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継続品の比率を増やせば、業績が回復するのは本当か?(ワコール編)

★ワコールのMD的な部分の改革に違和感を感じる

つい先日、以下の記事を見つけました。

二期連続赤字に沈むワコール「2つのジレンマ」、希望退職150人程度の募集に対して215人が応募

ワコールの業績悪化は、最近よく耳にしていましたが、基本的に私はワコールのことを殆ど知りません。上述した記事はよく書けていて、とても勉強になりましたが、記事内で出てくる経営陣が掲げているMD的な部分の改革には、MDアドバイザーの視点で考えると違和感を感じる部分がありました。以下、この記事の中で紹介されているワコール矢島社長の発言を引用させて頂きますと。

矢島社長は、「ここ数年で在庫が膨れ上がり、回転率も悪化した。それは決してコロナ禍のためではなく、根本的な原因は当社のモノづくりの仕方にある」と説明する。

とあります。在庫や回転率等は、私の専門分野でマーチャンダイジング(以下MD)に負うところが多い部分です。更に、矢島社長の発言を以下引用させて頂きます。

ワコールの強みは研究開発、商品企画、生産・品質管理、販売に至るまでの一連の機能を自社で備えていることだが、近年はその強みが逆にあだとなっていた。ワコールでは商品企画が、販売の14カ月前から始まる。ただ「消費者の好みが多様化して流行の移り変わりも早い中で、1年2カ月後を予測しながら作るのはリスクが高すぎる」(矢島社長)という問題を抱えていた。

とあります。他にも記事の中では、UNIQLOやしまむらの台頭でシェアを奪い取られた等のことが記載されていますが、このことに関しましては、私の専門分野ではございませんので、今回は触れません。そして今回、私がもっとも違和感を感じた部分を、以下引用致しますと。

「今中計で、14カ月スパンを6カ月まで短縮したい。そのためには継続品の比率を上げることが焦点になる」(矢島社長)。継続品とはシーズンごとの新商品ではなく、定番品を指している。現在、ワコールHDは継続品が約4割・残る約6割が新商品となっているが、この比率の逆転を目指すという。

この部分です。上述したように、私はワコールのことを詳しく知っているわけではありませんが、MDアドバイザーとして立場から言わせて頂くと、継続品の比率を上げるような施策を打ち出すことには反対です。理由は以下の2つです。

〇継続品は在庫が増えやすく、更に在庫回転が悪化する可能性がある
〇(なんだかんだ言っても)女性はトレンドに敏感である

これが理由です。

★継続品の比率を増やすことに反対な理由

〇継続品は在庫が増えやすく、更に在庫回転が悪化する可能性がある

先ずは、継続品の在庫が増えやすい理由をみていきます。小売業における仕入の基本は、再三申している通り「売れる分だけ仕入する!」が、基本となりますが、販売期間を設定しない継続品は、このことが難しく在庫コントロールが緩くなりがちになります。また、セールをしなくてもいつかは売れる!という油断が生じますから、そのことも相まって、在庫が増加しやすくなります。更に言えば、セールという手段を使わなければ、在庫回転が悪化しやすくなります。これまでの仕事を引き受けた弊社のクライアント様で、継続品比率が多い会社は、総じて想定以上に在庫回転が悪かったのが厳然たる事実です。

〇(なんだかんだ言っても)女性はトレンドに敏感である

次は女性のトレンド意識についての部分です。これは矢島社長の発言の中に。

「消費者の好みが多様化して流行の移り変わりも早い中で」

とあり、女性のトレンド意識の高さを認めているとも捉えることが出来ます。またワコールは、UNIQLOやしまむらとはMDでいう”適価”も違えば、ブランドコンセプトも違います。実用性と価格を重視しているUNIQLOと、女性らしいデザインも重視しているワコールとでは、当然のことながら、違うMD戦略をとるべきで、女性のトレンド意識の高さを捉える為には、売り場での鮮度は重要となります。ですから、ワコールが継続品の比率を上げ新商品の比率を下げるという施策は、売上そのものが下がるリスクが高いのでは?と感じます。

★MD的な部分の改善案は?

