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西暦2000年前後に、無印良品をV字回復させた松井忠三さんは、あるインタビューの中で以下のようなことを語っていらっしゃいます。
”好調時は、現場の取引先担当者はマーチャンダイザーへの批判を口には出せない。外を見にもいかないし、第三者からの批判も耳に入らなければ、すべてが「これでよかれ」になる。つまり10年間の奇跡的な成長そのものが、危機を招くマグマであったのだ。
取締役会を納得させるには前例主義をとるしかなくなるのである。
大企業の前例主義はつとに話題になるが、設立10年にも満たない会社でも、人を尊重しようとするが故の前例主義が根を張るのである。
お客さまは分かるのだ。「無印のコンセプトが好きだから」と買ってはくださるが、「なんか違う」と疑問を感じ、商品を触る手が遠のき、買う財布が遠のき、お店に来てくれる足が遠のく。なんとなく、徐々にお客さんが離れていってしまった。”
このことは、多くのアパレル・ファッション小売業界に携わる方なら、似たようなことを経験されたり、目の当たりにしたことなどがあるのではないでしょうか?
ここで話を変え、MDという仕事は、そのショップ・ブランドの売上や利益を左右する権限を多く有しています。その中で、特に大きな権限とされるのは。。。
・(商品の)発注権限(数量を決める権利)
・(商品の)価格を決定する、価格決定権
この権限を有しています。
ある意味、商品は発注してしまった段階で、後戻りはできませんし、先の2か月。場合によっては、半年の売上の半分以上は、発注してしまった段階で決まってしまう!という権限を有しているいうことになります。
(組織によっては、70~80%の売上を左右するともいえるだろう)
また、在庫が残りそうな場合は、その価格決定権で値下げをして、(顧客に)商品を購入しやすくする権限も有しています。その判断がへたくそだと、組織に壊滅的なダメージを与えるといっても過言ではありません。
しかしながら、裏を返せば、仮に商品が大ヒットし売上・利益ともに伸びた場合は、その権限の大きさから、その手柄を”自分のおかげ!”と勘違いしてしまい、天狗になってしまうポジションとも言えます。
そして、その勘違いは、冒頭で述べた悪いときの無印良品の状態のように陥ってしまいます。
仮に、このような状況に陥った場合。この状況を打開するのは、大変難しいことと言えます。
何故なら、自分たちの仕事自体に疑問や疑いを感じることが少なくなってしまうからです。
そして、問題の要因が掴めなくなると、それを自分自身の問題と捉えることができず、問題の要因を、外的要因や自分以外の他者に求めるようになります。
また、自分の仕事の既得権益や自分の仕事の地位を守りに入るような人も増えて、MD仕事の目的を考えるよりも、個人の既得権益を守ることが、仕事の目的へとすり替わります。
松井忠三さんが、無印良品を再生させた十数年前よりも厳しい時代に、とくにアパレル・ファッション小売業界になりました。
であるからこそ、組織・ショップ・ブランドの売上を左右する商品に関する多くの権限を持つMDには、”初心忘るべからず”の気持ちで、常に店頭や外に足を運び、変わりゆく顧客の心理・動向を掴み、顧客が喜ぶ商品を産み出すために、常に現状に満足することなく仕事に精進してほしいと切に願います。
私自身も、常に努力精進し続ける姿勢でいなければならないと襟を正したいと思います。
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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