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商社やOEM業者が小売りを始める際に意識すべき点

★商社やOEM業者がのD2Cビジネスに参入相次ぐ?

昨今。商品製作をすることができる、商社やOEMの業者が、自社のD2Cブランド(ただのEC専業ブランドですよね?)を立ち上げることが、一つのトレンドとなっています。このことは、弊社ブログで深地雅也さんも触れているので、詳しくは下記の記事をご覧くださいm(__)m

D2Cだから勝機がある…とはますます言えなくなってきた

深地さんの記事でも触れられているように、D2Cブランド?は、大手アパレルの参入も相次ぎ、最早レッドオーシャンと化しつつあります。結果。資本力があり、販売・MDのノウハウがある大手アパレル小売りの方が、圧倒的に有利である!という状況が、生まれつつあります。

ですが、生産背景を持ち、商品を供給することが出来、アパレル小売りの大半の商品供給を支えている、商社やOEM業者が、小売りに参入したい!というのは、十分理解できます。何故ならば、卸売り商売よりも小売りの方が圧倒的に粗利益が高い。そして、ECという販売ツールが、定着したこともあり、イニシャルコストが低いD2Cブランド等のEC専業ブランドを立ち上げやすくなった!いうことも、卸商売から小売業へと参入へのハードルを低くした要因と言えます。

 

★付加価値を理解できていないと失敗する?

しかしながら、会計学で言う”粗利益=付加価値”ということを考えれば、既存のアパレル小売業は、商社やOEM業者にない、”付加価値”を数多く有している!というのは、紛れもない事実です。
特に、商品を売る!ということに関しては、販売員の仕事。そのものが”付加価値”である組織も多いですし、ソーシャルを起点とした販売方法自体も、付加価値と言え、アパレル小売業の方が、そのノウハウを多数有しています。

また、マーチャンダイジング(以下MD)のノウハウも重要になってきますし、売れている組織は、どの組織も、MDにおける長所を有しています。それも付加価値です。ですから、商社やOEM業者が、目先の粗利とイニシャルコストの低さだけを意識して、小売業が持つ、付加価値・アドバンテージも研究せずに、EC専業ブランドを立ち上げても、そのほとんどは失敗に終わることでしょう。

 

★MDにおける商社・OEM業者の弱点

では、私の専門であるMDにおける、商社やOEM業者・卸業者の弱点を以下述べますと。

❶ MD・バイヤーに商品が多く発注されれば、それで満足している点
→MD・バイヤーの評価を信じすぎている点
❷ MDにおける”適格”の意識が低い点

この2点です。では、そのことを以下、更に深く述べていきます。

 

❶ MD・バイヤーに商品が多く発注されれば、それで満足している点

これは、商品の受注をより多くとり、商品を出荷すれば、そのことで売上が立つ!ということを考えれば、仕方がないことかもしれません。ですが、MD・バイヤーの評価が高く、受注が多くついたからと言って、その商品が実際の小売りの現場で売れなければ、次回の商品発注に影響を及ぼすのは、間違いありません。しかも、私がこのブログでもよく訴えているように、現状のアパレル小売業のMD・バイヤーが、現場に足繫く通っているのか?というと、そうではありません。私が言う、本部病という病に侵されている、MD・バイヤーも多いのです。

”本部病”患者が増えれば顧客は減る


ですから、MD・バイヤーの声を鵜呑みにすることなく、自身の足を使い直接現場で、自分たちの商品が、クライアントからどういう扱いを受けているのか?ということを、定点観測すべきです。現場に足を運べない組織は、ECサイトを効果的にチェックする!ということも、重要でしょう。

その際に、注意すべき点は?

◎クライアントがどのように意図で、自分たちが製造した商品を活用しているのか?ということを理解しておくべきです。

A メインディッシュとしての商品?
B その商材があれば、ステイタス?になり、他の商品が売れる
C 他のショップに影響され、なんとなくクリスタルで発注しているMD/バイヤー

このようなことを理解しておくべきです。

Aに関して言えば、ショップの一番良い場所(VP)に商品が置かれている筈ですから、その推移をおうことで、そのショップのMD・バイヤーの力量が理解できるでしょう。Bの件に関しては、MD・バイヤー側が、元々売ろうとしている商品でありませんので、今回は触れません。

最後にCの件ですが。このような商品発注をするMD・バイヤーは、以下のような発言をします。

”(競合他社の)○○○○さんは、どんな商品を発注しましたか?”

このような、MD・バイヤーは、自社のショップのコンセプトが理解できておらず、”無能”と言って良い存在ですから、リサーチするリストから即刻外してください。逆に言えば、そのような営業をする組織は、小売視点で見れば、一切信用出来ません。

 

❷ MDにおける”適格”の意識が低い点

私のMD基礎講座には、卸売業者の方もよく参加されています。そのような方の特徴は、小売業の方々よりも、MDにおける数字の理解が早い。計算が得意だということです。しかしながら、卸売業者の方と会話していて感じる、致命的な弱点があります。

それが、❷のMDにおける”適格”の意識が低い点というになります。

商社やOEM業者や卸売り業者の方は、素材・工賃等に詳しく、また、小売りとの駆け引きから、売上・粗利の意識が高いと言えます。特に商社の方は、私とは比べ物にならないほど数字には強いです。

しかし、そのことが災いしてか、売価(上代)設定に関することでは、作り手側の意識が最優先で働いてしまい、顧客から見た価格の見え方がどう?ということに、意識に行かないことです。結果。商品製作の知識がある商社・OEM業者は、どうしても原価に目が行きがちです。

ですから、高い生地を使用した場合。工賃の高い工程があり、良い工場を使った場合などは、原価が高くなることを知っています。ですが、製造過程で原価に影響を及ぼすことが。。。
”(末端)のお客様から見た場合。その価格をどう感じる?生地や工賃の高さが、理解してもらえるのか?”という発想に至らない場合があります。

 

★事前準備をしっかりと

ですので、市場に足を運び、自分たちのブランド・ショップの顧客の動向を、直に知ることが重要です。顧客の心理を知る努力をし、顧客目線での価格戦略。このことが求められます。

更に言えば、ブランド・ショップビジネスを始める前の前始末をしっかりとしておく必要があります。ブランド・ショップコンセプト。顧客ターゲット。損益構造の設計。価格戦略・出店戦略等を予め決めておくべきでしょうし、また、それらのことからの詳細なMD設計。売れ残った商品の在庫処理方法等の事前準備も詳細に行っておくべきです。

以上。今回のブログでは、商社やOEM業者や卸売り業者が、小売ビジネスを展開したい場合のすべきことを記載しました。このような時代は、デジタル用語等のトレンドワードに踊らされ、”隣の芝生は青く見える”的な新事業を安易に行いがちです。ですので、”彼を知り己を知れば百戦危うべからず!”の精神で、自分たちの長所と足りていない部分を徹底的に考察し、事前準備を詳細に行うこと。このことを肝に銘じてもらえれば幸いです。以上で今回のブログは終了です。

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