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マーチャンダイザーの仕事にとって”適格”を意識しながら価格を決定する作業には悩みがつきません。
ある意味。商品の”価格”は、顧客が気にすることの一番でもあり、違う視点で見れば、ブランドコンセプトとイコールでもあるからです。
しかしながら、価格はただ決めれば良いのではなく、値入(仕入原価率)を気にしながら決めなければなりませんし、MDの仕事では、より多く粗利益を獲得することも求められますから、値入を無視して価格を決定することはできません。
先日、友人の南充浩氏が以下のようなブログをアップしていました。
この記事は、南氏自身のこのクソ暑い夏を過ごすショーパンを買った話なのですが、ショーパンは生地の分量が少ないから、出来るだけ安い値段でないと買う気がしない。1,000円以下で買うことのできる、ショーパンの話でした。
事実、私もここ数年の異常な暑さでショーパンを履くようになりました。私も南氏ほどではないですが、ある程度価格が安くないとショーパンを買う気にはなりません。
ですが✋私がメンズのMDをしていた頃の話を思い出すと、ショーパンほど価格設定をすることが難しい商品はありませんでした。
南氏の記事にも書かれているように、ショーパンの仕入原価は長パンツとさして変わりはありません。生地の用尺分は価格は下がりますが、それ以外の工賃・付属の価格等は長パンツと変わりません。
値入を気にしながら、ショーパンの価格設定をすると、長パンツと売価で1,000円くらいの差しか、当時の商品ではつけられませんでした。
当時の私はこのことで大いに悩みました。私自身もそうでしたし、南氏の記事にも書かれているように、顧客の感覚で言えば、生地は長パンツの半分くらいしか使ってないのだから、価格も当然、長パンツよりもだいぶ安いのが当たり前だろう!と感じている人が多いというのが、当時の私にも理解できていたからです。
結果。私は顧客感覚を重視し、価格を長パンツよりもだいぶ下げることを選択しました。
私自身も、売れ筋の長パンツの生地と同じものを纏めて発注するなど、値入率向上の努力はしましたが、当然のことながら、値入率は悪化し、プロパーで売れても大した粗利率を獲得することはできませんでした。
今でも、この選択があっていたのかは?大いに悩むところです。
このような状況のときに、原価ありきの元売価設定をして、値入を重視し、結果売れれば一番良いことです。ですが、売れ残り結果セールでしか売れなければ、粗利率は下がり、多くの粗利益を獲得することはできません。
しかし、最初から顧客感覚で価格を設定し売れても、値入が悪いのであるれば、多くの粗利益を獲得することはできません。
ショーパンのように、顧客から見た視点と商品を作る側から見た視点が大きくズレる商品というのはアパレル小売業には多くあります。
そのような時、どのように考えたらよいのか?
そのときは以前も述べたように、商品の“付加価値”そのものを1度立ち止まって深く考え、新たな付加価値を加えるしかないでしょう。
元売価を決めづらい商品が現れたとき、ただ原価だけをみて価格を決めるのか?それとも、最初から顧客感覚を重視するのか?だけではなく、一度立ち止まって深く考えること。そして、商品の付加価値を増やすことを改めて考えること。
このことを、今まで価格決定や戦略に重きを置いていなかった、この業界のマーチャンダイザーが、少しでも考えるきっかけに、このブログがなれれば幸いです。
次週は夏季休暇によりブログをお休みします。
再開は8/20(火)からです。
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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