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先日、某メディアにて某ブランドが取り上げられており、ブランドの課題として、
「EC化率が低いから、もっとEC売上を伸ばして販管費率を下げましょう」
みたいなお話が出ておりました。言わんとしている事はわかるのですが、EC売上を伸ばしたからと言って必ずしも販管費率が下がるとは言い切れません。以前にも、
こんな記事を書いたのですが、運用次第では実店舗より販管費率が高いケースもよく見かけます。ではアパレルECでは、どの勘定科目が嵩みやすいのか?について、筆者の経験上からピックアップしていきたいと思います。
上記の記事でも触れていますがEC単体でPLを確認しますと、大体多いのが広告宣伝費。筆者の確認する限りでは、無駄にWEB広告を打ちまくっているケースをよく見かけます。適切に使えば効果的なのですが、目的・目標もなく配信しているのが悪ですね。
これの詳細については以前にも書きましたが、最終的な費用対効果は「営業利益が増えたかどうか?」で判断するのが良いでしょう。ビュースルーコンバージョンやクリックスルーコンバージョンのレポートばかり見ておりますと、大概ROASが良いからもっと広告費を使った方が良い、という判断になり、WEB広告を更に増やす→気づいたら赤字…。というケースを山ほど見てきました。100歩譲って「この期間は赤字が出ても新規獲得を促進したい!」みたいな方針があるのなら良いのですが、「何となく広告費使った方が売上が伸びるのでは?」という感じなのでしたら、まずPL見てください。
また、アパレルECで新規獲得を促進しようと思うとメディアへの露出が必要になります。この場合、インフルエンサーの活用(芸能人・有名スタイリスト・エディター・ディレクター含む)や雑誌掲載などの施策がよく使われますが、これがとにかく費用がかかります。代理店を通してアサインし、WEBコンテンツに落とし込む場合はもっと跳ね上がります。大手だからこそできる手法ではありますが、EC売上10〜20億円程度の規模でも実行しているケースは見かけます。売上インパクトが大きい施策ではあるので、プラスにできる事も多いのですが、新規獲得を促進する場合はCPAが高騰しやすいでしょう。店舗がある・他社モールにも出店しているなど、販売チャネルが分散している場合は、売上に応じて経費を按分するのが通例でしょうから、それで換算してみて利益が上がっているか?を確認しておきましょう。
荷造運賃はECサイト運営なら必要経費なのですが、契約内容によって高騰するケースもありますね。また、値引き販売し過ぎているショップなどでは、注文単価が下がっているのに配送の件数が増えてしまい、販管費が増大するケースなども見かけます。(一時期、ZOZOもこの傾向にありましたね。)フロント側の改善では何ともし難いところがあるのですが要注意でしょう。
見出しが勘定科目でなく、しかもざっくり過ぎて申し訳ありませんが、これに関しては企業によって何に該当するか?が変わりやすいかと思いますのでこう書きました。「通信費」「支払手数料」「外部委託費」などが該当しやすいでしょうか。
カートシステムの利用料などもこちらに該当するのですが、そこまで大きくはありません。では何が大きくなりやすいか?ですが、アパレルECの場合はコーディネートスナップの機能やCRMの機能、レビュー機能、分析機能などでしょうか。(他にもたくさんありますが)これらに関してはサービスによって費用も大きく変わりますから、この機能を付けると高くなるとは一概には言えません。(個人的には、費用対効果合わないケース多いからオススメしないサービスはあります)また、費用が嵩むからといって効果に見合わないのか?とも言えないので難しいところではあります。バーチャルフィッティングのように、もはやECサイトのインフラのような機能の場合は、費用対効果は見つつも、見合わないケースで契約解除していいか?と言われるとこれは特に判断が難しいところでしょう。昨今、Shopifyが急速に成長しているのは、これらのサービスがある程度安価で使えてしまう事も大きな要因だと思います。
大手アパレルのECならば売上で吸収できてしまうサービスも多いのですが、まだまだそれを使う段階にないショップが過度な機能を実装する事で、無駄に販管費を増大させないようお気をつけください。
また、外部委託費に関しては我々のような支援会社の費用が計上されますので、自分たちがかけている負担を売上で回収できているか?は常に意識しないといけません。SNSコンサルがそこまで売上規模が大きくない案件で月額70〜80万円を請求している、なんてケースもよく耳にしますが、その金額分を粗利で回収しようと思うと、SNS経由だけでどれくらいの売上を取らないといけないか?は算出可能でしょう。にも関わらず、
「SNS経由でのEC売上を計測すらしていない」
「クライアントの商品の売上原価を(ざっくりでも)把握していない」
という事がとても多いです。事業者側もその費用でOKを出すからお仕事になっているのでしょうけど、これに関しては双方気をつけないといけません。役割として「認知拡大だけだから」と考えているかもしれませんが、それでも意識はしろって話です。でないと対人マン先生に怒られますよ。
特に費用が嵩みやすいものをいくつかピックアップしてみましたが、まずスタートはEC単体のPLを作成する事ですね。これを確認せずに「ECは販管費率が低いからトップライン伸ばすのが最優先!」と方針を打ち立ててしまうと色々と間違います。過去、EC売上が右肩上がりに伸びてきたのは、多店舗展開から認知拡大し、顧客が既にたくさんいるブランドがそれを活かしてECをスタートしたからであり、名簿が無い状況からスタートすると販管費が嵩んで当たり前です。店舗と比較すると、売上に対する人件費や地代家賃などはかかりにくいかもしれませんが、店舗より商品を手に取って見れない分、顧客になってもらいにくく、広告宣伝費等が嵩みやすいという事です。
また、これも常々お話しておりますが、EC側だけでどれだけ頑張ってもそんなに売上伸びません。結局、売上インパクトが大きいのは在庫コントロールと広告・販促の連動です。ですから、過度にWEBサービス導入してもインパクトに欠けます。「在庫やブランドの数が増えた」「メディア露出を強化した」「コラボ商品が出た」など、販売スケジュールと共に実行しないと大きな意味はありませんので、その旨をご理解した上で導入に踏み切って頂ければと思います。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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