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先日の以下の記事をアップ致しました。
その記事の中で、セールをすることが”悪”だと感じている組織が多いのではないか?という内容を記載させて頂きました。また、昨今盛んにメディアで喧伝される文言として。
「定価・プロパー販売を促進し、業績アップに繋がった!」
という文言をよく目にします。商品がセールしないで売れることは、目指すべきことでありますし、(商品が)元売価で売れる比率が、高まることに対して、否定するようなことなど何もありません。しかしながら、私はこの風潮に懸念を抱いています。
ここで少し会計的なお話をさせて頂きます。プロパー消化を意識し、セールを抑制すると粗利率が高止まりします。このことによって、粗利益高が増加し、損益も黒字になる可能性が高まります。ですが、損益計算書の仕組みは、売上-粗利益高=売上原価。売上原価が仕入原価とみなされる構造です。要は売れた商品の分しか仕入計上されない!という仕組みになります。実際に該当組織が、その期間内にどのくらいの仕入金額があったのか?ということは、損益計算書には記載されていません。ということは?該当組織が期間内に、実際に仕入した金額との乖離が発生します。
以前(コロナ禍前)、メディアに「プロパー消化が高まり、損益が黒字転換」という記事が掲載された組織の決算書を調べたところ、その組織は大幅に在庫が増加していました。結果、組織は黒字でも黒字分以上に在庫増加が大きかったため、(その組織の)手元のキャッシュが減少していましたし、翌年は持ち越し在庫消化を強化し、新規商品の仕入を大幅に減らした為、粗利率も売上も下がり、赤字転換していました。(新商品の仕入を大幅に減らせば、売上が減る可能性が高くなるのは当たり前)
また、私が常々学ばせて頂いている、UNIQLOやアスクル等で公認会計士をされておられる安本隆晴先生は、以下の著書の中で、
”売上不振商品等の滞留在庫は、素早くお金に換える施策を実施すべし”と、捉えることのできることを仰られています。これは、私も全く同じ考えです。
アパレル関連の著名な識者の中には、長い時間をかけてもプロパーで商品を売り切るべきだと主張される方もいらっしゃいますが、フランチャイズ商売等の在庫を抱えることをしない大企業ならともかく、在庫を抱えざるえない多くのアパレル小売業で、数年かけて呑気にプロパーで商品を売り切る!なんてことをしていたら、あっという間に、組織は危機を迎えます。また、そんなことをしていたら、新商品の仕入を大幅に減らす必要がありますから、(お客様にとっての)魅力ある品揃え・店づくり等、お客様に対してファッションの魅力を伝えることが出来なくなる可能性が高まります。
このようなことにならない為にも、商品そのもの精度やMDの精度を上げ、売変・値引する額が少なくなるような施策を、具体的に実施すべきです。その中には、当然MD予算設計・期中運用の精度を高めることが求められますし、昨今の気温上昇による夏・盛夏・晩夏等のMDの見直しも必要になってくることでしょう。しかしながら、そのような努力を重ねたとしても、高い確率でお客様から支持を得られなかった売れない商品が出てきますし、適量の仕入ができなかった商品が出てくることでしょう。その場合は、安本先生が仰られるように、素早く在庫消化の手段を講じることも、MDに必要とされる資質だと私は感じています。読者の皆様は、今回の私の主張をどのように思われますか?
今回の記事はこれにて終了です。次回もよろしくお願いいたします。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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