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アパレルECの担当者はどうしたら育つのか?

先日、繊研新聞さんで下記のような記事が出ておりまして、

ファッション企業108社に調査 「ECデータと運営」

ECのデータ活用の目的を調査した記事ですが、CRM・UI改善が上位に来ております。

ECの改善で買い上げ率は上がるのか?

(相変わらずUI改善が上位ですが、以前このような記事を書いておりますので参考までに)

その中で、やや気になる一文があったのが下記。

”一方、施策が多岐にわたることで、人材育成・教育への課題感が一層増している状況も浮き彫りとなっている。”

これは筆者も現場で常日頃から感じている事でして、最初は「売上を上げる・課題を洗い出し改善に導く」などの役割でプロジェクトに参画するものの、いつの間にかKPI設定から計測、施策立案の流れを社内の方々に身につけて頂き、自走するまで持っていく事が目的になる事も珍しくありません。(その方がこちらとしても望ましいと考えております。)

それもあってか、専門学校ではアパレルECの担当者になる為の教育も手がけておりまして、本格的なコースを設立している学校は全カリキュラムがECの為の講義で埋め尽くされております。

(こんな授業やってたりします)

筆者がアパレルECを生業にして今年で13年程度経過するのですが、その間に関わったブランドの数は80を超えます。現場で働く様々な担当者を見てきましたが、どのような方が活躍しやすいか?はよくわかっているつもりです。そのような人物像を想像しながら、普段教育に携わっているのですが、そこで今回は筆者が実施しているアパレルECの授業内容について公開してみたいと思います。

■CSV編集・商品アップロード

EC担当の業務の基本と言えば、ささげ(撮影・採寸・原稿)業務と商品アップロードの作業。撮影・画像加工や原稿の授業は別の講師が担当しておりますので、筆者が指導するのは商品アップロード作業になります。(カートはBASE or Shopifyを採用)「サンプルのフォーマットをDLして必要な項目を埋めていく」という流れでも良いのですが、このやり方だと学生さんにレクチャーするにはちょっとハードルが高いです。なので、まずは管理画面から商品を10点ほど登録してもらいます。

その後、登録したデータをCSVでエクスポート。自分が入力したデータがどこに入っているのか?を確認し、その下に商品を追加していきます。(あらかじめ商品画像は撮影の授業にて撮影済み)

商品登録の際、アイテムカテゴリーの分類は既に決めておかなければなりませんが、あくまで練習なのであらかじめ撮影した商品を簡単なカテゴリーに分類。そのカテゴリー通りに商品タイプ(もしくはタグ)もCSV上で登録します。Shopifyのストア分析やGA4にてアイテムカテゴリー分析を想定していますので、商品タイプでの登録を推奨しています。これ、分析担当としては必須で商品タイプで登録しておいて欲しいのです。でないと、ShopifyのGoogle&YouTubeでGA4を設定した際、アイテムカテゴリーのデータが取得できません。また、Shopifyのストア分析でもアイテムカテゴリーでの分析ができませんので、分析面では弊害があるのです。(構築の際は余計な手間が発生するから設定しないショップが多いです。)

■検索対策も考慮したカテゴリーの設定・商品一覧ページの作成

次にやるべき事ですが、登録した商品タイプ(タグ)ごとに一覧ページを作成。これはShopifyの「コレクション」から簡単に作成可能ですが、抜けがちなのはtitle・descriptionの設定ですね。あらかじめ想定される検索クエリから、どのような文言をtitle・descriptionに入れておけば良いか?を考えます。このあたりはランキング要因ではないからといって軽視される方が多いのですが、設定しておかないとそもそも、その文言でヒットしない事が多いです。ブランド名を記載する場合は英語表記・カタカナ表記の両方を網羅(CHANEL(シャネル)みたいな書き方ですね)しないといけませんし、アイテム名は複数の呼称がある場合は両方記載が必要です。(リュック(バックパック)みないものです)アイテムカテゴリーもできれば中分類・小分類まで分けておき、細かいカテゴリーはタグで対応する、などの対策も合わせてレクチャーしています。

■商品詳細ページの作業

◯商品詳細ページの設計

まずはどのような情報を商品詳細ページで見せるか?の設計ですね。商品説明文を記載する箇所に、タブで切り替えて寸法を記載するのか?スタッフコメントの記載をするのか?SNSでショート動画を投稿しておき、それを埋め込むのか?フッター付近にはレコメンドの商品リストや別のアイテムカテゴリーのリンクを設置するのか?などなど。商品詳細ページはそれらを決めてからでないと情報の登録が難しいです。(先にとりあえず説明文だけ載せておき、後で設計して修正するという対応でもOKです)

◯説明文の入力

こちらは別途、ライティングの授業があるので、文面はできあがったものをCSVの編集の際に入力しています。説明文のような原稿作業は、企業によっては外注しているケースもありますが、できれば商品の良さを知る現場の方が書いた方が良いでしょう。このあたりは販売出身の方であれば、お客さまが商品の何を気にされているか?がよく理解しているので重宝されがちです。販売出身×文章が書ける方は現場で求められる人物像ですね。

◯商品詳細ページのtitle・description・alt属性の設定

これらはCSVからでも編集可能ですが、アイテムの顔が見えないまま設定するのは初心者には厳しいので、学校の授業では管理画面から設定するように指導しています。商品点数が膨大な現場ではこのような対応は難しいですが、初期は管理画面から設定するのが望ましいでしょう。商品説明文を既に入力している場合、descriptionはその文面がそのまま反映されますが、検索結果に適しているか?は要確認。微妙な場合は軽く修正しておく事をお勧めします。また、alt属性は現場でも設定されている事がほぼありません。徹底しておくと、意外と検索クエリのクリック数が上がりますのでこちらも授業内で網羅するようにしています。

