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プロパー消化に拘りすぎると在庫が増加しがちな件

★一見、業績が改善しているように思えるが

2022年に入り、コロナ禍が収まったわけではないですが、アパレル・ファッション小売業の業績は、回復しているのは以下の記事にも書かれているように間違いありません。

《専門店ランキング調査から㊥》粗利益率、販売・管理費率 仕入れ、値引き抑制で改善

上記の記事を読むと、値引き抑制による粗利率の改善。仕入抑制等も企業の業績回復に寄与されているとのことです。

しかしながら、私のような疑い深いものは、上記のような記事を読むと一つの疑念が抱かざるえません。それは何かと言いますと。
”値引きを抑制し粗利率が改善したことで、在庫が増えてませんか?”ということです。

会計学でいう仕入金額は、売上原価のことになります。しかしながら、この売上原価という項目は、売れた商品の分だけを仕入として計上するという考え方ですから、実際に(期中で)仕入した金額との差異が発生します。小売業の場合での実際の仕入金額は、OTBのロジックを使うと算出できます。その計算式は、以下のようになります。

→(期間)仕入原価=((期間)売上原価+期末在庫原価)-期首在庫原価

このことです。上場企業の決算資料には、期首在庫と期末在庫の金額が記載されていますから、上記の数式に当てはめれば、アパレル・ファッション小売業の組織が1年で、どのくらいの仕入をしたのか?そして、在庫が増えたのか?減ったのか?ということを調べることが出来ます。

 

★プロパー消化を促進し、粗利率が改善したことで黒字になったけど、実際は。。。(架空の組織の例)

このことを利用し、アパレル・ファッション小売業の決算資料を調べると、粗利率が良い影響で営業利益が黒字になっているケースがあります。そのような場合、マスコミは以下のように報道するケースが殆どです。
「プロパー消化を促進し、粗利率が改善。黒字に転換することに成功!」
このような見出しをみると、一見業績が改善したように見えます。しかしながら、下記のような例だとどうでしょう。

(例)
ある架空のアパレル小売組織の決算資料の結果。→プロパー消化を促進し、粗利率が改善。営業利益が増加した報道された組織
・売上100億円 ・粗利率55%
・販管費率49% ・営業利益率 6%(営業利益6億円)
・期首在庫原価18億円 ・期末在庫原価25億円

上記の数字だけみると、この組織は一見優秀に見えます。しかしながら、数字をみると在庫が7億円増えています。この組織の売上原価は?
→100億円×(1-55%(売上原価率))=45億円(売上原価)
となりますから、これに在庫増加分7億円をプラスすると、この組織の1年での仕入原価金額は52億円ということになります。

ということは?この組織の決算期間内での消化率を算出すると
→45億円(売上原価)÷52億円(仕入原価)≒86.5%
ということになります。この数字一見良く見える方もいらっしゃるかもしれませんが、アパレル・ファッション小売業の組織は、アウトレットやファミリーセール等で前期より以前の持ち越し品(キャリー品)を消化しています。そのような商品に仕入は発生しませんから、この組織のこの年の新規商品だけでの消化率をみれば、もっと数字が悪い!ということになり、多くの残在庫を残している結果となっている筈です。
また、上記の例の記載された数字だけで見た場合、在庫が7億円増えているということは?営業利益6億円のキャッシュ増加分が、仕入原価52億円-売上原価45億円=7億円キャッシュが余計に出ていくことで、この組織のキャッシュは1年間で1億円減少した!ということになります。このような組織は翌年、キャリー品の在庫消化を余儀なくされるので、キャリー品の質が悪い場合は、過度なセールを余儀なくされ、粗利率が低下し営業利益が赤字に転換する!このようなことに陥りかねません。事実、過去私がアパレル関連小売業の組織の決算資料を調べた際に、同様のことが起こっていました。

 

★最後に

では、これまで述べたことを踏まえて、何が言いたいのか?と言いますと。
プロパー消化率という正しく計測出来ない指標を盲信し、プロパー消化に拘ることで(プロパー消化に拘ることを否定しているのではない)、在庫が増えても知らん顔。残った在庫はアウトレットに放り投げる!そのようなことを行っても、組織にとっては悪影響しかない!ということです。何も考えなくても商品が売れて、売上も粗利も在庫消化も良い!ということが理想ではありますが、組織としてのアウトレットの消化機能やお客様から見た組織としての価値を考えた上での予算計画。そして、プロパー事業部の在庫消化等、(1年で)どのくらい在庫を残しても良いのか?ということも踏まえた上で、事業部単位での商品計画のKPIを設定し、緻密なMD予算設計と細やかなMDの期中運用を行うことの重要性をを訴え、今回の記事は終了致します。

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