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今回の記事は、卸売と小売りの両方を運営している企業・ブランドについてです。特に、現状は卸売のみを行っているが、今後小売り事業に参入したい!と考えられている組織の方々に読んで頂ければ幸いです。
これまで、私は卸売と小売りの両方を運営している企業の支援を多く行ってきました。(現状も仕事を請け負っています)私が感じている卸売り業の強みは、自社で商品企画・製造まで担えるところです。小売り専業の組織が、自社で商品企画・製造まで担うことは難しく、結果、商社やOEM・ODM業者に業務の大半を委託することは、珍しくありません。しかしながら、いざ卸売専業の組織が、小売り事業に手を拡げても、中々うまくいかないケースが見受けられます。特に、最大の悩みと言えるのが、”必要以上に在庫が増えてしまう!”このことではないでしょうか?
在庫が増える要因としては、ミニマムロット等の生産特有の問題もあると推測されますが、「(思った以上に)商品そのものが自社ショップで売れない!」ということも大きな要因だと考えられます。では何故、小売りでは思った以上に商品が売れず、在庫が増えてしまうのか?と言いますと、MD的な要因として、適量の商品発注が出来ていない可能性が高い!というのが、要因の一つであると考えられます。では、何故卸主体の組織は、(自組織の)小売の適量の商品発注ができないのか?を、以下述べていきます。
卸売業の場合、展示会開催後にバイヤー・MD等からの受注状況をチェックし、商品の発注数量を決定するケースが主流です。このこと自体に問題はありません。ですが、卸売主体の組織が、自社小売り用の発注数量を決める際の最大の問題点は?
”(バイヤー・MD等からの)受注が多い商品=売れるに違いない!!”
と信じてしまっていることです。結果、バイヤー・MDからの受注が多かった商品を、自社小売り用にも発注数量を増やす。結果、売上がさほど伸びない→在庫が増える!ということに繋がってしまいます。では、卸売主体で小売を兼業している組織が、何故「展示会で多くの受注がついた商品を、自社の小売りでも売れる!!」と、信じてはいけないのか?を、以下、箇条書きで理由をお伝えしますと。
①受注が多い=販路が増えることによるデメリット
②卸先のショップコンセプトによる影響
③MD・バイヤーそのもののレベルの問題
となります。
小売の経験が浅い卸売主体組織の一番の弱点は、小売のみのデータが少ない!という点です。ですので、自組織の小売分の商品発注をする際に、バイヤー・MDからの受注多い商品は、売れる商品に違いない!と判断し、多めの数量を発注することになります。このことが、必ずしも間違いである!ということではないのですが、卸先・自社小売り双方とも商品がヒットするケースは、かなり少ないと考えた方が良いでしょう。なぜならば、MD・バイヤーから多くの発注がついた商品は、その分販路が拡がり、どのショップでも購入しやすくなります。このことを違う視点でみれば、資本が大きい大手ショップやモールで、その商品が展開・掲載されれば、ポイント等のサービスを受けやすくなりますから、ポイント・値引き等のサービスを享受しやすい売り場に(お客様が)流れる可能性が高まる!ということも考えられるからです。
あくまで個人的な考えではありますが、バイヤーがMDが商品をバイイングする際に意識することは?
A 商品そのものが売れるかどうか?
B その商品が存在することによって、他の商品が売りやすくなる。ショップのステイタスが上がる。
この2つです。バイヤー・MDがAの考え方で商品をバイイングした場合、その商品は自社の小売りでも売れる可能性が高い!考える方が多いかもしれませんが、このことにも疑いの視点を入れなければなりません。なぜならば、卸先のショップコンセプトと自ブランドのコンセプトは、そもそも同じわけではありません。顧客層も変わってくるでしょう。卸先のバイヤーやMDは、あくまで自分たちの顧客ターゲットに対して、その商品が売れる!と判断しているのであり、このことを考慮しなければなりません。また、卸先のショップは、他の組織からも商品をバイイング。場合によっては、自社でも商品を製造していますから、同じ商品でも商品の見せ方やコーディネートも大きく変わってくる可能性が高いといえます。
ある意味、1番考慮しなければならないのは、この点です。そもそも展示会で受注が多かった商品は、商品を購入されるお客様に支持を得られたわけではなく、あくまで、バイヤー・MDの支持を得られたにすぎません。全てのバイヤー・MDが優秀である筈がありませんので、「受注数が多い=売れる商品」と信じては危険です。特に、「○○社のバイヤーはどの商品を発注しましたか?」「受注数が多い商品はどれですか?」と質問してくるバイヤー・MDは、優秀ではない可能性が高い!と見た方が賢明ですし、そのような方々の発注状況は、自社小売の発注数量の参考にしてはいけません。
最後に、卸売主体の組織が、自社の小売りの精度を上げる為に必要な点を、2点お伝えします。
1点目は、以前も記事にしていますが、自社の商品分類・管理ルールをしっかりと行うことです。このことによって、自社小売りの商品分析の精度を高めることが重要です。データ分析をしっかりと行うことで、展示会受注の結果と、小売の結果の相違点・特徴が、具体的見えてくるはずです。このことについては、以下の記事を参考にしてください。
2点目は、”足を使う!”このことです。特に、卸先の受注が多い=良かった!ではなく、その後も卸先のショップに足を運ぶ。ECをチェックすることで、その商品が、実際の顧客に支持されているのか?支持されていないのか?をチェックする。また、自社商品が卸先のショップで、どのような位置づけになっているのか?を、VMDの変遷等から判断すると良いでしょう。優秀なMD・バイヤーは、”疑う”ことができる人です。ですので、卸先の受注数=売れる商品!ではなく、しっかりと疑いの目を入れること。そして、自社のショップで本当にお客様が必要としている商品を見極めること。このことが重要です。もしかすると、展示会で受注がつかず生産ロットに乗らなかった商品の中に、隠れた売れ筋商品があるかもしれません。
今回の記事が、多くの皆様のお役に立てれば幸いです。次回もよろしくお願いいたします。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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