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あけましておめでとうございます。何故か「おめでとう」と言うことに違和感のある今年ですが、昨年中はマサさんをはじめとした多くの方にお世話になった一年でした。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
さて、本年度はOMOTE TO URAとしても、ワダ個人としても、よりハードに、そしてリアル(オフライン)での様々なことも考えています。
そこで本日は「実録:一枚のTシャツが売れるまで」と題しまして、実際に私が”たった一枚のTシャツを売るために、実行したこと”を中心に書いていきたいと思います。最後までよろしくお願いいたします。
アパレル小売業にとって、Tシャツは汎用性の高いアイテムとして知られています。その理由は単純で、ジャケットやコートならば着る季節が限られていますが、Tシャツであれば極寒期以外は着用することができるからです。Tシャツの上にブルゾンやジャケットなどを着用し、着る方もいらっしゃいます。
また、Tシャツはそもそも単価がアウターなどと比較して低いこと(乗じて原価も低くなる)に加え、事業をスタートしたばかりのブランド/ショップにとっても、比較的製造しやすいアイテムということが特徴の一つとなります。
しかし、それは裏を返せば
「誰もがやりやすい」=「製造側」
「誰もが持っている」=「顧客側」
ということでもあり、上記のような考え方は安易なものと言えます。故に「Tシャツなら売れるんじゃないか」という考え方に陥ることがあり、細かい戦略も施策も無しで、「作って売る」だけのプロセスだけで「乗り切れるんじゃないか」と思ってしまいがちです。
しかし、現実はそう甘くはありませんでした。
そして、私がOMOTE TO URAとしてTシャツをはじめて販売したのが2019年の9月のことでした。先日リリースしたTシャツとは、原価も売価もデザインも、使用しているブランドも大きく異なりますが、結果は惨敗でした。
いわゆるP/L(詳細はこちら)に照らし合わせると、赤字どころか、その辺りのコンビニエンスストアでアルバイトをした方が余程マシなのでは?というレベルでした。
「誰かが買ってくれるだろう」
「単価も低いから何とかなるだろう」
「いや、流石に誰か買うだろう」
という思い込みは、虚しく散っていきました。
私は普段、車を運転しています。昔、教習所の教官に言われた「だろう運転に気をつけろ」という言葉、つまり「ここから子供は飛び出してこないだろう」という慢心は、事故に繋がっていくのです。
たかがTシャツ一枚なのに、なぜ売れないのか。
それは全てが「だろう」の基に構築された、ぐらぐらとした施策のせいです。
これはあくまでも「恐らく」ではありますが、そもそもコンセプトやブランディングがきっちりとしたレールに乗っていないブランドは、例え一枚1,000円でも売れることはありません。煙草を吸っている人ならば煙草に、本が好きな人なら本に、そのお金でコンビニでご飯を買うのもいいでしょう。アパレル小売業の競合は、何も同業他社とは限りません。
よくわからないブランドの商品に、消費者は一円もお金を落としません。例え価格が安価でも、デザインが格好良くても、素材にこだわっていても、消費者は一円もお金を落としません。
そしていくつかの販売を経て、2020年12月にリリースしたアパレル商品は、全て売り切りました。以前販売したものと、大きく変えたものは以下です。
売価:¥2,000以上アップ
売価に関しては、原価を高くした為、大幅に高くなりました。だからといって粗利率が大幅に向上する訳ではありませんが、価格が高くてもお客様を納得させられるだけの理由や付加価値を生み出すことが大切です。
商品写真:プロにお願いする
まったく売れなかった2019年の時は、私が一人で写真を撮影するという方法をとっていましたが、2020年の販売期からは、商品写真を全てプロにお任せしています。オンラインは商品を実際に手に取れないので、画面上の「見た目」は想像以上に大切です。また、着用写真はあったほうが良い、とされることが定石ですが、必ずしもそうとは限りません。
お支払い方法:増加させる
以前は「銀行振込」「クレジットカード」のみの展開でしたが、2020年からはそれらに加え「コンビニ決済」「後払い決済」「PayPal」「キャリア決済」「楽天ペイ」などを導入しました。実際にPayPalや楽天ペイなどで購入されるお客様は皆無に等しいのですが、あくまでもお客様から見た「決済が多い」という事実そのものが重要だと実感しています。
デザイン:コンセプトからトップダウン的に
2019年時は、「商品企画→販売」における期間が短すぎて、デザインを熟考する猶予がありませんでした。また、コンセプトもお客様に伝わっていない状態だった為、所謂「分かりにくいデザイン」は出来ませんでした。しかし、お客様の目に触れる場所(ブログのアイキャッチやタグのデザインも含めたもの)は、全てしっかりとデザインするようになりました。特に少数でブランドやショップを運営しているところは、デザインの独自性は重要な要素になってくるので、時間をかけたデザインが必要だと考えています。
オンラインのレイアウト変更
2019年の販売におけるオンラインショップのレイアウトは、横に商品が4つ並んだ形状で、商品自体が小さく映ってしまう状態でした。しかしそれを2つ並んだ状態にしたことで、商品詳細ページへのアクセスが格段に増えました。商品が小さい状態で一覧になっていると、スマホの場合わざわざ二本の指で拡大しなければならず、煩わしいからです。
もちろん他に変更したことは沢山ありますが、消費者にとって「そんな細かいこと必要?」と思われることでも、結果として無意識のうちにユーザーはあらゆることを判断します。まだまだ弊社における問題点はありますが、一つずつクリアにしていき、今やもう古いとされているPDCAを実行していく所存です。
2021年もよろしくお願いいたします。最後までお読みいただきありがとうございました。(ワダアサト)
OMOTE TO URA代表。文化服装学院グローバルビジネスデザイン科卒業。EXHIBITION NEW SHOCK・CULTURE BREAK MARKET主催。
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