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OMO店舗の効果測定を勝手に想像してみた

昨今、アパレルEC周りでよく話題にあがるOMO型店舗。筆者もこの件に関しては実際に足を運び、大体の店舗は直接見に行っているのですが、

そのショップコンセプト、効果ありますか?

そのショップ、「デジタル活用」が目的になってませんか?

(なんかネガティブなことしか書いてない…。)

 

コンセプトや導線に課題がある場合が多いように感じております。そんな中、

アダストリア コロナ禍でも「2、3年後の種まき」 新規や海外事業進める

“立ち上がりは計画を上回り、順調だ。”

アダストリアのOMO店舗「ドットエスティ」が”計画を上回る”と記載があり、「そう言えば評価ってどうやってんだ?」と。ちょっと気になったので店内の導線から評価をどう設定しているのか勝手に想像してみました。

 

効果測定の方法

◯店内のQRコードからの流入

この手の店舗に確実に設置されているのがECサイトへ送客するためのQRコード。商品詳細ページへの導線から、スタッフコーディネートページ。中には生地の良さをプッシュする特集ページへ送客するものも見かけます。QRで飛ばすURLには当然、パラメータが付与されているでしょうから、ここからの経由で流入したものは全てカウント可能でしょう。

◯来店者数

店頭の来店者がどの程度いるのか?はOMO店舗に関わらず計測しているブランドはありますね。入り口にセンサーが設置されてあり、日々の集客をそこでカウントしていますので、そのような取り組みをしている場合は来店者数もカウント可能です。それ以外ですと、店頭での会員証のスキャン(アプリにて)もカウント可能でしょうか。ドットエスティは来店ポイントの進呈もしていますから、なるべくスキャンしてもらえるような取り組みをしているようですね。

◯会員登録

フリー客が来店し、新規登録にてクーポン進呈をして会員登録を促進。という場合ですね。こちらもQRから誘導すればどの店舗経由で会員登録したかがわかります。ドットエスティの場合、出店前に店頭にて会員登録を募っていますのでここでもどれだけの方が登録されたか計測できます。

◯マガジンの配布→ECへ送客

これはオンワード樫山の事例ですが、EC限定ブランドの場合はマガジンを定期的に発刊し、OMO店舗で配布。マガジン経由の流入は全てOMO店舗の貢献としてカウント可能ですね。パラメータ確認しておりますとマガジン経由はカウントしてそうですが、店舗ごと(で配布されたかどうか)にQRを分けてはいないようです(分けると確かにややこしい)ので、店舗ごとの効果測定には今のところ活用されていなさそうです。

◯試着予約・パーソナルスタイリングの回数

やや苦しいですが、試着予約やパーソナルスタイリングが発生する回数でその店舗の効果を測る、という手段も考えれなくはないですね。回数が多いほど、その地域におけるOMO店舗の重要性が少しは測れます。

◯売上

単純に即売してもらえるのが一番、効果が検証しやすいのは言うまでもありません。その場で持ち帰れないケースもありますが、レジからECサイトへ注文を飛ばしてどの店舗経由の売上なのかをカウントすれば測定は可能。

カウントしやすそうなのは上記でしょうか。(抜け漏れあればご教示ください。)しかしこれらの測定に課題が無いか?と言われると結構ありそうです。

 

課題

◯経由売上

まず店内からECサイトへの送客ですが、セッションの発生は簡単に測定できますが「経由売上」となるとハードルが上がります。QRからサイトへ送客した後、一度離脱してしまうと再度流入して購買に至っても参照元データが消えますのでラストクリックでの貢献売上ではなくなります。ラストクリック以外は、パラメータ絞り込んで経由売上を確認するって手法になりそうですね。

third magazine

サードマガジンのようにパラメータ付きのURLをブックマークさせる取り組みがあれば追いやすいでしょう。ブックマークして購入したユーザーは10%オフになる取り組みも以前は実行していましたね。

◯スタッフの露出

次に、人気スタッフのコーデは店頭でも露出が多いので、当然ながら経由売上が増えやすいです。店頭で展開している商品の服を使ったコーデを投稿しているスタッフも接点が増えますが、これだとスタッフ間でやや格差が出てしまいかねません。

◯既存店との役割分担

既存店と出店場所・役割がかぶる問題もありますね。過去から「試着予約」は実行されてきた施策ですし、「認知」を取るのも店頭の重要な役割でした。OMO店舗があたかも新しいサービスのように「スタイリング」を付加価値にしていますが、こちらも過去から店頭で行われてきたことでしょう。ベイクルーズのように既存店舗が出店していない場所での出店という方針なら良い影響が多そうな気もしますが。

◯採算

最後に、これが一番の課題ですが「店舗で購買」という最大のKGIが主軸では無くなったため、成果が追えきれないところでしょう。「認知獲得」の効果も期待するなら広告宣伝としての要素もありますが、このあたりをどう評価していくのか。指名検索は増える可能性がありますがどの店舗の貢献かは当然ながらわかりません。ECにクロージングを振ってしまった場合、普通に店舗として販管費計上したら採算取れないケースが続出するのではないかと。出店場所の館の賃料の条件がどうなっているかにもよりますが。

 

個人的にはまだまだ課題が多そうな印象ですがあくまで勝手な想像ですので、もしかしたら全て解決済みなのかもしれません。

測定方法が「店舗がどれだけ機能した?」という軸での評価になりそう。

個人の頑張り→店舗の売上増加→店舗が評価される

という個人+チームの評価ではなく、地域性・インフラとしての評価な印象で、中々運用が難しそうですね。大手アパレルは店舗が多いのですから、既存店を有効活用する方が何かと良い気はしていますが、館との条件も関係してくるのでしょう。

しかし、このような取り組みを見ていつも思うのは、自社ECモールの展開も、それを一つにまとめてリアル店舗を出店するのも、どちらも企業側の都合が強いという事です。(アカウント一つで複数ブランドが購入できるというメリットはありますが)アダストリアに関しては過去、「コレクトポイント(ブリスポイント)」を全店閉鎖していますが、展開としては同じようなものではないかと思うのです。

商品のセレクトやレコメンドの付加価値が高いなら理解できますが、ショップコンセプトも無く、編集が存在しないブランドの寄せ集めに、顧客も付加価値は感じにくいのではないかなぁと。まだ始まったばかりの取り組みですから、今後の進化に期待しつつ、動向を追い続けたいと思います。

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