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桜の季節も終わりを迎え、本格的なSSシーズンが始まって1か月以上経ちますが、この春は気温の変動が激しく、頭も悩ませているマーチャンダイザー(以下MD)の方々も多くいらっしゃることでしょう。ですが、息をつく暇もなくMDは、次のAWシーズンの仕事に取り掛かっている時期の筈です。おそらく、既に発注を終えた商品もあることでしょう。そこで今回は、AWのMD設計に入る際に、注意すべきことを伝えていければと存じます。(記事にするタイミングが遅かったかもしれませんが、ご容赦願います。)
MD設計を行う前に、必ず実践しておかなければならないことは、検証を具体的に行うということです。
因みに、2021年11月~2022年1月までのファストリテイリングの月次別のコメントを以下記載しますと。
→11月は、感謝祭や、コラボ商品の販売が好調だったものの、月の前半は気温が高く、防寒衣料の販売に苦戦したことから、 既存店売上高は減収となりました。
→12月は、4週目まで気温が高く推移したことから、防寒衣料の販売に苦戦しました。 最終週は気温の低下に加え、年末祭が好調だったことで増収となりましたが、月全体では減収となりました。
→1月は、防寒衣料の在庫の過少や、セール時期での売り込みが不十分だったこと、 入庫遅延の影響で春物商品の立ち上げが遅れたことにより、既存店売上高は減収となりました。
となります。
因みに、東京の2021年11月~2022年1月の、過去30年平年気温との差を確認すると、11月は+1.2℃。12月は+0.2℃。1月は-0.5℃となっており、確かにファストリテイリングのコメント通り、11月は気温は高く推移したのは間違いがありませんが、12月はほぼ平年並み。1月は平年より寒かったということになります。特に、過去3年が暖冬だったので、12月以降はより寒く感じられた方々が多かった筈です。(因みに2月は、平年よりも1℃ほど低かった)
ファストリテイリングのコメントを見る限りでは、今年は防寒衣料の仕込みが少なく、特に寒くなってからの売上に苦戦したということが見て取れます。(但し、12月・1月のコメントはナニイッテルノカワカンナイ?状態ですが)このことは、UNIQLO以外の他社ショップでも見られた現象で、推測するに、過去3年が暖冬だった為、防寒衣料を多く余らせてしまった反省から、防寒衣料の売上予算を大幅に下げたMD設計をしたことが要因だと考えられます。
このことを簡単に説明すると、売上予算を30%に設定した場合は、当然その売上金額を元に仕入を行います。20%に設定すれば、20%の売上予算を元に仕入を行うということです。21年AW商戦で言えば、防寒衣料の売上予算20%で仕入活動を行った所、売上予算以上の需要があったと考えられる為、必要な在庫が足りず、その結果、全体の売上も下がってしまった!可能性が高いといえるでしょう。
以上のことを踏まえ、21年AW商戦の検証を帰納的な思考で検証・分析を行えば。
となります。
しかしながら、このような当たり前でしかない検証を行うと、22年シーズンの防寒衣料のMD設計で、またミスをする可能性が高まる!という結果になるでしょう。ですから、このケースで行わなければならない検証は、”IF検証”を行わなければならない!ということです。
では、21年AW商戦のIF検証をの簡単な例を記載しますと。
という検証です。
例えば、21年AWシーズンのアウターの売上構成比の実績が20%だった。しかしながら、そもそものMD予算設計の段階での防寒アウター売上予算は18%で設定していた。期中で多少追加が出来たが、結果は足りなかった。具体的にどのくらい防寒アウターが足りなかったのか?ということを検証・シミレーションした結果、売上構成比24%は可能だった!
等という、検証を行う必要があるということです。その後。
① 21年AW以前の過去数年の防寒衣料売上実績(金額・構成比)を並列し分析を行う。
② 22年AWシーズンが”暖冬傾向なのか?21年と同じくらいの気温なのか?”ということを推理する。
③ 22年AWシーズンの気温傾向を決定した上で、防寒衣料の売上予算を設計する。
という順序でMD設計を行います。その際に、特に②③の段階で注意を払わなければなりません。簡単に説明すると。
来期の防寒アウターの売上構成比を予算化する際に、22年AWシーズンは暖冬と予測。21年の85%程度の売上構成比になると見込まれる!と決定したすると。
20%(21年AWシーズンの防寒アウターの売上構成比実績)×暖冬傾向で前年の85%=17%(22年AWの防寒アウター予算)
となります。これでは、22年AWシーズンの防寒足りない可能性が大です。
この場合は。
24%(足りなかった分を検証した21AW売上構成比)×暖冬傾向で前年の85%=20.4%(22年AWの防寒アウター予算)
と、考えなければならない!ということです。また、今回は売上構成比からの側面で考えましたが、金額面の側面でもチェックしておくべきでしょう。更に言えば、同時に過去の個々の商品自体の検証を行い、商品自体の精度も上げる努力をする。また、販売期間の検証も行ったうえで、商品の投入アイテム・SKU数の設定等を行えば、気温の推移という外的要因での要素以外での、MDの失敗の可能性は低くなります。
アパレル・ファッション小売業のMDが大変なのは、商品のリードタイム(以下LT)が長いことによって、かなり早い段階で商品の仕入活動を強いられるということです。
先述したUNIQLOは、半年前後前に防寒衣料のMD設計をしなければならない!と推測されます。その段階で、防寒衣料のMDを読み間違えたことが、21年AW商戦の防寒衣料の失敗に繋がった可能性が高いでしょう。しかしながら、アパレル・ファッション小売業の商品供給体系を考えると、今後LTが短縮されることは、ほぼありえない!と考えた方が妥当です。ですので、シーズンの検証を行う際は、誰にでもわかる安易な検証を行うのではなく、”IF検証”を行うことで、具体的な検証を行うことこそが、次のシーズンMDの精度を高めることにおいて重要である!ということを訴えて、今回のブログは終了です。
この度は、記事をご覧頂きありがとうございます。次週もよろしくお願いいたします。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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