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値引分を販管費計上するのは止めませんか?

★クーポン・ポイント値引き分を販管費計上するとは?

先日アップして頂いた深地さんの記事に以下の文言がありました。

オンワードのEC売上はどう推移している?

”会員限定80%OFFセールの頻度は非常に高く、ポイント施策も多いですね。(ポイントは販管費計上かもしれませんが)”

このことが何を指しているのか?と言いますと、元売価1点10,000円。値入率80%の商品が、20%のポイント(20%オフと同様とする)の使用で売れた場合、通常は売上8,000円。粗利率75%となりますが、このポイント値引き分を販管費計上で処理すると、売上は10000円。粗利率は80%と名目上は処理されることになります。値引分を販管費計上にしている組織は、意外にまだ存在します。また、楽天やZOZO等のプラットフォームを活用した場合、会計処理上仕方がない側面があるというのも、以前の弊社のお客様からお聞きしました(お客様の場合は、変えられる範囲は値引き分は売上を下げる!という形に変えてもらいました)。以前、決算資料を分析したTOKYOBASEさんも、決算資料で以下の文言が掲載されていたように、かつてはクーポン割引等を、販管費計上していました。

話題の企業の在庫を調べてみた!~MD視点でみる決算資料~

(主な収益認識基準適用の影響)
• 売上4.0億円減:販管費で計上していた自社ポイント利用分等を売上から減額
• 販売促進費4.0億円減:自社ポイント及び他社モールクーポン利用を売上から減額
• 運賃0.5億円減:自社オンラインストアの運賃を売上原価で計上
• 営業利益0.05億円減で影響額は僅少

しかしながら、MD的観点で言わせて頂くと、クーポン割引等を販管費計上することは弊害しかない!というのが、私の結論となります。ですから、TOKYOBASEさんがクーポン等販管費計上を止めたのは大正解です。

★クーポン・ポイント等の値引き分を販管費計上する弊害とは?

では以下、(MD的視点でみて)クーポンやポイント等を販管費計上する弊害を箇条書きでお伝えしますと。

●(組織の)実力以上の売上・粗利金額が算出される
●売上やプロパー消化率がKPIになっている部署はインチキが可能になる
●在庫コントロールを行う際に弊害が出る

●(組織の)実力以上の売上・粗利金額が算出される
●売上やプロパー消化率がKPIになっている部署はインチキが可能になる

これは読者の皆様方もおわかりのように、売上目標を達成させる近道として、クーポンやポイント還元のイベントを連発すれば、楽に売上目標を達成させることが可能となります。なぜならば、クーポンやポイント還元分が販管費に計上されることで、値引分なしの売上が計上されます。しかしながら、クーポンやポイント施策を連発すれば、名目上の売上・粗利の目標は達成できても、販管費が増大することで、赤字に陥る可能性も出てきます。通常ショップのKPIは、売上をのみをKPI設定している組織が多いですから、クーポンやポイントを連発すれば、売上目標を達成させやすくなる!とインチキが可能となります。また、プロパー消化率をKPIに設定している組織であれば、クーポンやポイント施策を連発すればするほど、プロパー消化率を達成させやすくなる!という本末転倒なことが起こるなということになります。

●在庫コントロールを行う際に弊害が出る

MDの仕事の成果・KPIは、売上・粗利・在庫回転でみる場合が多いのが殆どです。私がこのサイトでも、他の連載でもMD予算設計・期中運用の重要性を訴えていますが、MD予算は損益予算がベースとなっています。例外もありますが、通常MDは実務で販管費のコントロールを詳細に行うことはありません(実務の範疇を超えている)。しかしながら、クーポンやポイント割引等を販管費計上すると、在庫管理を行うには、損益計算まで含めた管理まで行わなければならず、実務が煩雑化・複雑化します。とくにMD関連管理会計帳票が複雑化します。しかしながら、そのことで正しい期中のMD運用が出来るのか?と言えば、難しいというのが事実です。ですから、値引した分は売上が下がり、粗利が減るといった!当たり前のMD運用(OTB運用)を行い、売上・粗利・在庫目標を達成することがMDにとって重要です。

★インチキできない仕組みを作ることが重要

最後に、MDの数字面の仕事において最重要なのは、インチキが出来ない指標・仕組みを持ち込むことです。クーポンやポイント等を販管費計上すると、インチキできる余地を多く与えることになります。ですから、極力クーポンやポイント値引き分は、売上から減額するといった当たり前の運用を心がけるべきです。特にEC専業でスタートし、売上飛躍的に伸びている組織や、今後の事業拡大を考えている組織は、売上規模拡大前の準備段階からこのことを意識し、持続可能なMDの仕組みを作ることが重要だ!ということを訴え、今回の記事は終了です。

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