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EC売上は息切れしているのか?

国内EC消費、2割増も息切れ コロナ特需一服

先日、日経新聞にて上記のような記事が出ておりました。2019年から2021年にかけてEC売上が2割増加したものの、直近2ヶ月で前年割れとのことで書かれた内容ですね。こちらはEC全般でのことですので、アパレル市場ではどうなのか?について簡単に考察してみたいと思います。

◯コロナ禍は店舗売上が激減

国内アパレル市場に関する調査を実施(2021年)

矢野経済研究所の調査によると、アパレル市場は2019年から2020年にかけて大きく落ち込み、7兆5158億円という状況。1年間で1兆6574億円が吹っ飛んだ計算ですね。こちらに対してEC売上がどの程度伸びたか?なのですが、同じ調査機関からの数字が出ておりませんので経産省の資料から抜粋。

電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

こちらの資料では衣料品のEC売上推移は、

2018年  1兆7728億円

2019年  1兆9100億円

2020年 2兆2203億円

となっており、2019年から2020年にかけて3130億円増加。前年が1372億円の増加でしたので、コロナ禍で大きく伸びたということがわかります。調査機関が違いますので単純計算すると誤差があるかと思いますが、このまま差し引くとおよそ2兆円程度が店頭から売上が消えたという計算になります。筆者の体感でも、店頭売上をECで補完できたという感覚は無く、今期に入っても全体売上が戻ってきた感覚は今のところありません。(大手アパレルの決算書を確認しても多くのブランドで19年売上高を割っています。)

コロナ特需でECは大きな伸びがあったものの、全体に関しては、そもそも人口減少の傾向にある日本で市場規模が安定的に伸びるはずもありません。奇跡的に散財しまくるファッションオタクが急増しない限りはこのまま横ばいか、もしくは縮小していくことでしょう。(コロナで激減した分が少しは戻ってくる可能性はありますが。)

◯大手アパレルの状況

大手アパレルのECは今どうなっている?

大手アパレルのECは今どうなっている?

 

大手アパレル5社のECの状況は以前にも書きましたが、簡単にまとめますと

・成長エンジンとなるブランドがある企業はEC売上を伸ばしている

・ブランドへの投資と成長が無ければEC売上も伸びていない

という、ごくごく当たり前の状況。過去、大手アパレルのEC売上が右肩上がりで伸びていた背景には、「店頭顧客をECに送客していた」という事実もあり、全体的に「出店は抑制」しながらEC売上を伸ばしていく、という手法を取っていたように思います。ブランド単体で見ると、成長ブランドでは積極的な出店が見られますが、既に成熟したブランドに関しては店舗数を増やさずスクラップ&ビルドか、もしくは店舗数を減らす傾向にありました。早いところでは2014年くらいには顕著に数字に現れていたかと思います。TSIホールディングスやワールドの大量退店のニュースが出始めたのもこのころですね。ユニクロも2014年をピークに国内店舗数は伸びておりません。一方で海外店舗はどんどん増やしているのは面白い傾向ですね。認知が無い地域ではいまだ出店が有効だという証左でしょうか。

◯過去、店舗が重要でなかったことなど無い

日経新聞の記事にも「実店舗の役割が大きくなる」と記載がありますが、過去店舗の役割が小さくなったことなどありません。大手アパレルのECが過去、なぜ成長したか?は、多店舗展開によって認知と顧客を獲得したからに他ならないでしょう。認知度が高いブランドほど、顧客のお買い物時に想起されやすい=ECで売上を取りやすい、ということです。ブランド自体が成長せず、ECで売れる分を取り切ってしまったのなら、ECの成長も鈍化するのは至極当然のことかと。誤解されやすいのは、「ECでブランドのトップラインを伸ばせる」と思われているケースですね。チャネルがECのみであるなら、方法はそこしかありませんから理解できますが、基本的にはブランドが成長していないのに、ECを活用したからと言って都合良くトップラインは伸びません。無駄に在庫を積んで販促を打ちまくればその限りではありませんが、在庫の山と広告宣伝費による大赤字を築くだけでしょう。

また、「店舗が重要」ということから無駄にOMO施策を重視するのもよろしくないです。顧客は、顧客にとって利便性の高いチャネルで購入するので、無理やりECに送客する必要は無いのです。

実店舗に商品を買いに行ったら、ECで買ってくれ!と言われた話

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まさしくこのお話の通りですね。状況に応じてECを活用して頂ければ良いので、導線をしっかり確保しておくことが求められるかと。

ポップアップショップはEC運用でどう利用する?

ポップアップショップはEC運用でどう利用する?

(よろしければこちらも参考までに。)

◯EC比率を高めるかどうかは企業の方針次第

市場規模は横ばいか縮小の中でEC「のみ」を成長させ、比率を伸ばしていくには、大局的には店舗を閉めるしかないでしょう。その場合、市場規模も目減りする可能性が高いので、ファッションブランドとしてはますます戦いにくい状況に陥りそうな気がしないでもないです。

また、それを実行するかどうかは企業の方針でしか無いですし、ECが息切れしているかどうかはブランドの成長次第です。

「ブランドのトップラインを伸ばしながらEC比率を高めたい」

というのが多くの方々の本音だと思われるのですが、そんな芸当が実現できていたのは一部の有名ブランドくらいですね。その有名ブランドですら、コロナ禍ではトップラインを落としており、まだ完全に戻っておりません。

※ユニクロはコロナ禍で国内売上は2019年8月期がピーク。

※グローバルワークは2020年8月期がピーク。

※パーリーゲイツはずっと伸びているので化け物です。(ゴルフ市場が好調というのもあるのですが…。)

結局は「全チャネルを有効に使いながらブランドを開発/成長させる・粗利を最大化させる」が正解だと考えます。そしてEC売上や比率に捉われず、ブランドとして今何をやるべきか?は顧客と真摯に向き合うことでしか理解することが出来ないのではないでしょうか。

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