上述した通り、私はワコールのことをよく知っているわけではありませんが、MDアドバイザーとして、MDの改善案を示したいと存じます。改善案は以下の通りです。

●継続品の再定義を行うこと
●(新商品の)販売期間の設定を延ばし、投入アイテム数を減らすこと

この2点です。

●継続品の再定義を行うこと

まずは、継続品の再定義に関してです。上述した記事の中で、継続品比率が高い優良ブランド?として、ノースフェイスがあげられています。

例えばアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」では「継続品が3分の2以上を占める」(業界関係者)といわれる。

しかしながら、定番商品(変わらないデザイン)が多いアウトドアブランドの課題は在庫回転の悪さです。事実、小売りだけでみれば、ノースフェイスも在庫回転に悩んでいるのでは?と、私は睨んでいます。その一つの要因として、商品としての継続性(定番商品)を、MDの管理の部分にまで取り入れていることが要因だと考えています。例えば、ノースフェイスのマウンテンパーカー的な商品は、長く売られています。しかしながら、MDでいう”適時”という視点で考えれば、おそらく夏の期間の売上は大幅に下がる筈です。
このような商品を、管理の部分でも継続扱いにしていると、在庫が増える要因となります。ですから、このような商材は季節商材として扱い、売れる分だけ仕入れる!という、ことを徹底することが重要です。ワコールは商品の殆どが下着ですから、アウトドアブランドのようなことが少ないかもしれません。しかしながら、大して売れていない商品を継続品扱いのままにしてある!等のことがあるかもしれません。ですので、継続品の再定義を行い、実際に再定義した中での、継続品の売上構成比を再算出し、今後のMD戦略を考えるべきです。
継続品の仕入予算の考え方は様々ですが、参考として、私の過去記事を以下リンクしておきます。

通年(継続)商品の予算設計の考え方

●(新商品の)販売期間の設定を延ばし、投入アイテム数を減らすこと

次は、販売期間の設定を伸ばすことで、投入アイテム数を減らす!に関してです。上述した矢島社長が考えるワコールの問題点に、以下の発言がありました。

「ワコールでは商品企画が、販売の14カ月前から始まる。ただ「消費者の好みが多様化して流行の移り変わりも早い中で、1年2カ月後を予測しながら作るのはリスクが高すぎる」

この問題点を解決する案の一つとして、商品の投入アイテム数を減らすことが有効であると考えます。商品の投入アイテム数を減らすには、MD理論でいう販売期間の設定を延ばす必要があります。その考え方は、私の過去記事を以下貼っておきますが、(場合によっては)商品の販売期間を15日延ばすだけでも、約30%の投入アイテム数を減らすことが出来ますから、そのことだけでも、商品開発のリードタイムを短くすることに寄与することになるでしょう。

販売期間の長短が在庫に与える影響とは?

★継続品増やす=業績がよくなる!わけではない

ワコールは上述した記事の中で触れられていたように、卸売りが7割を占めます。

国内の販路別売上高を見ると、 量販店(GMSなど)がもっとも高い29.4%、百貨店が21.6%となっている。専門店や外部ECなどを含めると、卸売りが7割弱(いずれも2023年3月期実績)を占める。ワコールHDでは、販路ごとにブランドを設けてマーケティングしてきた。

この事実から考えると、今回の私の提言は小売り中心の考え方になりますし、直営店と卸先の売れ方が大きく違う等のこともあるでしょうから、提言した施策を実践すれば良くなる!ということでもないのかもしれません。しかしながら、読者の皆様に考えて頂きたいことは、長く売れる定番商品・継続品を増やせば業績が上がる!ということを安易に考えないでほしいということです。ですから、自分たちのブランド・ショップのコンセプトを鑑みた上で、継続品の戦略を考えて頂ければ幸いです。

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