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あまりECは関係無いのですが、ちょっと最近目についたのでこちらのお題で書いてみたいと思います。X(旧Twitter)にて、インフルエンサーみたいな方々が謎の情報で拡散されているケースを散見するのですが、中には酷い間違いがありまして。筆者は生産関連は無知なのでそのあたりは有識者にお任せするとして、ファッションビジネス関連の謎情報に関しては普段から決算書を読んでいると大体は解決するのではないかと考えております。
そんな訳で、普段から目にするちょっと気をつけておいた方が良い情報をピックアップして記載しておきますので参考にして頂けましたら幸いです。
未上場のエゲつない複合企業「ベイクルーズ」、創業者の窪田 祐氏は喫茶店マスターからキャリアをスタートさせ、同社を1000億企業に育て上げています。
■業績
・店舗数:433店舗
・売上:約1267億円(22年8月)
うちEC売上約510億円
・純利益:13億円(20年8月)
■ブランド数(20年8月)… pic.twitter.com/ltJQkfjU3G— SUAN / スタートアップメディア🎈 (@suan_news) January 16, 2024
このツイートから「ベイクルーズの純利益が1%程度しか無い!」「コロナで大打撃?!」と色々言われておりました。大前提として、ベイクルーズは決算を詳細に公開しておらず、細切れの情報をかき集めた結果、このような内容になっております。メディアから引用したり、マイナビの採用情報から引っ張ってくるしかありませんし、2020年の決算公告はBSの情報だけですから。
まぁそのあたりを度外視して純利益で1%は少なすぎるのか?という議論ですが、もちろん良い決算とは言えませんがそんなに珍しくない、というのが筆者の見解です。と言いますのも、アパレルの営業利益率は3〜5%程度の企業が多く、ちょっと業績が下がると1%台は割と見かけるのです。(大手アパレル上場企業にて)現在絶好調のパルグループで営業利益率は6%程度、コロナ前は2%前後です。
アパレルの営業利益率は3〜5%程度のところが多いし、ちょっと業績下がったら1%程度でもそんなに不思議ではない。(純利益も同様)大打撃は言い過ぎでは。TSIの23年2月期決算では営業利益率1.5%程度。 pic.twitter.com/k56EkubnTF
— 深地雅也 (@fukaji38) January 16, 2024
一部のラグジュアリーが営業利益率20〜30%程度叩き出してますけど、あれはメインの商材が服じゃないから実現しやすいです。革小物やバッグ関連は販売期間が長く取れるので消化率が上がりやすく、その分粗利が取りやすいのが理由ですね。とある書籍には、某ラグジュアリーブランドの衣料品売上の構成比は5%を切る、とまで書いてあったりします。
生地の原価だけを記載して、あたかも大手は法外な利益を貪っているような書き口が見られますが、上記の営業利益率を見ればわかる通り、そんな法外な利益取っているなら、大手アパレルはもっと利益率良いはずです。こちらも決算書に記載がありますが、大手アパレルの販管費率は45%〜50%程度が多く、高ければ50%を超えることも珍しくありません。稀にしまむらのように25%程度の企業もありますが、例外中の例外ですね。全国に自社物流網張り巡らして店間移動のコストを極限まで圧縮したり、郊外ロードサイド中心でセルフ販売方式だったりと、販管費を下げる施策は盛りだくさんですが。
実店舗は特に嵩みやすいのが人件費・地代家賃でしょうか。EC専業の場合、広告宣伝費や荷造り運賃、手数料(支援サービスが計上されやすい。スタッ◯スタートとかヴィジュ◯とかカ◯テとか◯ーダッシュとか)あたりがめちゃくちゃ嵩むので、EC単体のPLで見ても意外とそこまで利益率は高くありません。既に認知があったり、インフルエンサーの拡散力が強いブランドなら初期の顧客獲得コストが大きく発生せず、高い利益率で運用できたりもするのですが、取り切ってしまえば後は一緒ですね。
余談ですが、ECの販管費が低いのかどうか?また、どの項目が嵩みやすいのか?は下記をご覧ください。
あとはレアケースですが、筆者が過去に見たものを雑にピックアップ。
なんてトンデモなことを発信された方もいらっしゃいますね。上代設定の会議出た事無いんか…。様々な上代の決め方があるかと思うのですが、筆者の古巣ではマークアップ方式でしたので、商品の顔とコストを見比べながらおじさん達が決めておりました。
これも大手の事例ですが、最終消化率ってそんなに低くないです。しかもその後、評価減しつつ次のシーズンもセール販売したり、アウトレットに持っていったり、はたまたバッタ屋さんで処分したり…。そのシーズンで売り切れないから即廃棄、という訳では無いのです。筆者が過去、絡みのあった企業では、業績が良いところの方が廃棄はしていました。商品をキャッシュに変えるよりブランドのイメージ優先している訳ですから。知る限りでは衣料品をよく廃棄しているのはラグジュアリーだと思うんですけどね…。(そもそも革小物とかは消化率が良いので残りにくい)
ZOZOTOWNの売上は「ブランドの売上×手数料」で決まるので、セール負担はブランド側です。決算書見れば粗利率が9割を常に超えており、セール開催で業績を落としたりしません。(クーポンも同様)
これ以外にも、PL(損益計算書)だけを見て業績好調と判断するケースがあったりしますね。メディアの報道は大概PLしか数字は載せておりませんので、それだけだと好不調の判断は難しいです。極端な話、セール抑制すれば粗利率は上がりますが在庫は増えてキャッシュは減りやすい。なので、キャッシュフローの状況も合わせて見る必要があります。インターネット上で情報を発信する際、普通は慎重にしているだろうと思いがちですが意外と適当なものが多く散見されます。アパレルの闇を暴くとか言うてる場合か。筆者も注意はしているものの、自分が特に詳しいと思っている分野の方が慎重さが欠けてしまうのも事実です。しかし、SNSには業界の若手社員や専門学校の学生さんもたくさんいらっしゃるので間違った情報を真に受けてしまいがちです。ですから、情報発信は可能な限り慎重に行い、間違った情報を流布する事がどれだけ罪深いかを知っておいてほしいですね。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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