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商品発注から店頭入荷までのリードタイム(LT)短縮が難しい上に、気候変動で商品の売れ方が変化する中、アパレル小売のマーチャンダイザー(MD)には、特に以下の2点の仕事の精度を向上させることを求められています。
・商品発注前段階におけるMD予算策定の精度向上
・期中におけるMD運用の精度向上
これらの精度向上は、近年の気候変動対策としても極めて重要です。この点については、これまでも弊社のブログで何度か取り上げています。
そこで今回の記事では、MDの予算策定や期中運用の精度を高めるために、商品の追加発注予算を策定することの重要性についてお伝えします。
MD予算を策定する上で、商品の追加発注予算(追加枠)を設けるメリットは以下の通りです。
〇新規商品の初回発注金額が減少し、在庫回転率の向上に繋がる
〇仮に商品の売上が芳しくない場合でも、追加枠を使わなければ事前に在庫過多を防ぐことができる
しかしながら、商品の追加発注予算を設けるには一定の条件があります。具体的には、商品の販売期間がリードタイム(LT)を下回らない場合でなければ、追加枠を設定することはできません。((例)商品の販売期間が2か月。LTが2カ月の場合、(予算の)追加枠を設けることは出来ない)
このことから、一般的に商品の販売期間が長いとされるメンズにおいては、この追加枠の設定が特に有効です。また、販売期間が短いとされるレディースの場合でも、カテゴリーや商品によっては販売期間を長く設定していることもあるため、そうしたケースでは追加枠を設けることができるでしょう。
それでは、架空のレディースブランドを例に、商品の追加予算枠について考えてみましょう。今回は、夏のセールが落ち着いた後も活躍する、晩夏初秋物について考えてみましょう。
(例)
・レディース晩夏初秋物カットソー ・商品の販売期間は3か月
・今回は売上原価=仕入原価予算とする(消化率100%)
・ケース①②ともに3か月の売上・粗利予算(月別)は以下の図の通り

LTが3ヶ月の場合、上記の図をご覧いただくとわかるように、追加商品の予算を組むのが難しく、6月末(7月頭でも良いが)にまとめて仕入れることになります。この場合の在庫回転日数は約59日です。(7月中に商品の追加発注を行っても、入荷は10月以降となる)つまり、このカテゴリーの商品は一発勝負での発注となるため、その精度が売上や粗利に大きく影響します。

LTが2ヶ月の場合、7月初旬に追加発注すれば、9月初旬には商品が店頭に並びます。この点を考慮し、追加商品の予算を組み込んだのが上記の図です。この場合の在庫消化日数は約48日となり、①よりも在庫回転日数が改善されます。LT2カ月の場合も、初回発注の精度を上げる必要がある点は①と変わりません。しかし、もしこのカテゴリーの売れ行きが芳しくない場合でも、追加発注をする必要がないため、①に比べて在庫過多を防ぐことができるのが、上記の図からもご理解いただけるのではないでしょうか。
今回の記事は、マーチャンダイザーの仕事の中でも高度な内容だったかもしれません。しかし、少しでも在庫リスクを減らしたいと考えている皆さんのお役に立てたなら幸いです。また、商品個々の追加発注に関する記事は、下記のリンクをご覧頂けると幸いです。
今回の記事は、これで終了です。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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