期末在庫目標)が376万円となっておりますので。
→(売上原価5000万円+期末在庫原価376万円)-期首在庫500万円=4876万円(仕入原価予算)
結果、売上原価予算5000万円、仕入原価予算4876万円となり、売上原価予算>仕入原価予算で仕入原価予算を策定しなければなりません。

★残在庫の質・中身をチェックすることの重要性

次シーズンに多くの在庫を持ち越さないためには、数年に渡って継続的に展開できる商品であっても、極力在庫は残さないことです。しかしながら、今回の記事でお伝えしたように前シーズンで想定以上の在庫が残ってしまうことも起こり得ます。その際に注意すべき点は、残在庫の内容をしっかりと確認することです。セールを行う必要がなく、来年以降も継続販売可能な商品であっても、売れにくい色やサイズが多く残っている状況であれば、その残在庫の質は良いとは言えません。そのような場合、今回の記事でお伝えしたように、数字だけで判断して仕入予算を削減すると、想定以上に売上を損失する可能性があります。そのため、売上を維持するために必要な上乗せ仕入額はどの程度なのか、上長に相談すべきでしょう。
今回このような記事を掲載させていただいた背景には、期首在庫を加味せずに仕入予算を策定・実施した結果、在庫を増加させてしまった組織を数多く見てきたということがあります。今回の記事が、アパレル小売業に従事される方々のお役に立てれば幸いです。

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