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MD細分化、本当に有効? アパレルMDが知るべきリスクと対策

★気候変動対策にMDの細分化は有効なのか?

昨今の気候変動に伴い、多くのアパレル小売企業がMD改革に乗り出している話をよく耳にします。その流れの中で、マーチャンダイジング(以下MD)の細分化も進んでいるようです。

トウキョウベース 今期のポイントは路面店強化とMD細分化

率直に言って、各マスコミの報道では、MDのどの部分を細分化するのかが、具体的に見えてきませんが、今年の3月を振り返っても、雪が降る日があったり、観測史上初の夏日を3日以上観測する日があったりと、1か月単位だけでなく、1日単位で見ても寒暖差が激しい春でした。また、近年続く猛暑、夏のような気温が続く秋、短くなった冬と、現在の気候に合わせたMDを実施するには、MDの細分化は有効な手段のように思えます。しかしながら、MDの細分化については、私も6年前に弊社のブログで取り上げており、6年経った現在でも同様の動きが見られるということは、気候変動への対応策としてのMDの細分化は、効果が薄いのではないかという疑念も湧きます。そこで今回は、MDを細分化するデメリットについて考えてみます。

★MDを細分化するデメリットとは?

まず、MD(マーチャンダイジング)を細分化する上で最も起こりやすいのは、商品の投入アイテム数の増加です。その理由として考えられるのは、MDを細分化するということは、商品の販売期間を現状よりも短く設定することにつながる可能性が高いからです。そこで、商品の投入アイテム数が現状よりも増加した場合のデメリットを以下に示します。

〇(商品)1アイテムあたりの必要仕入数が低下する
〇1アイテムあたりの必要仕入数が低下することにより、値入率(原価率)の悪化に繋がる
〇値入率の悪化が粗利率の悪化に繋がる
〇商品の最小ロット数を満たせない商品が増加する
〇最小ロット数通り、商品を仕入れた場合、余分仕入が増加し、在庫が増加する
〇販売側(実店舗・EC)の作業負担が増加する

等が考えられ、気候変動に対応するためにMDを細分化することは、メリットだけでなく多くのデメリットも伴います。

★ブランド・ショップのコンセプトや顧客ターゲットに目を向けよう

私は昨今の気候変動に対応するためのMD改革の一環としてのMD細分化を、必ずしも否定する立場ではありません。とはいえ、MDの細分化を実行する際には、メリットだけでなくデメリットにも目を向ける必要があります。重要なことは、これまでの実績を検証するだけでなく、自ブランド・ショップのコンセプトや顧客ターゲットを再確認し、MDを再構築することです。例えば、レディースのトレンド重視のショップとメンズの長く着られる商材が多いショップとでは、商品の販売期間が異なるのは当然です。したがって、自ブランド・ショップの過去実績を十分に分析し、仮説を立て、MD予算化が必要なシーズン区分を見直す必要があります。

アパレルMDにおける「適時」分類の重要性


また、商品それぞれの販売期間の設定を具体的に再検討するなどの作業も必要となってきます。付け加えますと、これまで行ってきたことの短所を探すことに注視するのではなく、長所を探すことも重要となります。

★MDスケジュールを具体化・可視化することの重要性

加えて、気候変動に対応するためのMD(マーチャンダイジング)改革の一環として効果が上がりやすいのは、自ブランド・ショップのMDスケジュールを改善・可視化することです。

スケジュール管理こそが重要!!


具体的に申し上げますと、商品の展開日よりも最低2週間程度早めに商品をセンター倉庫に納品させるだけでも、十分に気候変動に対応するための効果があります。例えば、今年の3月26日は東京で最高気温が26℃となりましたが、そのことは1週間以上前から予測されていました。仮に、4月に店頭展開予定の半袖の商品がセンター倉庫に納品されていれば、気温上昇に合わせて商品を納品することができます。このようなことは、急な寒暖差がある秋冬商戦でも同様です。センター倉庫に早めに商品を到着させるデメリットもいくつか存在しますが、MDスケジュールを具体化・可視化しておけば、デメリットを軽減することも可能です。

気候変動という予測困難な時代において、リードタイムの短縮に期待できないアパレル小売企業は、MDの細分化だけでなく、MDスケジュールの見直しや精度向上など、多角的な視点からの改革が求められます。過去の成功体験にとらわれず、常に変化する顧客ニーズと気候変動に対応するため、柔軟かつ戦略的なMD戦略を構築することが、今後のアパレル小売業界における持続的な成長の鍵となるでしょう。今回の記事は、以上で終了です。次回もよろしくお願いいたします。

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