■メルマガ作成

Shopify Emailをインストールし、簡単なメルマガを作成します。ここでも事前に、複数ブランドのメールマガジンを受信しておき、そこからアイデアを考えます。(筆者のメールマガジンのボックスから、どのような訴求方法があるか?をカテゴリー分類して見せる事もします)Shopify Emailには自動化のテンプレートも付いていますから、そのあたりの説明もセットでできるのはありがたいですね。

■GA4を活用した計測と改善の導き出し方

GA4に関しては、ShopifyのGoogle&YouTubeを使っての設定はレクチャーしますが、学生さんがテストで作ったECサイトだと公開してもトラフィックが担保できませんので、Googleマーチャンダイズストアのデモアカウントを見せながらレクチャーする事が多いです。ここに関しては書き出すと文字数が膨大になるので箇条書きしておきます。

◯どのチャネルにどのデータが格納されているのか?

◯流入経路別の効果検証方法

アパレルECにてGA4のデフォルトチャネルで注意すべき点

(このあたりの内容ですね。)

◯その他のレポートの使い方(ランディングページ・ページパスとスクリーンクラス・search console連携などが中心)

◯広告レポートの使い方(間接効果の説明含む)

◯探索の使い方(セグメント機能の使い方含む)

このあたりを活用しつつ、どのような分析テクニックがあるか?を合わせてレクチャーしています。

大体、ここまでで1年間のカリキュラムが終了します。

■サイトコンテンツの企画

ここからは別の学校で教えている内容になりますが、コースによっては特集記事や販促の企画などもやってもらいます。こちらの授業を実施する場合、前提として「ブランドの企画」をカリキュラムに差し込んでいるか?が重要です。筆者が講義をしている文化服装学院IMD科では、マサ佐藤氏がブランドの根幹となるMDを担当されておりますので、そこで出てきた計画を基にEC上での販促・サイトコンテンツの企画を起こしてもらっております。

やり方は先日書きました、筆者のリサーチ方法が軸になっております。

アパレルEC・店頭のリサーチはどうすれば良い?

◯大手アパレルのECサイトのコンテンツを抜き出し→ジャンル分け

まずは大手のECサイトから1年分の記事コンテンツを抜き出し、メモをしてもらいます。これをしておくと、年間の販促計画の理解から、シーズンや月ごとにどのような訴求・提案があるか?を網羅できます。これから企画を起こす際のネタ帳の作成みたいなものですね。ECサイトによっては過去記事をすぐ削除してしまうケースが多いので、ベイクルーズさん・ビームスさんあたりが対象になりやすいです。

例えば2月であれば、主に提案されている内容は「ファイナルセール」「オケージョン」「ギフト(ホワイトデー」「春まで着れる服」「春カラーの提案」「衣替え」などになりますが、そのようなシーズンごとの流れを掴むにはこの作業は最適です。(しかし、多くの学生がここで脱落します…。地味な作業の継続は意外と難しいようです。)

◯販促計画立案から特集の企画→SNSのどの機能を使って拡散するか?も企画

上記作業では販促関係も全て網羅できますから、大手アパレルがどのような販促を実行しているか?が理解できます。(雑誌掲載やコラボ、リアルイベントはブログ・ニュースでもよく告知されています。)それらを参考に、自分たちのブランドならどのような計画を立案するか?を考えてもらいますが、それだけではお客さまへのリーチは弱いので、最後はSNSやメルマガ・LINEを活用してどのようにお客さまに伝えるか?までを考えてもらいます。例えばinstagramなら、

「更新された特集記事のビジュアルを複数枚使い、簡単に文字入れをしてカルーセルで投稿する。」

「月間の売上ランキングを記事に起こし、ランキングをストーリーズでも公開→ハイライトに追加し、リンクスタンプで記事に送客。記事には商品ごとのコーディネート一覧への導線も設置。」

のように具体的に考案してもらいます。リサーチの段階で、SNSではどのように露出しているか?もメモしてもらい、それらを参考にします。普段、学生さんにヒアリングしますと、「ブランドを作りたい」とお話する方が多いのですが、「どのように?」と聞くとほとんどの方が「ECからスタートして、SNSでファン獲得する」と答えます。しかし、そこに具体的な案は無く、何となくそれが正攻法のように感じているようです。確かにそれは正攻法の一つではあるのですが、無計画にSNS・ECに手を付けるくらいなら、サンプル持ってセレクトショップをしらみつぶしに周り、卸の受注取る方がまだ売上に繋がるかとは思います。そこを具体的に考える、というのがこの授業の根幹になっております。

長々と書きましたが、これが筆者が普段から授業で実施している内容です。ベースは筆者のクライアントにて、「こんな人材がいたら助かる」というお声や、筆者自身が「現場にこんな人がいたらいいな」と思う人物像を育成する内容で設計しております。前半部分は基本中の基本なので、作業として対応している方は多いでしょう。しかし、売上につながる事を目的として作業している方は意外と少ないので、基本を疎かにしてしまうと機会損失してしまっている事はご理解して頂きたいと思います。

企業向けに、そんな担当者育成の為のメニューもありますので、良かったらご相談ください↓

EC担当者教育コース

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