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昨今、この業界における在庫過多の問題が盛んに叫ばれています。
しかしながら、具体的な解決策などを明示しているものはありませんし、私も原則的なことは書けても、組織により相対的に問題の要因は変わってきますので、「これだ!!」という全ての組織の問題を解決できる具体案などを持ち合わせている筈もありません。
また、D2Cという言葉の方が先行した、無在庫商売なるものも盛んに喧伝されたていますが、言葉だけが先行した施策には、私は懐疑的なスタンスをとっています。
私は在庫過多の問題の要因は、”人の問題”によるものが殆どだと考えています。ということで今回はこのことを違う側面から考えていきたいと思います。
アパレル小売業の仕事に携わっていると、現場(店頭)からよくこんな声が上がります。
「もっと、サイズ展開が多ければ、機会ロスを防げた。」
「色展開が乏しく売れなかった」
「他店ではこんな感じの商品が売れているので、自店にもあれば売れた!」
等の声がよく上がります。
店頭からの声は、顧客からの声に繋がりやすいということで、MD・バイヤー等はこの声によって、疑心暗鬼になり不安もなる人も多くいます。
結果的に、自分自身で物事を深く考えず、このことを鵜呑みしたことによって、実際期待以上の売上がとれないばかりか更に不良在庫を多く抱えることになり、現場(店頭)に責任転嫁するようなMD・バイヤー等も多くいるのではないでしょうか?
上記の声を聞き、サイズ・色展開。商品アイテム数を増やすということは、当然のことながらSKUが増えるということになります。しかしながら、メリットも存在します。以下記すと?
・売り逃し等の機会ロスが減る。
・SKU数の多さ→ECは販売個数の多さは上位検索に繋がりやすい。
等のことです。しかしながら、当然デメリットも存在します。在庫過多に陥りやすく在庫回転は悪くというのは、この業界の仕事に従事されている方なら、なんとなく理解できることでしょう。
サイズを増やすということは、今まで自分たちの商品を買えなかった?というお客様にメリットをもたらすことになります。しかしながら、同時に色や商品数そのものを増やせば、店頭から商品が溢れ出て在庫過多に陥ります。
ということは?ブランド・ショップコンセプトを決める際に、そのようなことを詳細に決めておかねばならないということです。
標準店舗の設計をどれだけ詳細に行っている組織があるかはわかりませんが、標準店舗の商品展開SKUが1000の組織があったとします
以下のような2つのモデルケースを想定しました。
① 標準展開商品アイテム数10×標準展開カラー10×標準展開サイズ×10=1000SKU
② 標準展開アイテム数200×標準展開カラー2.5×標準展開サイズ×2=1000SKU
上記2つのモデルはともに1000SKU展開となります。想像すると以下のようなショップコンセプトが見えてこないでしょうか?
① アイテム数を絞ったベーシックブランド。単品での提案。どのようなスタイルにも対応しやすい。
② サイズが絞られていて、ある体型の人しか買えない。しかし、トレンド等の様々なスタイル提案ができる。
といった具合に数字からブランドコンセプトが出来てきます。しかしながら、冒頭申したような顧客からの要望を都度都度聞いていると、あっという間に店頭から商品が溢れ出るということになります。
①のケースで言うと、顧客からの声にトレンド物を多くいれて欲しいという声が上がり、そのことを鵜呑みに何も考えず実行すれば、あっという間に在庫過多になります。
その場合は、例え他社の商品でも、ディスプレイ等でコーディデートの提案をし、このようなスタイルでも自社の商品は合わせられるという提案をすればいいだけのことですし、例え顧客がその他社の商品に興味を持っても、「その商品はここで買えますよ。」と親切に販売員が教えてあげれば、販売員。敷いてはブランド・ショップのイメージが上がるのではないでしょうか?
②のケースで言えば、「このサイズがあったら買うのに??」という声があがれば、敢えて「自社の商品が(サイズ)合わなければ、購入してもらなくて結構です」という毅然な態度をとればいいだけの話です。
それだけ、サイズターゲットというブランドコンセプト・イメージにも直結するものですから、目先の売上欲しさに、サイズ展開を増やせば、そのブランドコンセプト等は”絵に描いた餅”に終わります。
また、色展開に拘るというのも大事です。顧客の声を拾いまくり、色展開を増やせばあっという間に”何かごちゃごちゃした汚いブランド・ショップ”になり、逆に顧客の足が遠のくことでしょう。
この業界には、目先だけカッコイイ・カワイイ等の抽象的なブランド・ショップコンセプトが蔓延している業界です。そんな絵に描いた餅にしかならないものを作るのであれば、”敢えて売らない。買わせない姿勢”を貫く、そして”買わせない顧客像から考える”ことの方が、よっぽどブランド・ショップコンセプトに忠実とも言えますし、在庫過多に陥る問題の一つが解決するのかもしれません。
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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