メールマガジンを登録していただくと、セミナー・イベント開催のお知らせやブログの更新通知をお届けします
前回のブログでは、大手セレクト業態の資金効率が悪いの何故?ということを記事にいたしました。
そして、MD的な視点で見ると、特に在庫回転の悪さが、このことを後押ししているのでは?ということを指摘致しました。
今回のブログでは、大手セレクト業態が少しでも在庫回転を良くするには?どのようなことを改善すべきなのか?ということを述べていきます。
まずは、在庫回転を高めるには?在庫回転の計算式を理解しなければなりません。
となります。この数式に点数に当てはめると、より実践すべきことが明確なります。
要は、売上点数を上げるか、平均在庫点数を減らす施策を考えれば良いということです。
*売上点数を増やすには?
A 大ヒット商品を産み出す
B セールして買いやすい値段にする
これが代表的な施策です。
*平均在庫点数を減らすには?
C LT・販売期間を短縮する
D ミニマムロットをなくす
こんなところでしょうか?
まずは、何より大手セレクト業態が取り組むべき施策は、Aだと言えます。
ですが、このことは組織それぞれに考えてもらうこととして、Bを実践しすぎればショップイメージと粗利が低下します。但し、現状は背に腹は変えられないでしょう。また、年2回の買い付け商品等が多く存在するセレクト業態でCを実践するのは難しいことですし、海外生産に依存するオリジナル商品もC・Dを実践することは、ほぼ不可能です。
では、具体的にどのようなことを改善すべきなのか?を以下箇条書き致しますと。。。
① MD予算設計・管理・運用をしっかりとする
② 買い付け商品の杜撰なMDを改善する
③ 在庫の質を見極めるルールの見直し
④ メンズの改革
⑤ アウトレットを含む組織全体の商品消化計画の見直し・実践
⑥ MD・バイヤー個人の意識改革
以外にもあると思いますが、これらのことを以下考えていきます。
① MD予算設計・管理・運用をしっかりとする
このことはこのブログでも何度も記載していますし、現在繊研plusにて連載中の下記をご覧くださいm(__)m
② 買い付け商品の杜撰なMDを改善する
セレクト業態は基本数字にするのがややこしい商売手法です。よって、管理が適当になりがちです。特に、買い付け商品の管理の杜撰さは、多くの人が身に覚えがあるのではないでしょうか?しかしながら、この部分を改善しないと資金効率は上がらないままです。
特に、年2回の展示会での買い付け商品は、そのブランドの売上の半年分を一気に仕入れる!ということになりますから、支払うべきお金が一気に出ていきますが、商品がお金に変わる期間が長くなりがちで、資金効率が悪くなります。ましてや、その商品の大半がファミリーセール行きになれば目も当てられません。ですから、バイイングに行く前の段階でしっかりした予算設計。そして、買い付け商品が、ショップで果たすべき役割を明確にし、その商品が組織にどのような影響を与えるか?を事前に可視化しておくべきです。
③ 在庫の質を見極めるルールの見直し
大手セレクト業態の弱点の一つは、販売期間が定めにくい商品を多く展開していることです。また、MD・バイヤーの主観が多分に入った”定番品”という名の商品。この辺が在庫の足を引っ張っているのは間違いありません。このことに関しては、私の下記のブログや他の連載でも、情報発信していますので、こちらを参考にしていください。
④ メンズの改革
大手セレクト業態のメンズの売上は大きいものです。しかしながら、販売期間が長くとれ、展開サイズも増えるメンズは、レディースに比べると在庫回転率が悪いというのも事実です。UAの在庫回転は年間3を切っていると推定されますが、メンズに至っては年間2にも遠く満たない数字なのでは?と推測されます。
大手セレクト業態で、特にメンズの在庫回転の悪さを増長させているのは、スニーカー等のシューズ関連。あとは、スーツ等のビジネス関連でしょう。マーケットの状況を鑑みて、このあたりのMDを抜本的に見直す必要があるのではないでしょうか?
⑤ アウトレットを含む組織全体の商品消化計画の見直し・実践
大手セレクト業態は、多くのアウトレット店舗を運営していますが、果たしてキャリー品の在庫消化組織として機能しているのか?というと甚だ疑問です。OL専用商品を私は否定しませんが、プロパー事業部・OL事業を統合した残在庫ルール・専用商品の数字管理等のルールを一度見直し、OL事業のキャリー品消化機能を強化すべきです。また、それぞれの事業部が連携を怠り、好き勝手し放題な状況では、組織にとって良いことなどないでしょう。
⑥ MD・バイヤー個人の意識改革
資金効率において不利な商品を多く展開せざるえない、個店のセレクトショップのバイヤーは、そのことを知ってか知らずか、自らが店頭に立ち、必死になって商品を売っています。
しかしながら、大手セレクト業態のMD・バイヤーにそのような意識があるのでしょうか?自らが仕入した商品がファミリーセール行きになっても、大して気にしていないばかりか?売れないのを、店頭・販売員の責任しているMD・バイヤーが多いのではないでしょうか?そのような現場を顧みない姿勢のMD・バイヤーが組織に蔓延れば、その組織は資金繰りに行き詰まり、やがて崩壊します。MD・バイヤー1人1人の意識を上げることこそが、組織の業績をアップすることに繋がります。
今回MDの立場として、組織の資金効率を上げることを記事にしましたが、今回の新型567ウィルスの件で、一番意識を変えなければならないのは、経営者自身ではないでしょうか?
この危機。更に言えば今後起こりうる危機への備えとして、利益構造とキャッシュフロー構造を理解し、利益と共に手元のお金を増やすことに繋げるという、会計思考の経営に移行するチャンスが、今なのではないでしょうか?
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
小売ビジネスに関するMD(品揃え政策)アドバイス・サポートを
ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。