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そこのあなた?値引きしすぎでは?~後編~

★前回までの振り返り

前回の記事では、ある架空の組織を基に、セール価格決定までの流れを途中までお伝えしました。

そこのあなた?値引きしすぎでは?~中編~


架空の組織の前提条件と表を以下、もう一度お伝えすると。

① 現在は、6月10日前後。売れていないので、店頭一部セール実施済。
② 今回は春夏商品のみで表を作成。商品の仕入原価率は35%
③ 6月~8月の売上予測は過去データ等を基に算出。6月に仕入原価500万入荷予定。期首在庫原価は1,000万。
④ 春夏商品なので、目標は8月末に在庫を0にすることが目標。
(在庫が多すぎて0目標を立てるのが無理!という組織も多くあるでしょうが、今回はご容赦ください)

*各月の売上予測・粗利率ターゲット・在庫金額は、表で確認してくださいm(__)m

これで前準備が完了です。そして、各個別商品のセール価格決定までの流れを、以下もう一度お伝えすると。

1. 6月の売上シミュレーションを単品ごとに行い、6月時点末在庫数の予測を算出
2. 6月末の在庫数と6月売上点数を基に、在庫消化日数等を算出
3. 在庫消化日数や商品そのものの位置づけ(特に6月入荷商品)を基に商品をランク分けし、価格を決定
4. ランクに応じ、商品単品ごとに7月の売上・在庫シミレーションを行う

となります。前回の記事で2.までお伝えしましたので、今回は3.からお伝えしていきます。

 

3. 在庫消化日数や商品そのものの位置づけ(特に6月入荷商品)を基に商品をランク分けし、価格を決定

1.2.の過程を経て、各商品の在庫消化日数を算出できましたら、その在庫消化日数に応じて、在庫をランクするわけする作業を行っていきます。前回の記事で簡単な例をご紹介しましたので、以下再登場させます。

・商品① 6月の売上数100点。6月時点在庫数300点。300÷(100÷31)≒93日
・商品② 6月の売上数300点。6月時点在庫数200点。200÷(300÷31)≒20.7日
・商品③ 6月の売上数500点。6月時点在庫数700点。700÷(500÷31)≒43.4日

今回のシミレーションでは、春夏商品を8月末日で完売させることが目標でしたから、このことを踏まえ上記の商品をチェックしてみると、商品①は今の売上ペースでは、8月末に売切るのは不可能そうです。逆に商品②は、7月中旬には、商品が可能性がなくなる可能性があります。商品③は商品②より、6月の売上数量は多いのですが、在庫がまだ豊富?にあり、7月中で商品がなくなることはなさそうです。これを基に、商品のセール価格を設定するということになります。

例としては、商品①を40%OFF(粗利42%)商品②を20%(粗利56.3%)OFF(粗利50%)商品③を30%OFF(粗利50%)等と決めていきます。また、6月入荷商品は、まだ売ってまもない商品ですから、別の考えをしなければならないでしょう。

この時に、特に注意してほしいのが、

最初に決めた粗利率ターゲットが達成できるような値付けをするのではなく、ターゲットの粗利率よりも高くなるような、セール価格を設定する!

という点です。特に、商品③(商品②よりも6月の売上数が良いので、30%OFFもする必要はない)のような店でVP(売れる場所)に置かれる可能性が高い商品等は、%オフではなく指定上代を設定し、顧客の心理に訴求しながら、粗利を出来るだけ高く獲得する努力をするといった姿勢が重要です。

更にもう一つ値付けする際に、注意してほしい点があります。

商品②の場合は、在庫数が商品③の半分以下です。また6月の売上予測数が、商品③より少ないですから、SKU欠けが発生している可能性が高いといえます。そのような場合、売りづらい色・サイズばかりが残っている可能性が高いですから、もう少しOFF率の設定を上げた方が良い?と注意しなければなりません。

 

4. ランクに応じ、商品単品ごとに7月の売上・在庫シミュレーションを行う

各在庫のランク付けが終わり、各商品のセール価格が決まったところで、次は、商品単品ごとに7・8月の売上シミュレーションを行っていきます。(セール時の売上シミレーションの方法に関しましては、私の”商品の追加発注”に関する記事を参考ににしてください。要は、この手法を全ての商品に行えば良いということになります。)

商品の追加発注を考えよう⑧


7・8月の売上シミレーションを行うと、最初に行った売上・粗利益が予測・ターゲットとズレてくる筈です。(7月売上1,200万。粗利率40% 8月売上400万。粗利率17.5%)

(上記の図はあくまで参考です)

これで、一連の作業は完了です。

 

★最後に

しかしながら、当然のことですが、売上シミレーション通りに事が運ぶわけではありません。ですから、現場の状況に注視ながら、予定より消化の悪い商品があれば、スピーディーに値下げを実践してください。ですが、何度も現場(店頭・EC)に値下げ指示をしていると、現場が疲弊しますので、そのことを憂慮するのは当然のことです。

今回、長々とお伝えしたセール価格決定までの流れは、あくまで手段の一つです。おそらく、他にもっと良い方法はあるでしょうし、今後、売上シミレーションはAI等のテクノロジーの力でその精度が高くなるでしょう。そして、セール価格決定までの流れは、組織によってその手段は相対的に変わってくる筈です。また、このことを文章で伝えるには、私の力が足りない点がまだまだあります。ですが、闇雲にセール価格を決定することによる、組織に対するデメリットは、今回詳しくお伝えいたしました。今回のブログが少しでも、皆様方のお役に立てれば幸いです。

特別記事をアップしてますので、そちらも是非ご覧くださいm(__)m

(特別記事)決算書類から各社の今後の仕入見通しを考察してみた

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