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先日、このサイトでユナイテッドアローズさん(以下UA)の記事をアップ致しました。
8,000字以上に渡って、決算資料の分析をしているのですが、改めて、UAの決算資料で気になった文言を以下、抜粋致しますと。
”在庫の増加要因の分析、在庫量を最適化する仕組み作り、在庫状況を管理するKPIの設定と 評価制度との連動を図り、効率的な在庫運営を目指す。この取り組みでセール販売や在庫評価損の抑制を図り、売上総利益率を改善させる。”
この文言を簡単に要約すると、「在庫を最適化(削減)しながら、粗利率(売上総利益率)の向上を目指す!」という意味に捉えられます。
ここで少し話を変えまして、商品(在庫)が効率的に運用されているのか?知る為に用いられる、交差比率という指標があります。計算式は?
→粗利率×在庫回転率=交差比率
となります。
例えば、先日記事に致しましたUAの場合は。2022年3月の粗利率が49.9%。決算資料からみる推定在庫回転率は2.8(四半期ごとの数字で算出しているので、実際の数字はブレがある可能性大です)でした。ということは?UAの交差比率は。
→49.9×2.8≒140(交差比率)
このような数字表現になります。前述したUAの決算資料の文言を見ると、記載されていた目標が達成できれば、大幅に交差比率があがるというです。(交差比率は高ければ高いほど、商品が効率的に運用されているとされる)
更に、交差比率の計算式を紐解くと、交差比率をアップさせる為には、粗利率をアップさせるか、在庫回転率をアップさせれば良い!ということになります。粗利率をアップさせる為には、商品の値入率を上げる!や、セール抑制するといったことが、代表的な施策です。また、在庫回転率をアップさせるには、売上数量を伸ばすか?平均在庫数量を減らす!といったことが、代表的な施策になります。
そして、上記の計算式と施策から、どのようなことが考えれられるのか?と言いますと。セールを抑制すれば、粗利率が上がる可能性が高まります。しかしながら、セールを抑制することによって、売上点数が減少し、在庫点数が増加すると、在庫回転率が下がります。といった具合に、粗利率と在庫回転率は、施策によっては相反する指標となりますので、粗利率のアップと在庫回転率のアップの両方を達成するのは、極めてミッションが高い!ということになります。
ということは?前述したUAが決算資料で掲げている目標は極めてハードルの高い目標とみることができるでしょう。
では、粗利率と在庫回転率の両方の目標を達成させる為に必要なことを、以下箇条書き致しますと。
① MDでいう”適品”の精度を上げる
② 自分たちの組織・ブランドの特徴を知り、目指すべき目標数値を可視化すること
他にも色々ありますが、MD的な視点でいうと、この2点です。
MDの仕事において、意識すべき”5適”の中で、私が最も重要だ!と考えるのは、”適品”の仕事です。組織によっては、”適品”の仕事を担当する呼称は、ディレクターやデザイナー等となりますが、とにかく「お客様が喜ぶ・欲しがる商品」を、作る・仕入れることに全力を傾けろ!といった当たり前のことを、強く意識すべきです。数字のことが理解出来なくても、自分たちのブランド・ショップの商品が、需要が供給を上回れば、セールも必要なくなり、平均在庫も少なくて済みます。この当たり前の精度を高めるために、今以上にお客様が喜ぶ商品を産みだす為に、組織として、そして自分自身で出来ることを、即実践すべきです。
これまで私は、多くの方々にMD講義を実践してきましたが、受講者様の質問の中で、特に多いのは?
「(私たちのショップ)適正在庫ってどのくらいですか?」
といった質問です。私の返答は決まって。
「わかりません!」
になります。何故ならば、在庫の多い・少ない!と言ったことは、商品が売れること以外に左右される要素が大きいからです。アパレル小売業で、平均在庫数量が増加しやすい代表的な要因となるものは。
・ミニマムロット
・色・サイズ展開の多さ
・リードタイム(以下LT)
・販売期間の長さ
等が挙げられます。
例えば、LTが3ヵ月で販売期間が6カ月。サイズ展開が豊富なメンズビジネスブランドが存在したとすると、自ずと平均在庫数量が増える!ということは、数字に詳しくない方でもすぐにご理解頂けると思います。また、LTは2カ月だけど、商品の追加発注をせずに、1か月という販売期間で商品を廻していくレディースブランドは、平均在庫数量が少なくなりやすい!ということも同様です。
大事なのは、自分たちのブランド・ショップの特徴を、上述したような要素を加味した上で、各月の数字を可視化するということです。例えば、メンズのショートパンツの販売期間が6月~8月。商品のLTが3ヵ月だった場合。この商品の期中での追加発注は不可能となります。ということは、5月末に売上3ヵ月の分の在庫を用意しなければならない!ということになります。そのようなことを、事前にMD予算として、しっかりと設計しておかなければならない!ということです。
このことが出来ると、6月上旬にショートパンツの在庫が多いのは問題ないんだ!ということが、理解できますし、どの時期に、どの商品の在庫をどれくらい持っていればよいのだ!ということが、数字で一見できますので、期中では、その目標数値とのズレが具体的に確認できますから、数値から具体的な施策に落とし込めば良い!ということになります。
最後に、粗利率と在庫回転率の両方をアップさせる!ということは、極めて難しいミッションになりますが、先ずは、お客様にとっての”適品”を生み出すことに注力する!ということと、自分たちのブランド・ショップの(仕入背景等)特徴を加味し、しっかりとしたMD予算設計を行うこと。このことの重要性を訴えて、今回の記事は終了です。
この度は、記事を読んで頂きありがとうございます。次回もよろしくお願いいたします。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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