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ショップから本部(MD)に向けて、よく声が上がることと言えば。。。
”在庫が足りない!”
このことです。
これを意訳すると、ショップ側は”売れる商品の在庫が足りない!”と言っているのですが、実際MDという職に就いても、売れ筋商品の在庫状況は理解出来ていても、事業部全体の現在の在庫が多いのか?少ないのか?ということが、意外に理解できないMDが多いのも事実です。その最たる例は、セール前やセール開始直後から”2BUY10%”等、MDがあまり頭を使わなくても良い安易な施策に走ってしまうことからも、垣間見えます。
ということで、今回は簡単な例を用いて、現在や先の在庫状況を見る際に意識すべき点を、以下お伝えいたします。
今回は、以下2例を上げお伝えしますが、2例ともに共通のルールを以下のように設定します。
・今回は2月から5月の表(売上・粗利・仕入・在庫表)
・商品はレディース春物商品。3月~5月の仕入金額は確定済
・2月は実績の数字。3月以降の売上・粗利予測は、過去の数字を基に予測
まずは例1です。以下の図をご覧ください。
この図の数字を見ると、在庫の翌月売上原価比が比較的に低いことが見て取れます。また、各月の月末在庫は、凡そ翌月の売上原価の1か月分の在庫だということで、この数字では在庫回転が良いと推測されます。この数字の通りいけば理想的なのですが、おそらくアパレル小売りの場合は、この図の理想通りにはいかず、売上が数字で示した予測よりも低下する可能性が高いといえるでしょう。
何故ならば、レディースの場合は、3月の初旬から売上が活発になる組織が多くあります。
その場合、この3月の仕入金額444万円が3月1日に入ってこず、3月20日以降での商品入荷となりますと、3月前半のショップの在庫原価は、3月の売上1か月分にも満たないということになりますので、ショップに並ぶ商品がスカスカの可能性が高いと言えます。更に言えば、売れ筋商品から先になくなっていくでしょうから、このショップの3月前半は、かなり厳しい戦いを強いられるということです。
このような図の数字の出方の場合は、商品の店頭投入日が1日。もしくは2日でないと、売上が厳しくなりますから、商品の納期をピタッと合わせる能力がMDに求められます。そのような商品の納期管理が緻密な組織ならば、今回の在庫水準でも全く問題ありません。ですが、今回の例は、上記のルールから見るとLTが2か月以上かかることが理解できますから、このような数字が並んでいた場合は、3月の売上低下により、春物商品の在庫が大きく残る可能性が高いと言えるでしょう。
次は例2です。以下の図をご覧ください。
この図の数字を見ると、2月末在庫時点では、翌月の売上(原価)の2か月分ほどの在庫があります。また、2~5月の平均在庫金額を見ても、例1よりもかなり高めです。平均在庫が高くなれば、在庫回転が悪くなりますので、会社の資金繰りを考えれば、例1が理想となります。
しかしながら、例2の場合。2月末で在庫金額がMaxとなっていますから、この図で一番売上の高い3月の商戦に対応出来る在庫となっています。特に3月10日前後に開催されるであろうルミネ10%等の春の施策で、売上のピークが来る場合も多々ありますから、この場合はショップに在庫が足りないということはないでしょう。
ですが、この図の場合にも注意が必要です。この2月末の在庫の質があまり良くないと、先の売上の低下が予測され、在庫が残ってしまうこととなりますので、商品単品での詳細な分析等が必要となってきます。特に、春物商品は気温の変化に左右される部分とトレンドの当たりはずれに左右されますので、日々の業務で、在庫の質を見極める分析業務を行うべきでしょう。
以上2つのケースを見てきましたが、在庫が多いのか?少ないのかということを見る際に、意識すべき点を以下纏めますと。
①末在庫(原価)が翌月の売上(原価)の何%あるか?
②仕入月に計上されている商品は、何日に入ってくるのか?
このことです。
①に関することを補足しますと、よく組織によっては、在庫回転率を月ベースで表示している(0.5等の数字になる)場合があります。ですが、これはあまり意味がありません。今回の例2で言えば、2月は当然悪い在庫回転の数字が出てきますし、5月はものすごく良い数字が出てきます。大事なのは、その在庫金額が先の未来にどのような影響を与えるのか?ということが重要となります。
ですので、月末在庫が翌月の売上(原価)に対して、どのくらいの在庫金額・立ち位置になっているのか?を確認するとことを、先ずは習慣づけてください。
次は②に関することです。MDの数字を月次ベースで管理している場合は、3月1日で商品が入荷しようが、3月31日に入荷しようが、3月の仕入として記載されます。3月1日に入荷すれば、3月の商戦に影響を与えますし、3月31日に入荷すれば、4月以降の商戦に影響します。入荷日によって(仕入・在庫)金額の意味が全く変わってくる!ということです。
ですから、組織・事業部としてMDスケジュールを詳細に策定し、3月の仕入金額は、3月の売上に影響を与えるのか?それとも4月なのか?ということを、組織として決めておく必要があります。以下のブログでMDスケジュールを設計することの重要性を記載していますので、興味のある方は是非ご参加ください。
また、在庫が多い・少ないのを一番手っ取り早くみる方法は、在庫予算との数字のズレをみておくことです。
在庫予算は、MD予算を設計する際に、OTBのロジックを活用すれば、自動的に予算設計されます。特にMD予算設計に関しては、自分たちが、いつどんな商品を仕入て売りたいのか?という意志や、商品調達法等、自分たちの特徴を考えて、予算設計をしなければならりませんから、他の連載でも口を酸っぱくして述べておりますが、MD予算を詳細に設計することは、MDにとって最重要とも言える仕事の一つとなります。
長い文章となりましたが、以上で、今回の記事を終わります。
この度は、記事をご覧頂きありがとうございます。次週もよろしくお願いいたします。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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