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最近。色んな場面で人と話をしていると。
「MD・バイヤーのレベルが下がった」
と話される方に遭遇します。
しかし、個人的には、この見方は正しくないと感じています。
確かにMD(数字だけ担当する人のことではない)バイヤーは、素材・デザイン・縫製・パターン等の最低限の知識は必要だと感じますし、店頭に展開する商品・品揃えのアイデアを出し、MD数値設計することも重要です。
しかし、このことをすべて網羅できるようなスーパーマンのような人は、昔からあまり見かけたことはないですし、今後も中々そういう人物が現れることは稀でしょう。
このことは寧ろ、MD・バイヤーのレベルが下がったとみるよりも、ここ数年のアパレル・ファッション小売業界の環境変化によって、実は”バイヤー・MDの元々持っていた実力が浮彫になった”だけでは?と感じています。
なぜならば、このアパレル・ファッション小売業界には、10年以上も商品・品揃えの中枢をなすポジション(MD・バイヤー)に居座り続けているメンバーがいるブランド・ショップは、まだまだ多くあるからです。
絶対に、MDの権限を手放さない経営者もそれこそ多くいます。
(中には、30年以上手放さない人もいる)
若いバイヤー・MDの実力がどうか?ではなく、若い人材にそういったチャンスが回ってくるチャンス自体が少なくなっていると言えます。
この業界でよくみられる風景として問題なのが。。。
新しくMD・バイヤーを目指す若い人をアシスタントにつけても、昔の職人のように「自分の仕事を見て覚えろ」的なことがまだ存在すること。
そして、もっと問題なのが、自分の仕事の既得権益を侵される怖さから、むしろ新しく入った人材を遠ざけようとすることなどです。
こうした、旧態依然とした現状を改めなければ、アパレル業界の変わりゆく環境変化についていけなくなるのは必然ですし、若い人材も入らず、更なる高齢化を招く。そして、現状この業界の仕事に携わっている人も、今後更に多く離れるかもしれません。
とくに販売という仕事についている人の中からバイヤー・MDを目指す希望者(販売含め、MD/バイヤー以外の職種も)がいれば、このような人材に対して、企業として「学ぶ」場を提供してみてはどうでしょうか?
店頭のシフトの関係などで難しい面があるのは、経験者として重々承知していますが、企業が本気で「知恵」を出せばなんらかの方法があるはずです。
バイヤー・MDとして最低限必要な知識を感覚ではなく、論理的に伝える。教えるといったことが必要です。
但し、内輪でしか通用しないルールを教えても意味はありません。
(人材育成の費用には、営業利益の20%を使用せよ!という経営の専門家の声もある。)
若い人やキャリアの浅い人は、ベテランより知識が多くある筈もありません。
しかしながら、前述したように、知識に関しては組織としての「学ぶ場」を設け、知識を身に着けてもらう。
その上で、ファッションビジネスに関する「知恵」を出す場を与えてはどうでしょうか?
新規事業計画等を公募で募集している会社も実際にあります。そのことは大変よい試みだと私は感じています。
大々的な試みでなくとも、現状日々仕事に従事している若手スタッフに、ファッションビジネスに関して何か「新しい知恵」「新しいアイデア」を披露する機会を与える。
そして、良いアイデアを出す人材には、ブランド・ショップの商品中枢を任せる等、思い切った抜擢も、これからの時代必要ではないでしょうか。そして、その機会を現状以上に多くするということが、何よりも重要なことです。
MD・バイヤーにとって知識は重要であります。
しかしながら、一番大事なことは「お客様に喜ばれること」という本質を見極め、その都度都度の「良い知恵」を出すこと。このことが重要です。
長く業界に染まってしまった私のようなものには、そのような「知恵」を出す能力は年々薄まっています。だからこそ、現状のバイヤー・MDのレベルを嘆くのであれば、業界を取り巻く環境の変化に対応できる人材を育て・抜擢すること。このことが急務だと感じますし、以外の方法でも、若い人やキャリアが浅い人に向けての、仕事のチャンスを与え、モチベーションを上げる努力をする!ということを、業界全体で考えなければいけない時期は、とっくに来ているのではないでしょうか。。。
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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