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先日、以下のニュースを目にしました。
老舗アウトドア専門店「山渓」 破産手続き開始へ 負債約3億2300万円 大分
大分県大分市に所在する「山渓」は、登山者を主なターゲットとしたアウトドアショップですが、私の出身地でもある大分の企業の破産手続き開始というニュースは、非常に悲しい出来事です。マーチャンダイジング(以下MD)業務を専門とする弊社は、これまでにもいくつかのアウトドア関連企業様とお取引をさせていただきましたが、アウトドア関連のMDは非常に難易度が高いというのが、私の率直な感想です。その一番の理由は、アウトドア関連のMDは特性上、在庫回転率が非常に悪くなりやすいという点にあります。売上が好調な時にはさほど問題にならない在庫金額も、売上が低迷すると通常のアパレルブランド以上にアウトドアショップ・ブランドの場合は在庫過多に陥りやすく、在庫回転の悪化から一気に資金繰りが悪化します。先にご紹介した「山渓」のニュースも、在庫増加による資金繰りの悪化が、破産手続き開始の要因の一つであったのかもしれません。つきましては、今回はアウトドア関連のブランド・ショップが、MD運用において必要となること、注意すべき点についてお伝えします。
まず、アウトドア関連のブランド・ショップの在庫回転が悪化しやすい理由を、以下にお伝えします。
・販売期間を設定が難しい商品が多い(通年・3シーズン等)
・展示会発注が基本でシーズン期初に在庫が膨らみやすい、また納期も安定しない。
・トレンドの影響を受けにくく、セールしづらい商品が多い。
・ユニセックス商品やキッズ商品など、1商品あたりのサイズ展開が広範囲になりやすい。
・専門的な雑貨類の品揃えが豊富
上記のような特徴を持つアウトドアブランド・ショップがMD運用において必要となること、注意すべき点は以下の通りです。
〇適時分類を具体的にすること
〇期首在庫に注意して仕入予算を組み立てること
〇適品分類を具体的にすること
〇(場合によっては)コンセプトを具体化し、顧客ターゲットを絞ること
それでは、各項目ごとに話を進めていきます。
このことは、これまで弊社のブログでも度々お伝えしてきましたが、アウトドアブランド・ショップにおいても同様のことが言えます。特にアウトドアブランド・ショップでは、商品の販売期間を設定するのが難しく、多くの商品が「通年品」という扱いになる可能性が高いと言えます。しかしながら、これまでもお伝えしてきたように、「通年品」というシーズン区分の商品が多くなると、「(年中展開する)通年品だから在庫が増えても問題ない!」という意識が働き、在庫が増加しやすい状況に陥りやすくなります。
したがって、「定番品」として長く販売できる商品であっても、可能な限り販売期間を設定し、シーズン区分に分類すべきです。場合によっては、夏季のみ販売を休止するなど、3シーズンでのシーズン区分を検討することも必要となるかもしれません。付け加えますと、登山者をターゲットとしたアウトドアブランド・ショップは、3月になってもダウンジャケットが売れるなど、通常のアパレルブランドとは商品の売れる時期にずれが生じる可能性が高いので、顧客ターゲットに見合った適切なシーズン分類を構築する必要があるでしょう。
トレンドの要素が通常のアパレルブランドよりも少なく、長年継続して販売する商品が存在するアウトドアブランド・ショップは、仕入予算の策定を慎重に行う必要があります。前述した商品の適切なシーズン分類を具体的に行い、「通年品」に分類される商品が減少したとしても、販売期間が区切られた「シーズン商品」の中で、翌年も再展開する商品は数多く存在するはずです。特に、長年「定番品」として愛されているアウターなどは、その代表例と言えるでしょう。その際に注意すべきことは、販売期間が区切られた「シーズン商品」であっても、期首在庫が存在するということです。したがって、仕入予算を策定する際は、期首在庫を考慮した上で仕入予算を策定する必要があります。弊社の業務を通じて、この点を適切に実施できていない組織が意外と多く、それが在庫増加の要因の一つとなっているケースが見受けられました。期首在庫を考慮した仕入予算の考え方は、以下の記事をご覧頂ければと存じます。
このことも、これまで弊社のブログでも度々お伝えしてきましたが、アウトドアブランド・ショップにおいても同様のことが言えます。アウトドアブランド・ショップの場合は、大分類(部門)→中分類(カテゴリー)→小分類(分析?)の組み立てが重要となってきます。特に売上予算を策定する上で、中分類(カテゴリー)がブランド・ショップのコンセプトに基づいた顧客の購買行動を反映したものになっているかどうかが重要です。付け加えると、商品の詳細な分析を行うためには、メーカー別の分析に加えて、商品がどのような場面で活用されるのかといった利用シーン別の分析も効果的です。そのため、シーン別の商品分類を作成しておくことをお勧めします。
前述したように、アウトドアブランド・ショップの特徴として、商品1アイテムの色・サイズ展開が広範囲になりやすく、在庫回転率が悪化しやすい傾向があります。大手で資金力のある組織であれば、品揃えや色・サイズ展開を拡充しても問題ないかもしれませんが、そうでない組織が多くの商品を品揃えすることは、リスクが高いと考えられます。また、アウトドアのセレクトショップの場合、品揃えで他店と重複する商品も多く、インターネットでもその商品を容易に探すことができるため、自ショップのオリジナリティを出しにくいと考えられます。したがって、コンセプトを具体化し、顧客ターゲットを絞ることが、在庫リスクを軽減する一つの策となる可能性があります。例えば、コンセプトカラーを設定し、色を絞って商品展開をする、特定のシーンだけに特化した品揃えにする、登山者をターゲットにしたショップの場合には、あえてプロ仕様の商品のみを展開する等の手法も有効かもしれません。しかしながら、コンセプトを具体化し、顧客ターゲットを絞る手段をとる場合には、品揃えの工夫だけでなく、顧客にとって役立つコンテンツの発信、コンセプトに沿ったショップの雰囲気づくり等、他の手段も同時に講じなければならないでしょう。
アウトドア業界のMDは、特有の課題とリスクを抱えています。今回お伝えしたような対策を実行することで、在庫リスクを最小限に抑え、持続可能な店舗運営を目指しましょう。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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