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先日、以下の記事をアップさせていただきました。
上記の記事の中で、私は以下のことを述べました。
”損益設計がMDに大きな影響を及ぼすのは、粗利率の設定です。このことによって売上予算も確定します。また、②の部分でミニマムロット等の確認をする際に、同時に値入率(原価率)の設計を行う必要があります。このことで、MDにおける基本的な仕入設計が定まります。
ここで注意しなければならないのは、無理筋な粗利率を設定し、値入率を引き上げなければならない場合です(原価率の場合は引き下げる)。そのことによって、ミニマムロットが増大する可能性や商品のクオリティが下がることもありえます。ですので、まずは身の丈にあった値入率・粗利率設計を考えるべきでしょう。
値入率と粗利率の設定をするということは、MDの数字面の仕事における基本設定となります。詳しくは、以下の記事をご覧頂きたいのですが、値入率・粗利率の設定の差が、ブランド・ショップコンセプトに大きく関わってきます。ということで、今回は値入率と粗利率設定の差についてを、以下述べていきます。
以下、値入率・粗利率設定の差が及ぼすメリット・デメリットを、2つのケース(A・B)を例に、分かりやすくお伝えできればと存じます。
まずは、2つケースの共通部分を、以下お伝えします。イメージとしては、新ブランド立上げ前のシミュレーションだと捉えていただければ幸いです。
【A・Bケース共通の部分】
・全く同じ商品・同じ品揃え
・想定平均原価高は5,000円
・年間の販管費合計は、5,000万円
・年間の想定年間営業利益高は、1,000万円→年間の粗利益高予算は6,000万円
以上が、共通の想定です。以下は、2つのケースで条件をお伝えします。
【Aケース】
・売上予算 1億円
・粗利率設定60% ・値入率想定70%
・想定平均元売価約16,667円
・元売価高めで、セールをある程度するという想定(年間OFF想定25%)【Bケース】
・売上予算1億3,333万円
・粗利率設定45% ・値入率想定50%
・想定平均元売価約11,111円
・元売価を抑えて、セールは殆どしないという想定(年間OFF想定9.1%)
以上の2つケースを想定しました。以下、それぞれのメリット・デメリットをみてみましょう!
(メリット)
・粗利率想定が高い(60%)ので、Bよりも3,333万円売上予算が低くなる。
・上述した件に加え、1点単価が高く客単価も、Bよりも高くなると想定され、少ない客数でも売上予算のハードルが低くなる。
・値入率と粗利率の設定に差が10%あり、OFF率想定25%となるので、売上予算の1.33倍の元売価仕入が可能
・売上予算よりも大幅に高い仕入元売価を仕入れられる為、売れない商品が出てきても、売上予算を達成しやすい。
(デメリット)
・元売価設定が高いので、仕入必要数量(Aは年間8,000点)が少なくなる。場合によってはミニマムロットがこなせなかったり、原価高が上がる可能性がある。
・上述した件により、計画そのものを変更しなければならない可能性がある。
・元売価想定が高い為、幅広いお客様に支持を得られにくい。
細かいことを言えば、まだまだメリット・デメリットも存在するのですが、上述したことが代表的なことです。続いてBケースです。
(メリット)
・元売価設定が低いので、必要仕入数量が増える(Bは年間13,200点)。ミニマムロット達成の可能性が増える。
・元売価設定が設定が低いので、Aよりもお客様が支持を得られやすい。
・あまりセールを想定していないので、お客様から価格に対する信頼を得られやすい可能性がある。
(デメリット)
・粗利率想定が低い(45%)ので、売上予算がAよりも3,333万円高くなる。
・上述した件に加え、1点単価が低くなるので、売上予算達成にはかなりの客数が必要になる。
・OFF率想定が低く、売上予算と仕入元売価予算の差が小さい(売上予算の1.1倍が仕入元売価予算)ので、売れない商品が出た場合、売上予算が達成しにくい。
・売上予算達成の為に、仕入元売価予算以上に仕入を増やせば、在庫が多く余る。
他にもありますが、主だったところはこんなところです。
最後に、新しくブランドを立上げる際は、商品調達先の特徴(ミニマムロット以外にもリードタイム等)を踏まえた上で、値入率と粗利率の設定シミュレーションを何パターンか行っておく。この前始末を行っておくことが、新ブランドの成功の確率を高めるかもしれません。今回の記事はこれにて終了です。この記事が、読者の皆様方のお役に立てれば嬉しく存じます。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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