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そのデジタルツールって必要ですか?

先日、深地さんが弊社ブログサイトであげてくれた記事に以下のような文言がありました。

オンライン接客って何?

”新しい事に手を付ける前に、実は今の状況でもやれる事はたくさんあるので書きました。流行りのキーワード羅列して中身の無い提案してくる方々に惑わされないようにしたいものですね。”

これは、私が生業とするマーチャンダイジング(以下MD)にも、同じことが言えます。
昨今、SDG‘Sの観点から、アパレル・ファッション業界の”在庫過多問題”が至るところで取り上げられておりますが、その解決手段としてデジタルツールを活用した需要予測・在庫削減ツール等の話題が、大きく取り上げられることがあります。このようなことが取り上げられると、企業や組織によっては、”隣の芝生は青くみえる”的な発想で、デジタルツールが自社の在庫問題をすぐに解決してくれるのでは?という結論に至る。その結果、その新しいデジタルツールは、大した効果を発揮せずに、多大な投資金額をドブに捨てるようなことが、アパレル・ファッション小売業では起こっています。

しかしながら、先述した深地さんの記事にも書いてあったように、(MDに関する)新しいデジタルツールに手を付ける前に、現状でもやれることはあります。では、どのようなことをすべきなのか?ということを、以下お伝えします。

 

★お客様に喜ばれる商品を仕入れろ!製作しろ!(適品の部分を磨け)

そもそも当たり前のことになりますが、お客様の欲しがる商品を作れ!仕入れろ!このことが大事です。ですが、意外に商品そのものを甘く考えている組織が多いように思います。
例えば、安易な分析に基づいた昨年踏襲商品や原価率を低く抑えることが目的となった商品。また、昨今の流行りに乗っかったサスティナブルを意識した商品。ですが、そのような商品がお客様の欲求に響かなければ、ただのお金に変わらない在庫でしかありません。

更にデジタルツールの活用における需要予測に関することで言うと、そんなAIで簡単に予測出来るような商品・品揃えにお客様は喜びを感じるのでしょうか?私の個人的な主観でしかありませんが、機械が予測するファッションの何が楽しいのでしょうか?そんなことが罷り通れば、ファッション業界の規模が加速度を持って縮小するだけではないでしょうか?

兎にも角にも、まずは商品そのものをに全力を注ぎ、お客様にとって喜ばれるもの!そして、(商品の)供給以上の需要を生み出せ!ということが大前提です。このことが為されれば、在庫問題など起こりようがありません。

 

★MDの数字面の基本を理解し活用せよ!

MDの商品面における仕事の精度が高ければ、在庫問題等は生まれる筈がありません。ですが、そのことを完璧に実践するのが、中々難しいことも事実です。ですので、このブログや他の連載でも、ことあるごとにMDの数字面の基本をしっかりと活用することが重要だと述べています。
小売業にとって、MDの仕事は”売上・粗利・在庫”という数字を司ることにことになりますから、ある意味、MD=経営そのもの!ということになります。ということは?MDの数字面の表現は、基本的に、会計学に沿ったものでなければいけません。しかしながら現状は、在庫を未だに売価管理していたり(値引き施策を一切しないのならば良いが)、会計学には存在しない”プロパー消化率”等の指標をKPIに設定し、”仕事の為の仕事”を多く生み出したり、クーポンを値引きを販管費に計上し、自分の評価を上げる為にインチキ(プロパー消化率をこのことで上げる等)をする人が出たり等、間違った数字管理をしている組織が多く、それではMDの精度(特に期中運用の精度)は上がらず、在庫が残る要因となります。このような状況にならない為にも、MDの数字面の仕事に必要な知識を理解し、そのことをMDの数字面の仕事に活用することを切に訴えます。

(下記は私の繊研plusの連載になります。こちらの記事を是非ご覧くださいm(__)m)

繊研新聞(佐藤正臣)

 

★商品管理・分析ルールをしっかりと整備しろ!

先述したように、アパレル・ファッション小売業界の方々には、デジタルツールの進化で”在庫過多問題”が解決できる!と勘違いしている人が多くいます。ですが、これも自社のMDにおける商品の管理・分析ルールが整理整頓されていなければ、どんなに立派なAIツールを導入しようが、効果が出ないのは当たり前です。このことは、AIに10億以上の投資をしながら、大した効果を上げられなかった某上場企業の結果を見れば明らかです。

以上のことから、現状私は、MDに関するデジタルツールの導入を、(各企業が)躍起になって導入する必要性を全く感じていません。

更に言えば、MDのおける商品管理・分析ルールがキチンと構築されていれば、デジタルツールの宣伝でよく謳われている”不振商品・在庫の炙り出し”等は、Excelのソート機能を使えば、一発で炙り出しが出来ます。このことも、MDの仕事を理解し、自分たちのショップ・ブランドのお客様お購買心理・行動を反映したルールを構築することで、より詳細に行えます。また、規模の小さいショップ・ブランドの場合。実店舗がある場合は、ショップの仕事にも直接関わることで、データだけでないお客様の購買行動から仮説を立て分析することで、先の商品計画の改善のスピードが速まります。EC専業ならば、現状のツールでも、かなり精度の高い商品分析が出来る!というのが、これまで多くの組織のMD改善に努めてきた、弊社の答えです。

 

★まずは、出来ることから始めよう!

昨今、SDG‘Sの観点から、アパレル・ファッション業界の”在庫過多問題”が至るところで取り上げられている!というのは、先述した通りです。しかしながら、そのことを利用し、アパレル・ファッション小売業を下に見た識者や組織が、間違った発信や効果が得られないデジタルツールの宣伝を行うことを目にするようになりました。
”売れる分だけ仕入れる!””(もう売りようがない)在庫を多く残さない!”、このことは小売業の経営的な視点からみても重要です。
ですが、間違った発信等を鵜呑みにし、多額の投資を効果の出ないツールやシステム等を導入すれば、それこそ組織にとっての致命傷となりかねません。ですので、MDや在庫に関することで言えば、現状出来る基本的なことを実践することこそ重要だ!ということを、切に訴えて、今回の記事は終了します。
この度は、記事をご覧頂きありがとうございます。次週もよろしくお願いいたします。

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