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最近見た怪しいニュースの感想

弊社では毎月、10数ブランドのECサイトを管理しておりまして、当然ながら定例でミーティングが開催されます。その際によく聞かれますのが、

「ニュースで出ていたあの話って中身知ってますか?」

というもの。大体が「◯日で◯◯億円の売上を達成!」だとか、そんな感じのものです。報道のされ方も大袈裟なので、「自分たちが知らないだけで、実はとてつもないハック術があるのでは?」と思ってしまうのも無理はありません。本当によく聞かれますので、最近見た怪しいニュースに関して筆者なりの見解を書き記しておこうと思います。

◯短期間で大きな売上をあげているブランドの報道

これに関してはパターンがいくつかあるのですが以前にも書きました、

無謀な新規参入はどうして増える?

①めちゃくちゃ広告宣伝費をかけている

②仲間内や自社でもめちゃくちゃ買っている

③短期間ではなく、過去からそこに売上が集約されるよう準備している

④そもそも数字が嘘

上記のパターンが多いのではないでしょうか。数百万人という圧倒的なフォロワー数を誇るインフルエンサーならいざ知らず、そうでないケースにおいてこの手のニュースは眉唾でしょう。

問題は何故、このようなニュースを流すのか?ですね。業界誌に載せたところでto C向けのブランドにとって販促になり得るか?と言われますと微妙でしょう。これはあくまで筆者の予想ですが、話題性を喚起することで今後の流通を優位に進める、という理由があるのではないかと思っております。例えばリアル店舗の売り場を取りに行く際、期待値の高いブランドなら商業施設の歩率の交渉を有利に進めることが可能でしょう。また、良い位置での出店なども狙えるかもしれません。これと同様にECモールに出店する場合にも料率(手数料)の交渉は発生しますから、ZOZOやAmazonのような、出店する際に料率で契約する他社モールへの流通にも使える可能性が高い。

本来、それだけ売れるブランドであるなら、自社ECだけで高い利益率で商売を継続している方が手間もかかりませんし、ECモールの値引き販売で粗利を削られる恐れもありません。また、自社のソーシャルアカウントを使って積極的にモールにも送客しているのも不思議な点です。顧客が強いのなら、その顧客がフォローしているであろうソーシャルアカウントで手数料の取られるモールにわざわざ送客するのははっきりいって損失です。さらに、自社ECでもセールは頻繁に開催されていますし、プロパーど真ん中の時期にクーポンも発行されています。

このようなことから、かなり強引な手法で売上を膨らませているような印象を受けます。

ファッション業界では過去からこのように「なるべくブランドを膨らませて見せる」という手法が割とよく使われていますね。インラインは小ロットで売り切り、「完売しました!」と声高々に喧伝。それを何回か継続し、有名ブランドとコラボを取り付ける。もちろんハズレるコラボもあるでしょうけどそれは発信せず、跳ねたコラボの実績を前面にプッシュ。売れ残ったものは国内で販売してしまうと印象が悪いので、海外に持っていき捌く。売上はなるべくコラボで作る為、いかに自分のブランドが人気であるか、をソーシャルメディアのフォロワー数と過去の(小ロットでの)完売の実績でプッシュするという内容ですね。これも「側」だけ立派に見せるには良い手法でしょう。

偽りの「完売しました!」はもう通じない

(完売手法は以前にも書いてますね。)

そんな訳で、業界内認知を取るメリットはこんなところにあったりしますので要注意でしょう。(あくまで筆者の予想ですが)

◯SNSの画像から需要予測

需要予測に関してはブログオーナーのマサ佐藤氏がいつもぶった切っていますので今更ここで言うまでもありませんが、今だに出て来る”SNSに画像を投稿し、その反応から生産量を予測する”といった内容。

 

ファッション業界から、新しいユニコーン企業が生まれる「理由」

同社のAIは、SNSなどの画像データから、どのようなアイテムが街中で流行しているかをリアルタイムで分析。アパレルメーカーが売れ筋を探るための秘密兵器になっている。

数年前にもSNSの画像の反応から需要予測、というものはあったのですが、これらのものと何が違うのかよくわかりません。(ユニコーン企業生まれてねぇし…。)ちなみに数年前によく報道があったAI企業、ファッション業界でよく業績不振で話題にあがる某企業が採用していたはずですが、その後業績が改善されたニュースを聞きません。画像データから今のトレンド把握をすることは可能なのでしょうけど、それをどのタイミングで店頭に置けるか?というサプライチェーンの問題が無視されているように思えてなりません。ZARAが強いのは、少量の商品を店頭に並べて、その当たりを見てからすぐ再生産し店頭に届けることができる仕組みでしょう。それが構築出来ないから勝てない訳で、予測が当たったとしてどのように品揃え・展開計画に反映するのでしょうか。AIがDXに変わっただけでやっていることは同じな気がするんですけど、何か筆者の知らないハック術が隠されているのでしょうか。賢い人、教えてほしい。

以上が先週の怪しいニュースの感想になります。メディアがこれらのニュースを報道することでやはり業界内認知は上がりますし、それが原因でよく弊社にも相談が来ます。お客様にとって本当に役に立つものであるならオススメもしますが、上記のような怪しさしか感じられないケースに関してはとてもオススメはできませんのでお気をつけください。

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