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最近のメジャーリーグ(以下MLB)での大谷選手の二刀流での活躍が嬉しい!今日この頃ですが、現在のベースボールは、私の世代が認識している野球とだいぶ異質なものへと変化しています。
私の時代は、投手が140キロ以上の球を投げれば、速い部類でしたが、現在は日本のプロ野球(以下NPB)でも150キロ以上投げるピッチャーはゴロゴロいます。また、打者も160キロ以上の球を、いとも簡単に跳ね返したりもします。昔ながらの根性論を振りかざすハリーの解説が、全く通用しない時代になりました。その要因は、データの活用にあると言われています。大谷選手の活躍の裏にもデータの活用があるのは、紛れもない事実です。
現在、MLBではスタットキャスト。NPBではトラックマンという計測器が球場に設置されており、投手や打者の様々なデータが、瞬時にとることが出来るようになりました。投手の投げる速度だけでなく、回転数・回転軸。また、打者の打球速度・角度等の様々なデータが取ることが出来るようになり、データを基に野球の戦術や選手の技術向上へと活用されています。(また、投手専用の計測器ラプソード等もある。ダルビッシュ選手や西武の平良選手はこの計測器を活用している)
MLBで、このようなデータを基に変化した戦術が、内野手の守備シフトです。MLBでは、極端な守備シフトを敷いています。因みに、これは昔の王シフトを全ての選手に活用しているも同然です。(大谷選手のときには、サードの守備位置に誰もいない場合が多い。因みに、このような守備シフトを多用しだしたのは、現エンゼルス監督のマドン監督と言われる)
この守備シフトを殆どの球団が使用するようになってから、年々打者の平均打率が下がってきています。(今期のMLBの投高打低は飛ばないボールの影響が大きいが、投手の滑り止めの厳格化から防御率が悪化してきている。)これまで、元々の守備位置に誰も疑問を感じていなかったところを、データの活用をすることで、野球の方向性が変わってきたと言えます。
但し、打者もそのことを指を加えてみているだけではありませんでした。そこで出た解決策は。
”だったら打球を上げれば良くね?”
というシンプルな解決策にたどり着きます。
このことが、後に”フライボール革命”と言われる打撃改革に繋がり、ここ数年でホームラン数が急増しました。
また、打球を上げるには、これまでの常識であった、ダウンやレベルスイングではなく、ハリーの批判の的になりそうなアッパースイングが是とされ、打球を上げるために、これも計測器を用い、打者がこれまでのスイングを見直すきっかけとなりました。(パワーに劣る日本人では難しいが、大谷選手はよりアッパーなスイングへと変化しています)
すると、今度は投手がデータを基に、打者への攻め方を変えます。これまでのメジャーは、動く速球(ツーシーム)を、低めに投げてゴロを打たせる投球が主流でしたが、低めにボールを投げても、バッターがアッパースイングで、球を上げホームランや長打にしてしまうので、そこで出た解決策は。
”だったら球を高めに投げれば、アッパースイングだと打ちづらくね?“
という発想に至ります。
結果、伸びのある速球(フォーシーム)を高めに投げることが主流の投球スタイルとなりました。また、これまであまりスポットが当たっていたなかった、縦変化のカーブが有効だ!ということが、データから判明し、今ではMLBは投高打低へと変化してます。(今季のMLBの投高打低は、飛ばない低反発球の影響もあるが、その中でホームランを打ちまくる大谷選手は、まさ規格外と言える)
こうして、テクノロジーの進化と活用によって、野球そのものがこの10年で全く異質なものへと変化しました。(このことに賛否両論あるが)
長々と野球の話をしてきましたが、ここからは私の本業の話をさせて頂きます。
私は、自身のブログや他の連載。また、SNS等の発信で、ファッションテック否定論者のようなものの見方を良くされます。ですが、これは事実ではありません。デジタルツールやテクノロジーの活用に興味がなければ、野球やその他のスポーツにおける、テクノロジーの導入による有効性を勉強などしたりしません。アパレル小売業において、デジタルツールやテクノロジーの導入・活用によって、よりお客様に喜ばれることが出来るならば、大いにテクノロジーの活用をすべきです。また、MDにおけるデジタルツールやテクノロジーの活用もどんどん進んでいってほしいと願っています。
しかしながら、アパレル小売業のMDにおいて、デジタルツールやテクノロジーの活用のよって得られたデータを有効活用するには、データを読む力と仮説を立てることが重要になってきます。また、そのような人材育成すべきでもあります。
例えば、前述した野球の例を挙げて申しますと。
→テクノロジーの発達で様々なデータが取れる。→データに基づいて(内野手の)守備シフトが変わる。
ここまでが、データの活用による戦術の変化です。そこで、解決策として。
”だったら打球を上げればよくね?”
という仮説を立てます。その仮説に基づいて、スイングをダウン・レベルからアッパーに変化させ、先の未来(ホームラン数急増)を変えていったわけです。
アパレル小売業におけるデータの活用は、一見進んでいるように見えますが、何故かデジタルツールやテクノロジーの発達だけで、あたかも在庫問題が解決するように勘違いしている人が多く、失敗している組織・人を多くみかけます。
特に欠けているのは、野球の例でいう。
”だったら打球を上げればよくね?”という仮説を立てる力です。
アパレル小売業におけるデータ活用において、仮説を立てるには、逆説を立てることが一番有効となりえます。
例えば、売れた商品を”売れたからよかったね^_^。と満足するものの見方ではなく、
・色展開を変えていたらどうなっていたか?
・商品展開時期を早くしていたらどうなっていたか?
・サイズ展開やサイズによる数量発注におかしなことはなかったのか?”
また、売れない商品であれば。
・生地を変えていればどうなったか?
・着心地がよければ、もっとお客様に手をとってもらえたのではないか?
・商品を展開するのが早すぎなければ、もっと売れたのではないか?
という逆説から仮説を立て、先の商品計画に活用することが重要です。
このような力を磨くには、常日頃から現場(店頭)に足を運ぶことでしか、その力は磨かれません。データの分析から、ある商品が売れている!という結果・事実が出ても、店頭で接客なしで売れているのか?販売スタッフが長く接客して売れているのか?で同じ数字データでも、その数字のもつ意味は全く違っているということになります。そして、データから読み取れる数字と、現場での実際の売れ方を判断した上で、
”だったら打球を上げればよくね?”
”だったら球を高めに投げれば、アッパースイングだと打ちづらくね?“
という、仮説を立てる力は、現場に足を運んでこそ磨かれます。
仮説を立てることとデータを読み取る力。特にデータから、”今、現場(店頭)は、どのような状態なのか?“という、数字から現場をイメージ出来る力を磨き、次の商品計画に活用することこそが、テクノロジーやデジタルツールの活用において重要なことだ!と訴えて、今回のブログは終了です。
(今回は、ほぼ野球の話ですいませんm(_ _)m)
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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